
普段なじみのあるものについては、その全てを知ったつもりでいることが多いのではないだろうか。ゆきたんくの第二の故郷とも言って良い茨城県稲敷郡。ここで私の父は生まれた。現在は鬼籍に入ってしまっているが、父から受け継いだ田でできた米を、ゆきたんく一家で食べている。
その米の生育に欠かせない水は利根川の支流からきているという。
ゆきたんくが初めて大きな川を見たのも利根川だった。
父の生まれた家から1.1kmほどで利根川だ。
その川幅は300mほどだ。子供心に海の向こうにまた町があるような感覚を持ったものだ。もっとも海と川との違いもわからず、漠然と海のほうが大きいのだと思っていたころのことだ。
それが仕事の取材で、渡良瀬遊水地(谷中湖)に行った帰りに利根大堰をみた時に、びっくりしたのだ。
利根大堰を流れているのは利根川ということは知っていた。
そして利根大堰の上は橋になっているので、車で渡っていたのだがその時の感覚が、「これは大きな川だ。なんという川かなぁ?」なんて反応だったのだ。
常識的に考えれば、利根川にかかっている橋(武蔵大橋)で堰も兼ねている利根大堰という予備知識から、目に入ってきた大きな川は利根川と理解されねばならない。
しかし、自分の知っている利根川と、まったく別人のような表情を見せられた時に、「…なんという川かなぁ?」となってしまったのだ。
利根大堰付近の川幅600mに翻弄されてしまったのだ。
橋の長さは700mを超えている。
武蔵大橋の埼玉県側には魚道観察室があり、魚の成育の様子や、水の流れなどを見ることができる。
魚道観察室の窓の一つ
利根大堰
ともあれ、物事だけではなく、人も知っているつもりで知らないことがたくさんあるのではないかと思わされた。うん、真理だと思う。