24節気では「穀雨」。たくさんの穀物を潤してくれる春の雨が降る頃。穀物を育む雨を瑞雨、草木をうるおす雨を甘雨というとか。
わが家の庭の花々も雨の露を含んでしっとりしたたたずまいを見せている。今まで咲いたことがなかったツツジの樹にめずらしく3~4輪、花が咲いた。
樹木というのは不思議なもので、梅でも木蓮でもカロリナジャスミンでもブルベリーでも剪定などやりかた次第で花や実のなり方が変わってくる。それぞれの樹木の特質を知り尽くしてタイミングよく手入れを施さないと次の年、楽しませてくれない。人の才能発掘も同じかもしれない。
九博の春から初夏にかけての特別展、「快慶・定慶のみほとけ」が23日スタート、6月16日までの会期。去年秋、東京国立博物館で開催され100万人をこす(九博の約1年分)来場者があった展示会。
(天道へ落ちるのを助けてくれる観音様)
京都では千本釈迦堂の名で親しまれる(私は今まで知らなかった。大学も京都だったのにね)大報恩寺のご本尊の釈迦如来坐像や釈迦の十大弟子立像、さらには六観音菩薩像など鎌倉彫刻の名品ほかが44点、ゆとりのあるスペースに見事に展示される。通常の特別展ではいつも100点以上の展示であるが今回はゆっくりと運慶,快慶などいわゆる「慶派のスーパースター」名匠の作品をじっくり鑑賞してもらおうというわけ。
(四苦八苦、人の世界へ落ちるのを助けてくれる観音様)
さらに東京では撮影は六観音菩薩像のうち1体のみだったのが九博では特定スペースから6体すべて撮影OKというからうれしい。
(阿修羅道へ落ちるのを助けてくれる十一面観音菩薩立像)
この大報恩寺は800年前、鎌倉時代に、義空とい天台僧によって開かれた密教寺院。源平の戦い、応仁の乱など荒廃した中で釈迦の思想に立ち戻ろうという機運の中、創建されたと言われる。ご本尊の釈迦如来坐像は快慶の一番弟子の行快の作。切れ長の目じりがあがったキラッと光る眼が特徴。身体の部分は金泥、衣は金粉が施され金の輝きが異なる。光背、台座とも素晴らしい彫刻。
(畜生道へ落ちるのを助けてくれる観音様)
京都ではご本尊をとりまく形で設置されていたらしい「十大弟子立像」。運慶と肩をならべた名匠、快慶が中心となって彫られた。般若心経でおなじみの舎利弗立像ほかそれぞれ個性のある9人の弟子立像が展示されている。年も顔つきも皆ちがい面白い。
最後の部屋は運慶晩年の弟子になる肥後定慶作の六観音菩薩像である。
古来、インドでは人間は生まれ変わると信じられていた。今の世でどんな生き方をしたかで生まれ変わる世界は変わる。天、人、阿修羅、畜生、餓鬼、地獄の6つの世界を六道という。
(餓鬼道へ落ちるのを助けてくれる千手観音菩薩)
(地獄道へ落ちるのを助けてくれる聖観音菩薩立像)
それぞれ現在の己の生活ぶりで思い当たることを想定して、来世は繰り返したくないと思うなら該当する観音様を信心すれば願いをかなえてくれるというわけである。
この六観音像にぐっと近寄ってみて、すこし引いて見て、さらにはぐるっと回ってみて鑑賞してもらいたいというのが展示課長のK氏のお勧めの楽しみ方らしい。
今もそうだが昔も上から下まで悩める人々が多かったようだ。その心の救済を仏像に求めたのかもしれないね。現在の日本国民は一体何に救済を求めるのだろうか?愛する妻子を馬鹿老人のために一瞬のもとに事故死させてしまった夫は何に怒り何に救済を求めるのか???