静かに雨の降る夜。母の入院騒動が終わった。単なる吐き気で大したことなく済んだ。心の疲れがじわじわと出てくる。なにかふと久世光彦が書いた「触れもせで」向田邦子との20年 を思い出した。疲れた心にあたたかい心が届く。そう、「触れもせで」なのだ。若い日の恋とは違い、この深い想いの交流はむしろ人と人との本質が触れ合うような言葉には表せないものだ。そういうお付き合いがいまの宝ものだ。ただ、日常とは違う次元になったとき、心の中に燃える火の玉のようなものを見てしまう。怖いというよりは、むしろほっとその炎を見ている自分がいる。なにも変わっていない自分をそっと抱きしめる。
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