「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2014・01・29

2014-01-29 08:00:00 | Weblog




今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から、再録。

「どんな席に出ても自分がいちばん若かったのに、いつのまにかいちばん年かさになってしまったとは
皆が皆嘆く嘆きである。これは人には本来年齢がない、女は永遠に十七である証拠だと言うと、電光の
ように理解する人と、理不尽で分らぬという人に分れるから念のために書く。

(略)

 まことに歳月は勝手に来て勝手に去る。私たちの内部は永遠に年をとらないのに、
外部だけとるのは納得できないことである。それに年とったからといって少しも利口にならな
ければバカにもならない
。いつかしわがよるのである。何よりおお男たちの見る目が違うので
ある。自分が男たちを見る目は違わないのに。

 女のことばかりいったが、男も同じだと思ってくれ。白髪(しらが)は知恵のしるしではない人間本来
男女なし老幼なし
。だからその目で五十六十の女を見てごらん、もうろう彷彿として老いた顔
のなかに十七の顔があらわれ、次第にそれが全貌を覆うから。
                          〔Ⅵ『女は永遠に十七である』平2・6・7〕」

(山本夏彦著「ひとことで言う‐山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)



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