「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2014・01・14

2014-01-14 08:15:00 | Weblog
今日の「お気に入り」。

「 ローンもまた名を改めてうまくいった例である。サラリーローンと称したから、ついだまされた
 のである。はじめ亭主が次いで女房がだまされた。あれは戦前の高利貸で、高利貸なら内田百
 の随筆にくわしい。人目をしのんで露地の奥に、金貸したちはひっそりいた。看板なん
 か出さなかった


 (略)

  高利貸は正業ではないから、客をあざむくのは当り前である。ただスーパーやデパート
 がキャッシングまたは類似の名で女子供をだますのを、あれは高利だぞと新聞が未然に言わない
 のを私はけげんに思っている。
  無担保無保証で貸すのだからその利率はサラ金に近くなる。かりに一社から三十万円ずつ五社から
 借りれば、いっぺんに百五十万円借りることができる。それを返すに困ってサラ金に手を出せば、
 いずれは蒸発騒ぎになるだろう。新聞はそのとき騒ぐつもりでいま騒がないで待っているのであ
 るか。
                    〔Ⅲ『名をクレジットと改めたら』昭59・3・29〕」

(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)




  今は、銀行が表看板でサラ金をやる時代、「サラリーローン」から「カードローン」へと呼び名は
 変わっても、やってることは昔ながらの「消費者金融」、無担保無保証の高利貸であることに違い
 はない。「今買って後で払う」の行き着く先は....。
コメント
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