奥穂高岳直下の山小屋、穂高岳山荘の小屋番だった宮田八郎さんが今年4月に亡くなった。特に面識があるわけではないが出身が神戸の灘区ということもあり、いつもブログ「ぼちぼちいこか」を読んでその写真を楽しみにしていた一ファンにしか過ぎないのだが。
仕事柄、山で亡くなるならまだわかるが、伊豆の海へシーカヤックで漕ぎだしそのまま行方不明になり死亡が確認されたと聞いたときはその運命の皮肉さに驚いた。その宮田さんが撮った多くの映像作品の上映会が灘区民ホールであるとのことで観に行った。
小屋番として遭難者の救助にも携わり、映像のなかにはその模様を撮った現場の息の詰まるような映像もあったが、そのほとんどは美しい自然の映像だった。雪で白くなった3000Mの稜線の山々、朝焼け、雲海、流れる滝雲、満天の星空の流れ星など溜息のでる美しさだった。登山者として年に何回か山に登っていれば時折は実際に見られるものもあるが、気象条件が整わなくては観られず、そのチャンスは決して多くはない。長期間稜線の小屋にいればこその映像ばかりだった。
こういう自然の作り出す美しさを見てしまうと街で観る電飾がなんとなく薄っぺらな気がしてしまう。もちろんそれも美しいのだが、美しく見えるように造っているのだから当たり前としか思えず心を打つような感動はない。
「虎は死して皮を留める、人は死して名を残す」というが、宮田さんとその残した映像は長く人の記憶に残ることは間違いない。それにしても52歳での早すぎる死は痛ましい。