1961年1月 14歳の冬。
きょうは内定が決まっているM電器の面接の日。この会社にはオレの学校からは男子5人と女子1人が受験し、第一次の筆記試験では全員が合格していた。
1週間前から放課後に、就職担当と担任の先生が会社の人になって面接の予行をしてきた。ドアのノックの仕方、椅子に掛けてからの姿勢などの立ち振る舞いはもちろん、面接の時の受け答えの仕方、聞かれるであろう内容についても先生らが作ってくれた「想定問答」で何回も練習してきた。
3日前に散髪に行き、きのうの夜は寝る前に布団の下にズボンを敷いて寝た。オレらの面接は午後からだったが絶対に遅れることはできないので全員、最寄の国鉄の駅で待ち合わせをして行った。
会社に着いたら、午後の部の50人くらいが少し大きな部屋に入り、3つのグループに別けられた。それぞれのグループごとに5人づつが呼ばれて面接部屋の前の廊下に置かれた椅子に座って順番を待った。面接は五十音順だったのでオレは最後の組になった。
オレの前のヤツが終わって出てきた。ほっとしたような感じでなく顔が引きつっていた。次はオレの番だ、ドキドキしてきた。ドアが開いて「次の方お入りください」と。オレは「ハイ!」と大きな声で返事をしてからドアをノックして「どうぞ」の声を聞いてからドアを開け中に入った。後ろ向きでドアを閉めてから、ふり返って面接官に向かって「○○です」といって一礼をした。そして、「どうぞこちらに座ってください」といわれてから椅子に座った。
「この会社を選んだ理由は?」「将来どんな社員になりたいですか?」「自分の長所・短所をいってください」。ここまではだいたい練習してきた内容だったので、それなりに答えられた。面接時間は「1人15分」と言われていたのでもうそろそろ終わりかなと思っていた時に、3人の面接官の1人が「キョウサントウは世間から嫌われていますがなぜだと思いますか?」といった。
えーッ、思ってもみない質問にオレの頭は混乱した。「はッ」といってしばらく黙ってしまった。すると、先の面接官がもう一度、「共産党は世間から嫌われていますがなぜだと思いますか?」と先より大きな声で聞いてきた。冷や汗が出てきた。何としても答えなければならない。少ない脳みそをフル回転させた。
「なんでも反対するからだと思います」というと、「よく聞こえません。もう一度言ってください」と。「はッ、はい、なんでも反対するからだと思います」…オレの声は震えていた。
一番偉そうな面接官が「はい結構です。これで終わります」といった。部屋から出てきたオレの全身は汗びっしょりだった。
きょうは内定が決まっているM電器の面接の日。この会社にはオレの学校からは男子5人と女子1人が受験し、第一次の筆記試験では全員が合格していた。
1週間前から放課後に、就職担当と担任の先生が会社の人になって面接の予行をしてきた。ドアのノックの仕方、椅子に掛けてからの姿勢などの立ち振る舞いはもちろん、面接の時の受け答えの仕方、聞かれるであろう内容についても先生らが作ってくれた「想定問答」で何回も練習してきた。
3日前に散髪に行き、きのうの夜は寝る前に布団の下にズボンを敷いて寝た。オレらの面接は午後からだったが絶対に遅れることはできないので全員、最寄の国鉄の駅で待ち合わせをして行った。
会社に着いたら、午後の部の50人くらいが少し大きな部屋に入り、3つのグループに別けられた。それぞれのグループごとに5人づつが呼ばれて面接部屋の前の廊下に置かれた椅子に座って順番を待った。面接は五十音順だったのでオレは最後の組になった。
オレの前のヤツが終わって出てきた。ほっとしたような感じでなく顔が引きつっていた。次はオレの番だ、ドキドキしてきた。ドアが開いて「次の方お入りください」と。オレは「ハイ!」と大きな声で返事をしてからドアをノックして「どうぞ」の声を聞いてからドアを開け中に入った。後ろ向きでドアを閉めてから、ふり返って面接官に向かって「○○です」といって一礼をした。そして、「どうぞこちらに座ってください」といわれてから椅子に座った。
「この会社を選んだ理由は?」「将来どんな社員になりたいですか?」「自分の長所・短所をいってください」。ここまではだいたい練習してきた内容だったので、それなりに答えられた。面接時間は「1人15分」と言われていたのでもうそろそろ終わりかなと思っていた時に、3人の面接官の1人が「キョウサントウは世間から嫌われていますがなぜだと思いますか?」といった。
えーッ、思ってもみない質問にオレの頭は混乱した。「はッ」といってしばらく黙ってしまった。すると、先の面接官がもう一度、「共産党は世間から嫌われていますがなぜだと思いますか?」と先より大きな声で聞いてきた。冷や汗が出てきた。何としても答えなければならない。少ない脳みそをフル回転させた。
「なんでも反対するからだと思います」というと、「よく聞こえません。もう一度言ってください」と。「はッ、はい、なんでも反対するからだと思います」…オレの声は震えていた。
一番偉そうな面接官が「はい結構です。これで終わります」といった。部屋から出てきたオレの全身は汗びっしょりだった。