温故知新中国料理 「喜臨軒」(キリンケン) 定期再訪→前回。
オープン以来、花見のシーズンには必ずお邪魔する当店へ、今年も訪問が叶いました。
(レンタロー) シェフー!オラだよ。今宵のディナーもよろしゅう頼むだあ。
予めシェフと予算等を相談。今回のコース料理はすべてお任せでお願いしました。
勿論、予算に応じたリクエストも快く受けてくれますが、信頼しているシェフですから、
私や連れの好みを把握し、どんな料理を組んでいるのか、ある意味楽しみであります。
テーブル・セッティングなどは、変わりがないため省略。
当店、卓上に菜譜の用意はなく、サーブ時に口頭説明というスタイル。
料理は、基本的に各人ごと のポーションで供されますが、大皿の場合は各自での
取り分け作業が必要です。
拼盆(前菜)
①バイ貝の紹興酒漬け、②ホタルイカの紹興酒漬け
①にはゴボウ、②にはカブを枕木に提供。
漬け加減は程よく、ほんのりとしたピリ辛さが味をステージアップ。
旬の食材、丸ごと食べるホタルイカは、ワタのコクが広がり、旨味も豊かです。
鮑焼売
「今日は貝料理が多いのですが……。」
(レンタロー) おお!久々の“クイーンオブシューマイ”。おめ、どしてたぜよ!
ブログマスコットが勝手に命名した“クイーンオブシューマイ”(エゾアワビ姿煮のせ鮑焼売)。
トップの姿煮は程よい柔らかさを念頭に置き、肉餡に入れるカットアワビはシコシコとした
歯触りを大切に食感に強弱をつけ、とても丁寧に作られています。
鮑焼売をコーティングする特製海鮮ソースは、いつにも増して味の完成度が高く、
甘さを控えたまろやかな味わいと、柔らかなコクのバランスは妙妙で、
リッチな美味しさが口いっぱいに開花します。
麻辣拌豆付
「今日は何を使っているのか、当ててみてください。」
シェフからの挑戦状は、自家製の麻辣豆腐。
フルフルとした豆花( 豆腐花)仕立ての自家製豆腐に、ナッツや松の実を合わせた
芳香な麻辣ソースは、スパイシー路線をまっしぐらに突き進むものではなく、
深みのつけ方がひと味違うのだという。このコクに注目!
(寝太郎) 胸腺!リードボーだ!
貝柱!フォアグラ!レバー!脳ミソ系!
さんざん不正解を連発し、ようやく正解を引き当てたのは寝太郎さんであります。偉いぞ。
胸腺のまったりとしたコクが味を深化させ、スプーンで混ぜ合わせても、
その一体感は素晴らしく、まるで極上のソースを舌の上に乗せるよう。
ナッツの食感をアクセントに、香り、コク、味の三拍子が揃った夢心地の美味しさで、
実に贅沢さを感じさせてくれる麻辣豆腐です。
話によると、胸腺は冬場に活躍した白子の代わりに、これからの季節に扱える素材は
ないかと模索した結果、掴んだ食材なのだそう。日々、努力しているのだ。
(寝太郎) 胸腺使い、いいね!脂があるけど、くどさはなくて、コクと食感も楽しめる。
四川を専門と謳わない当店オリジナルの味わいで、この麻辣豆腐は抜きんでたね。
スペシャリティとして戦えるものになると思うな。
金沙少魚
ワカサギのスパイシーフリット。付け合わせにはタケノコも。
衣を薄くつけ、カラッと香ばしく揚げたワカサギのフリットは、丸ごと食べれて、
中はしっとりふかふかで淡泊な味わい。香菜やナッツ、唐辛子を散りばめ香辛料の香る
香港漁師風のパウダー使いは、当店の顔ともいえるもので盤石の美味さを提供。
付乳油麦菜
白貝とA菜の腐乳炒め。
「去年はハマグリとレタスの炒めもののリクエストをいただいて――。今回は白貝で、旨味を
足すために干し肉と腸詰をプラスしました。一年間の成果ということで。」
なんと!シェフは私が昨年の同時期に願い出た腐乳炒めを覚えていてくれたのだ(涙)。
(寝太郎) うう、なんて情が深いんだ。その話だけで、ボクはご飯が3杯食べれます!
