今日の「お気に入り」。
「 ローンもまた名を改めてうまくいった例である。サラリーローンと称したから、ついだまされた
のである。はじめ亭主が次いで女房がだまされた。あれは戦前の高利貸で、高利貸なら内田百
の随筆にくわしい。人目をしのんで露地の奥に、金貸したちはひっそりいた。看板なん
か出さなかった。
(略)
高利貸は正業ではないから、客をあざむくのは当り前である。ただスーパーやデパート
がキャッシングまたは類似の名で女子供をだますのを、あれは高利だぞと新聞が未然に言わない
のを私はけげんに思っている。
無担保無保証で貸すのだからその利率はサラ金に近くなる。かりに一社から三十万円ずつ五社から
借りれば、いっぺんに百五十万円借りることができる。それを返すに困ってサラ金に手を出せば、
いずれは蒸発騒ぎになるだろう。新聞はそのとき騒ぐつもりでいま騒がないで待っているのであ
るか。
〔Ⅲ『名をクレジットと改めたら』昭59・3・29〕」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)
今は、銀行が表看板でサラ金をやる時代、「サラリーローン」から「カードローン」へと呼び名は
変わっても、やってることは昔ながらの「消費者金融」、無担保無保証の高利貸であることに違い
はない。「今買って後で払う」の行き着く先は....。
「 ローンもまた名を改めてうまくいった例である。サラリーローンと称したから、ついだまされた
のである。はじめ亭主が次いで女房がだまされた。あれは戦前の高利貸で、高利貸なら内田百
の随筆にくわしい。人目をしのんで露地の奥に、金貸したちはひっそりいた。看板なん
か出さなかった。
(略)
高利貸は正業ではないから、客をあざむくのは当り前である。ただスーパーやデパート
がキャッシングまたは類似の名で女子供をだますのを、あれは高利だぞと新聞が未然に言わない
のを私はけげんに思っている。
無担保無保証で貸すのだからその利率はサラ金に近くなる。かりに一社から三十万円ずつ五社から
借りれば、いっぺんに百五十万円借りることができる。それを返すに困ってサラ金に手を出せば、
いずれは蒸発騒ぎになるだろう。新聞はそのとき騒ぐつもりでいま騒がないで待っているのであ
るか。
〔Ⅲ『名をクレジットと改めたら』昭59・3・29〕」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)
今は、銀行が表看板でサラ金をやる時代、「サラリーローン」から「カードローン」へと呼び名は
変わっても、やってることは昔ながらの「消費者金融」、無担保無保証の高利貸であることに違い
はない。「今買って後で払う」の行き着く先は....。