「6歳のボクが,大人になるまで。」で,とうとう表舞台で眩いばかりのスポットライトを浴びることとなったリチャード・リンクレーターが次作に選んだのは,「チンコ」という単語が50回くらい連呼される,折り紙付きのバカな若者の生態を描くことだった。リンクレイターが精魂込めて描いた3日間のどんちゃん騒ぎは,映画史に残るくだらなさと,同量の切なさを内包した,まれに見る青春映画の傑作として昇華した。
主人公ジェイクは「6歳のボクが,大人になるまで。」の主人公がラストで迎える歳と同じ,高校出たての18歳なのだが,彼の周りを取り囲む大学野球チームの同僚や先輩諸氏は,とても「大人に」なっているとは言い難い究極の筋肉バカたちばかり。若くて血気盛んな彼らがやりたいことと言えば,酒を飲んで女の子を口説くことだけ。やや奥手に見える主人公も,そんなチームメイトに引っ張られるように,乱痴気騒ぎの大海原に勢いよく頭からダイブしていく。
1980年の大学入学という,筆者とほぼ同年齢の彼らの日常に流れる音楽を聴き,リズムを合わせて口ずさむ彼らの楽しそうな姿を見ているだけでも,もうノックアウトだ。特に冒頭の,シックの「グッド・タイムズ」をサンプリングしたシュガーヒル・ギャングの「ラッパーズ・ディライト」を,ナンパに出掛けたぎゅうぎゅうの車内でバカたちがリップシンクするシーンは,映画全体のトーンを定める熱いエネルギーに満ちて最高だ。ジェイクが一見脳天気な野球バカに見えながら,持ってきたレコードの中にディーヴォやニール・ヤング(残念ながら先輩に持って行かれてしまうのだが)があることを見せておくことで,ラストで文化系のビバリーを落とす伏線とする辺りは,「スクール・オブ・ロック」をものしたリンクレイターの術中に見事にはまって「やられたー!」と嬉しいため息をつくしかない。
大学で何かを学ぶなどは,露程も考えていない野球バカでありながら,将来メジャー・リーグに行けるのかどうかという不安を全員が抱える中で,刹那的であれなんであれ,今という時間と全力で格闘しようとする若者の姿は滑稽かつ感動的だ。心ときめく異性であれ,成り行きで付き合うこととなったチームメイトであれ,人と触れ合うことでしか得られない何かに向かって,「心の扉を開くのはチンコだ」という台詞を武器に,前を向く彼らの姿に乾杯。
★★★★☆
(★★★★★が最高)
主人公ジェイクは「6歳のボクが,大人になるまで。」の主人公がラストで迎える歳と同じ,高校出たての18歳なのだが,彼の周りを取り囲む大学野球チームの同僚や先輩諸氏は,とても「大人に」なっているとは言い難い究極の筋肉バカたちばかり。若くて血気盛んな彼らがやりたいことと言えば,酒を飲んで女の子を口説くことだけ。やや奥手に見える主人公も,そんなチームメイトに引っ張られるように,乱痴気騒ぎの大海原に勢いよく頭からダイブしていく。
1980年の大学入学という,筆者とほぼ同年齢の彼らの日常に流れる音楽を聴き,リズムを合わせて口ずさむ彼らの楽しそうな姿を見ているだけでも,もうノックアウトだ。特に冒頭の,シックの「グッド・タイムズ」をサンプリングしたシュガーヒル・ギャングの「ラッパーズ・ディライト」を,ナンパに出掛けたぎゅうぎゅうの車内でバカたちがリップシンクするシーンは,映画全体のトーンを定める熱いエネルギーに満ちて最高だ。ジェイクが一見脳天気な野球バカに見えながら,持ってきたレコードの中にディーヴォやニール・ヤング(残念ながら先輩に持って行かれてしまうのだが)があることを見せておくことで,ラストで文化系のビバリーを落とす伏線とする辺りは,「スクール・オブ・ロック」をものしたリンクレイターの術中に見事にはまって「やられたー!」と嬉しいため息をつくしかない。
大学で何かを学ぶなどは,露程も考えていない野球バカでありながら,将来メジャー・リーグに行けるのかどうかという不安を全員が抱える中で,刹那的であれなんであれ,今という時間と全力で格闘しようとする若者の姿は滑稽かつ感動的だ。心ときめく異性であれ,成り行きで付き合うこととなったチームメイトであれ,人と触れ合うことでしか得られない何かに向かって,「心の扉を開くのはチンコだ」という台詞を武器に,前を向く彼らの姿に乾杯。
★★★★☆
(★★★★★が最高)