父はよく僕が子供の頃キャンプに連れて行ってくれたのだが、孫ともぜひキャンプしたいというのが永年の夢である。
本人は半身麻痺で車椅子生活。山でキャンプなんて逆立ちしたって無理って云うものなのだが、息子に何かお祝い事がある度に「テント、テント」と繰り返され、その都度反故にしてきていた。
仮に父抜きで考えても、家族でキャンプなんて僕にはできんのよ。虫大嫌いだし。
今回も息子の中学の進学祝にテントだという父を説得する前提で、「見るだけね、ちょっと見てみるだけね。」と云う事で石井スポーツにみんなで出かけたのだった。
しかし、仙台の石井スポーツは面した道路が駐禁で、家族をおろして最寄の駐車場へ駐車しにいっている間にじいちゃんは、いかにもプロの山男っぽい店員さんをつかまえて「テントを買いに来た」と直球。しかもその後も「人数は3人用で。」等などテキパキと指示してたらしい。
(後からカミさんから聞いた)
僕が店に入るとじいちゃんとカミさんは、そのプロの山男さんからテントの機能についてかなり詳細な説明を受けている最中だった。
「.....こっちは2千メートル級までなら平気なヤツですね。2千と云えば国内の大抵の山で使えるという事ですね。それ以上となるとこちら。このテントは更に軽量小型な上に6千メートル級まで耐えられるものです。」
聞いているのは車椅子の老人と女子供。そこに加わった僕は腹が出た運動とは無縁なオヤジである。
「........」
「ところで、どなたが使われるのでしょうか?」
こっちが聞きたいよ。
まるでジョン・ランディスのコメディムービーの一こまのような状況である。
呆然としていると父が
「後はストーブと鍋ね。」
「えーっ!!」
断るって言ったくせにっと目で非難してくるカミさん。説得するタイミングを摑めなかった僕はすっかり途方に暮れてしまった。父はもう既にテントを確定して、ストーブに集中。みれば、どれもけっこう高いじゃねーの。
「この手のストーブのボンベは飛行機に乗せられないんですが、世界中で手に入るのでストーブだけ持って行けばいいんですよ。」
飛行機も海外も関係ないだろー。
またここでも使い勝手について親切に説明してくれる店員さん。正直使う場面がイメージ出来ないのでほぼ理解不能。
「ま、ストーブはね。」等と適当に誤魔化しつつ一旦は店を出たものの、今更、父の膨らみきった期待を裏切るのは可哀想だと云う話しになり、じいちゃんから、孫の長男への贈り物としてパイネ ゴアライトテントをご購入してしまいました。
カミさん。スマぬ。
テントは天変地異の際に、是非大活躍して貰う予定で大事にしまわせて頂きます。