フレディ・マーキュリーの生涯を描いた「ボヘミアン・ラプソディー」があそこまでヒットするとは思わなかった。監督ブライアン・シンガーの名前が最終的に削られるというのは,撮影中に余程のインシデントが発生したとしか思えなかったのだが,そんなトラブルに反して映画の出来は上々で,リアル・タイムでクイーンを聴いていた世代が劇場に詰めかけたところまでは充分に納得できるサプライズだった。ところがクイーンもフレディも知らず,「WE WILL ROCK YOU」はペプシコーラのコマーシャルのオリジナル曲だと信じている若い世代をも大量に動員した結果,年間チャートにおいて洋画実写部門でぶっちぎりの1位を獲得し,一種の社会現象にまで発展することになるとは,到底想像できなかった。
そんな作品を最終的にまとめたデクスター・フレッチャーが,今度はエルトン・ジョンの生涯,と言っても本人がまだご存命であるが故に「半生」というのが正確なのだが,とにかく綺羅星のようなヒット曲と共にその人となりを描くとあれば,ヒットは間違いなし,と思われたのだが,果たして…。
「ボヘミアン・ラプソディー」との違いは,何と言ってもエルトン・ジョンを演じたタロン・エジャトンが,本人のヒット曲をすべて吹き替えて歌っている点だ。フレディのオリジナルの歌声に拘って,レミ・マレックの声のフィーチャーを最小限に抑えた「ボヘミアン・ラプソディー」があくまで偉大なミュージシャンを題材にした「音楽映画」だったことに比べ,「ロケットマン」は歌曲こそ実際のヒット曲を使いながらも,完全にオリジナルの「ロック・ミュージカル」を作る,という方向へ,大きく舵を切っているのだ。ここをどう捉えるかで,この作品への評価は大きく変わってくるだろう。残念ながら私は,エジャトンの健闘は認めるものの,その選択は凶と出た,と感じてしまった。楽曲の素晴らしさはさることながら,エルトンの歌声はやはり唯一無二。逆に今もなお魅力的なエルトンの楽曲を謳い上げるエジャトンの技巧が冴えれば冴えるほど,オリジナルの声で聴き直したいと思わせてしまったのは,方向性に誤りがあった何よりの証拠だろう。
ただオリジナルのライヴやPVを忠実に再現した努力は大したものだし,母親役を演じたブライス・ダラス・ハワードの巧みな老け振りにも驚かされた。何よりエルトンの曲を改めて聴き直したいと思わせた力はあったのだ。それが映画自体の褒め言葉になるのかどうかは分からないけれど。
★★
(★★★★★が最高)
そんな作品を最終的にまとめたデクスター・フレッチャーが,今度はエルトン・ジョンの生涯,と言っても本人がまだご存命であるが故に「半生」というのが正確なのだが,とにかく綺羅星のようなヒット曲と共にその人となりを描くとあれば,ヒットは間違いなし,と思われたのだが,果たして…。
「ボヘミアン・ラプソディー」との違いは,何と言ってもエルトン・ジョンを演じたタロン・エジャトンが,本人のヒット曲をすべて吹き替えて歌っている点だ。フレディのオリジナルの歌声に拘って,レミ・マレックの声のフィーチャーを最小限に抑えた「ボヘミアン・ラプソディー」があくまで偉大なミュージシャンを題材にした「音楽映画」だったことに比べ,「ロケットマン」は歌曲こそ実際のヒット曲を使いながらも,完全にオリジナルの「ロック・ミュージカル」を作る,という方向へ,大きく舵を切っているのだ。ここをどう捉えるかで,この作品への評価は大きく変わってくるだろう。残念ながら私は,エジャトンの健闘は認めるものの,その選択は凶と出た,と感じてしまった。楽曲の素晴らしさはさることながら,エルトンの歌声はやはり唯一無二。逆に今もなお魅力的なエルトンの楽曲を謳い上げるエジャトンの技巧が冴えれば冴えるほど,オリジナルの声で聴き直したいと思わせてしまったのは,方向性に誤りがあった何よりの証拠だろう。
ただオリジナルのライヴやPVを忠実に再現した努力は大したものだし,母親役を演じたブライス・ダラス・ハワードの巧みな老け振りにも驚かされた。何よりエルトンの曲を改めて聴き直したいと思わせた力はあったのだ。それが映画自体の褒め言葉になるのかどうかは分からないけれど。
★★
(★★★★★が最高)