「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2014・01・12

2014-01-12 08:20:00 | Weblog



 今日の「お気に入り」。

 「 ご承知のように昭和三十年代までの男の子は、たとえば目ざまし時計のたぐいを必ずこじ
  あけた。あけてみてどうして動くか知りたがって知った。ラジオくらいは自分で組立てた。
   今の子はこれらいっさいをしない。電卓はつついてもこじあけようとはしない。ファミコ
  ンを操ることは巧みでも、そのメカニズムを理解しようとはしない。
   なぜしないのだろう。こわせば目ざまし時計は理解できるが、電卓はできっこないと一瞥
  しただけで知るからである。
   子供は何でも知っているという。これらが理解を絶するものだと三歳の童児も知ることに
  私は驚くのである。そして私たちはいま理解を絶するものに包囲され、それは増えこそす
  れ減りっこないと知るのである。
                    〔Ⅵ『子供は何でも知っている』平3・10・17〕」

  (山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)

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