今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「 いま銀行はつぶれない。つぶれないから銀行にも客にも緊張がない。もしつぶれる恐れが
あれば、客に危機感が生じるばかりでなく、銀行にも生じて尾上縫に貸すがごときは絶対
になくなる。
大蔵省は昭和の大恐慌を忘れないのはいいが、いかなる銀行もつぶさないようにした。
尾上縫に大金を貸した東洋信金のごときは当然つぶさなければいけないのに合併と称して
助けた。つぶれっこないならいくら不祥事がおこっても銀行は恐縮したふりをするだけで、
実はしない。するわけがない。故に不祥事は永遠になくならない。
あとからあとから生じる。
乱暴なようだが、銀行はつぶれたほうがいいというゆえんである。
(Ⅶ『銀行の不祥事は不滅です』平4・8・13/20)」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)