アメリカのクライマー、アレックス・オノルドがヨセミテの高さ約1000Mの垂壁エル・キャピタンを一切の道具を使わずフリーソロ、つまり単独で素手だけで上るドキュメンタリー映画。
以前にやはりヨセミテのハーフドームを上る映画を観た時は登る映像だけだったのだが、今回は私生活から登るまでの準備、撮影隊の様子なども詳しく描かれている。その時はどうやって撮っているのか不思議だったが今回はそれもよくわかった。
何回もロープを使った下見をしたうえとはいえ、誰もなしえたことのないフリーソロでの登攀は失敗すれば死は必至。無謀なことは本人が一番わかっているはずだがそれでもどうしてもしたい、しなくては気が済まない。常人の理解を越えてしまっている行動をガールフレンドを含め誰も止めることはできない。
準備が終わっていちど上りかけるがその時は途中で止めてしまう。そして再度の挑戦。滑り止めのチョークをいれた小さなバッグだけを腰に着け、ヘルメットさえ着けず(着けても無駄だけど)上っていく。成功したことは分かったうえで観ているのだがそれでもハラハラしてしまう。撮影隊の人でさえ、怖くて見ていられないと途中で目を背けてしまうほどだ。上り始めから4時間弱、生きて頂上に立つ。
これまで世界中の岩壁で道具を使い、ロープで確保した登攀でも亡くなったクライマーは数知れず。そんな人が天国から見ていたら「何してくれてんねん」「こっちへきたらあかんで」と声をかけたくなったのではないだろうか。
今回の成功で彼はやり切った感を得られたのだろうか。肉体的にもう無理と納得するまで命懸けの挑戦は続くのか、それとも守りに入った人生を送るのか。周囲は皆、もうやめておいたらと思いつつ、また新しい挑戦を見てみたいと心のどこかで無責任に期待しているところがあったりして。