若い奴が調子にのるほど、格好悪いものはない。
秋川高等学校受験発表の日は、ある意味特別な日である。
ゆきたんくは私立を3校受けていてすべて合格していた。
当然、都立も合格するものだと思っていたのだからいい気なものである。
「先生、行ってきます。」
母校の中学校を一緒に受けた友人と出発したゆきたんくである。
2時間半かかって秋川高等学校に着いたのだ。
さて、その時の時刻は14時ごろ。
さあ、ある意味特別な日とは・・・
合格した私立高等学校の入学金振込み最終時刻が16時だったと思う。
つまり、都立高の合否を両親、学校の担任や進路指導主任は首を長くして待っていたのである。
私立の入学金を振り込まねば、合格は取り消し、都立を落ちてしまえば中学浪人なのである。
合格者の受験番号が並んでいる掲示板の前にきた。
友達はすぐに自分の番号を見つけた。
「やったぁ、おめでとう。」と余裕の声をかける。
それで自分の番号を探す。
「ない・・・」
もう一度探す。
「ない・・・」
念のためもう一度探す。
「ない・・・」
そんな馬鹿な、俺落ちたんだ。
「帰ろうか・・・」
友達にそう言い、駅の方向を向いた。
すごい敗北感に包まれたその時、「おい、こっちへ来いよ。」
掲示板はもう一つあって、そちらに自分の番号があったのである。
「やったぁ。」
二人で大きな喜びに包まれた。
そして、マルモという制服の業者が手招きをしていたので、その勢いで制服まで作ってしまった(笑)
「おい、お祝いだ。」
メタセコイア並木を歩きながら、薔薇色の人生が始まったかの錯覚をした。
たしか、西秋留の駅前かなんかで食事をした。
とっくに16時なんて過ぎてしまっている。
もう、何を話したのか覚えちゃ入ないが、楽しくってしょうがなかった。
20時過ぎに中学校に到着した。
合格の報告である。
「よくやった、おめでとう。」どころか、たいそう雷を落とされた。
まぁ、合格したということで、事は収まったが・・・
そう、ゆきたんく家の親父はたいそう怒って、絶対に私立の入学金なんて払わないと母親がどんなに頼んでも動かなかったようだ。
その手前、秋川への入学を許さざるを得なくなってしまった親父である。
親父の望んだ、公立高等学校への切符を手にしたゆきたんくは強かった。
まっ、はっきり言って、2発殴られたんだけれどね。
次回、「入寮前」
私たちの母校「東京都立秋川高等学校(全日制・全寮制)」の跡地に残されたのは300mの「メタセコイア並木」だけです。
この並木を残したいと、私たちOBは切実に願っています。よろしかったらご署名くださいませ。 ゆきたんく