神戸ファッション美術館で開かれている吉村芳生展、今日が最終日だということで慌てて観に行く。寡聞にして知らない画家なのだが超絶技巧という惹句とポスターのフジの絵に惹かれての鑑賞。
うーん、確かに超絶技巧。リトグラフやシルクスクリーンによるものの制作方法の解説がよくわかったわけではないがわかった範囲でも気の遠くなるような手法が用いられていることに思わずため息がでてしまう。さらには色鉛筆で彩色された植物の絵の精緻さにも気が遠くなる思いがする。実際の新聞を鉛筆で再現した上に自画像を描いたものもあったがこれまたタメ息の出るような精密さ。
年譜によれば作者は63歳で亡くなっているが、ここまで根を詰めたら寿命も縮まるんじゃないの、いや作者本人がこういう技法を突き詰めることに情熱を燃やし喜びを感じていたとしたら本望だったのかななどとつい凡人は詮索したくなってしまう。
さらにはこういう超絶技巧で作られたものとその対極にある極度に簡略化した抽象的な作品との落差の大きさに戸惑いを覚え、どうしても手間暇かけたものの方に肩入れしたくなりその金銭的価値が気になってしまい、芸術を鑑賞するという姿勢にほど遠くなってしまう俗人の自分を反省するのだった。