誘われて神戸ファッション美術館の「切り絵アート展」を観に行く。実のところあまり興味がなかったのだが実際観てみるとなかなか素晴らしい。なぜ興味がなかったかといえば切り絵にするには当然その下絵を描くわけで、絵としてそれで十分ではないか、何もわざわざそれを切り取らなくてもいいのではなどと思っていたからだ。しかし観てみるとその技法は作家によって様々で絵とはまた別物だとわかった。実際の制作過程の映像も見られたが、カッターや鋏だけで切り取るその手間暇は気が遠くなるばかり。その精緻さは先日観た「驚異の超絶技巧展」の作品といい勝負だ。まったく世の中には器用で神の手を持つ人がいるものだ。
凡人からすると想像を絶するような緻密で精巧な作業の積み重ねだが、こういう作家たちの生活の他の面はどうなっているのだろうか。案外家のなかはゴミ屋敷、そんなわけはないだろうけれどどこか手を抜いたテキトーなところがないと精神的に耐えられないと思うのだが。
几帳面さといい加減さの両方でバランスをとって人は生きている気がする。すべてにいい加減、すべてに細かいというわけではなさそうだ。人間、こだわりのあることに細かくなってそれが究極までいくとアートになるのでは。
というわけで一見大雑把で細かいことに拘らないように見える私もけっこう細かくて神経質なところがあったりするのだ。