風・感じるままに

身の回りの出来事と生いたちを綴っています。

生い立ちの景色(41) 兄とバイク

2013-10-08 | 生い立ちの景色
1961年7月。
イサム兄ちゃんがバイクを買うというので、俺もバイクの運転免許を取りに行くことにした。警察で講習を受けて簡単な筆記試験だけだったので一回で合格した。
イサム兄ちゃんは俺より前に受験していたが一回すべっていた。また、2回目の試験を受けるということだった。

そんな兄ちゃんがある日、会社の帰りに真っ新なホンダのスーパーカブ50CCに乗って帰ってきた。なんでも、カブの中でも一番いいものだそうでカッコいいやつだった。
俺の家では高い買い物だった。兄ちゃんの夏のボーナスだけでは足りなかったので、家からもいくらか出してもらったようだ。

兄ちゃんは、それから暫くして2回目の試験を受けたがまたすべった。そんなことで、免許を持ってない兄ちゃんは今まで通り毎日自転車で会社に行っていた。そして、3回目の試験はもう受けないという。イサム兄ちゃんはもともと勉強が嫌いだったので、筆記試験が苦手だったのだろう。

ということで、せっかく買ったバイクなのに自分は乗らないでもっぱら俺が乗っていた。これはここだけの話ですが、ほんとうは兄ちゃんは時々に内緒(無免許)で乗っていたのです。また、このバイクはエンジンの排気量が50CCなので二人乗りはできないのだが、よく兄ちゃんを後ろに乗せて俺が運転して駅まで送ったりしていた。

一方、俺の会社生活は仕事にもだいぶ慣れてきて要領もわかってきたので順調だった。ただ、この夏の暑さには参った。冷房のない工場中の窓を全開していたし大型の扇風機がいくつか置いてあったがまったく効かなかった。
昼の食堂に集まるみんなの作業服の背中がびしょ濡れだった。
俺は仕事中にもウオータークーラーの水を飲みに行くことができたが、コンベヤーラインに入っている人らは休憩までの2時間、自由にトイレにも行けなかったし水を飲みに行くこともにできなかった。