
「ザ・シンプソンズ」の制作者であるハンガリー生まれのガボア・クスポの映画監督デビュー作は,子供向けのファンタジーを装いながら,感性豊かに生きていくための人生指南書と言える佳作だ。しっかりとしたドラマの骨格,細部まで手抜きのない制作姿勢が,SFXに寄りかかった凡百のお伽噺を遥かに凌駕する成果を生み出している。
上級生による抑圧的ないじめ,同級生の陰湿な差別,サブプライムローン(かどうかは明確ではないが)と低収入に苦しむ家庭,そして個性的であるが故に孤立する転校生。
これらのリアルで辛い現実社会ときちんとリンクし,悩みながらも,その解決策として「想像の世界」に入り込む主人公二人の姿が,実にヴィヴィッドに描かれる。
映画の肝とも言える「想像の世界」と現実の境目のバランスを,測ったように絶妙な支点で保ち得たのは,辛辣な風刺アニメーションで培ったクスポ監督の眼力の為せる技だ。
しかも驚くべきことに,SFXがセールスポイントになるであろうアニメ制作者の監督デビュー作にもかかわらず,キャメラを回したのは,スコセッシ中期の傑作群を撮った大ヴェテランのマイケル・チャップマンだった。多分,林海象のデビュー作で,大御所の木村威夫が美術を担当したのと同じようなノリだったのかもしれないが,オーソドックスな構図で集団を捌き,返す刀で森の緑を鮮やかに捉える腕には,いささかの衰えも感じられなかった。こういうのは,なんだかちょっと嬉しくなる。
引退したプロテニスプレーヤー,マルティナ・ヒンギスの子供時代を想像させるような美少女アナソフィア・ロブと,達者が嫌みではなかったジョシュ・ハッチャーソンに,ジョシュのお茶目な妹を加えたトリオは,実に安定感のある小宇宙を作り出していた。「ターミネーター2」でシュワルツネッガーを追いつめたアンドロイド役だったロバート・パトリックのお父さん振りも含めて,脇の大人たちも実に渋い。
子供向けと大人向けの企画の繋ぎ目で,こういう作品を産み出してくる所が,ハリウッドの底力なのかもしれない,と感じさせられる作品だ。
上級生による抑圧的ないじめ,同級生の陰湿な差別,サブプライムローン(かどうかは明確ではないが)と低収入に苦しむ家庭,そして個性的であるが故に孤立する転校生。
これらのリアルで辛い現実社会ときちんとリンクし,悩みながらも,その解決策として「想像の世界」に入り込む主人公二人の姿が,実にヴィヴィッドに描かれる。
映画の肝とも言える「想像の世界」と現実の境目のバランスを,測ったように絶妙な支点で保ち得たのは,辛辣な風刺アニメーションで培ったクスポ監督の眼力の為せる技だ。
しかも驚くべきことに,SFXがセールスポイントになるであろうアニメ制作者の監督デビュー作にもかかわらず,キャメラを回したのは,スコセッシ中期の傑作群を撮った大ヴェテランのマイケル・チャップマンだった。多分,林海象のデビュー作で,大御所の木村威夫が美術を担当したのと同じようなノリだったのかもしれないが,オーソドックスな構図で集団を捌き,返す刀で森の緑を鮮やかに捉える腕には,いささかの衰えも感じられなかった。こういうのは,なんだかちょっと嬉しくなる。
引退したプロテニスプレーヤー,マルティナ・ヒンギスの子供時代を想像させるような美少女アナソフィア・ロブと,達者が嫌みではなかったジョシュ・ハッチャーソンに,ジョシュのお茶目な妹を加えたトリオは,実に安定感のある小宇宙を作り出していた。「ターミネーター2」でシュワルツネッガーを追いつめたアンドロイド役だったロバート・パトリックのお父さん振りも含めて,脇の大人たちも実に渋い。
子供向けと大人向けの企画の繋ぎ目で,こういう作品を産み出してくる所が,ハリウッドの底力なのかもしれない,と感じさせられる作品だ。