感性によりアレンジした香り豊かな炒めは、一皿に貝と肉と野菜が共存し、それぞれが邪魔をせず、
腐乳のクセと調和を成し、コクの入り方もまろやかで、味に奥行きと広がりを感じられた。
この1年の集大成とも言える腐乳炒めのステージでしたが、シェフは鮮やかに変化球を
投げ込み、私たちを魅了したのであります。
生意気を言った自分が恥ずかしい。 本当にごめんなさい。
蜂斗薹象抜蚌
初春の山菜、フキノトウと象抜蚌(ミル貝)の香草炒め。
貝の登場回数は多いのですが、塩味ベースのため、流れ的にも味付けのかぶりがなく、
また濃淡が利いているので、食傷傾向にも陥らず、マイルドで、貝のもつほのかな甘みと
シコシコとした食感を楽しめました。
何かが違ってきた!私は組み立てと味に、繊細さ、さえ感じましたよ。
入店時から厨房に気になるものがありまして、それが、この日のメイン鶉!
脆皮炸鶉
皮目をパリパリに仕上げたウズラに、好みで使える香り塩と自家製辛味調味料も
添えられていますが、使わなくとも十分。いや、使って欲しくはない、が自分の本音。
火入れの妙が光り、皮目のぱりっと感と、締まった肉自体の味の濃さ、豊かな旨味を
閉じ込めたジューシーな味わいは、目の覚めるような美味しさで、完全に心を射抜かれた。
実はこの鶉、シェフがようやくめぐり逢えた恋人。
当店は2名で来店されるお客様が多いため、クオリティを落とさず、脆皮炸鶏を
小さな鶏で提供できないだろうかと、探し求めていたらしいのです。
また、なかなかこのパリパリ感がだせる鶉にヒットしなかったようですが、シェフの
料理に対する情熱は少しも揺るぎません。
運命の出会いは訪れ、ついに念願は成就、ここに脆皮炸鶉が完成したのであります。
持論ですが、これもスペシャリティとして勝負できると思う。抜群に美味い。
(寝太郎) 情熱大陸は続く!餌は人と同じ米を食べている鶉なんだって。
これで可能性が広がり、いま、この鶉で乞食鶏をやっているそうだよ。
要予約だから、興味のある方は店に問い合わせてね。
(ノブロー) な、首のとこもうめえだ!逃すでねえよ。
んで、オラも持論を言わせてもらうと、シェフは鶉の力を引き出してる、乳鳩と戦えるで!
炒麺
桜エビと韮の焼きそば。おつまみ力も優秀で、〆にほっと落ち着ける味わいです。
(ノブロー) 春を感じるだな。今日は全面的にシェフに任せて良かっただ。
甜品
春のデザートは苺を使った桜風味のプリンで、タピオカ、ココナッツミルク入り。
ガラスのリムプレートで提供されましたが、パフェグラスを使い、ミントの葉を添えれば、
視覚的にも幸福度が増すと思いますが、デザートは主力メニュー外なので、おそらく
器が揃っていないのでしょう。贅沢な意見ばかりで申し訳ない。
優しく軽い甘さでいただけ、好感度は高い。私達も美味しく完食いたしました。
今回はシェフの新境地を見た思いで、新鮮な驚きがたくさんあり、改めて秘めた
ポテンシャルの高さを実感しました。
酒は唐栄伝統型10年@4,800×2、生ビール@600、ほかグラス紹興酒などを数杯と、
またも酒豪っぷりを発揮し 会計は、1人当たり13,000円(千円未満四捨五入)
退店時には、ご厚意で、当該コースの中国料理名を記したメモをいただきました。
一部ですが、記録はそれを参考にさせてもらっています。
喜臨軒 (キリンケン)
東京都世田谷区池尻3-2-5 コンフィアンス流来 B1F
TEL 03-5787-6982
営業時間/ 月~土 11:30~14:00 (L.O)18:00~22:15(L.O)
定休日 日曜・月曜日ランチ