前日西穂山荘から奥穂高岳への厳しい岩稜帯を歩いて頂上に立ち、気を良くして朝を迎えたのだが、起きようとすると猛烈に太腿が張って痛い。北穂を越えて槍ヶ岳などといってはいられない。とにかくなんとか下山しなければならない。
穂高岳山荘のテラスから奥穂岳岳へのルート
下山はザイテングラードを下り涸沢、横尾を経て上高地へと標高差1500Mほどある。歩き始めたのだがこの筋肉痛は上りより下りの方が痛いのだ。ソロソロとできるだけ痛まないように足の置場を考えるのだが、どう置いても痛いものは痛い。
痛みに耐えてなんとか涸沢まで下りる。そこからは若干斜度も緩むが痛みは容赦してくれない。しかも痛い脚をかばって歩いているうちに膝や足首まで痛くなってくる。もう泣きたくなるほどだ。
本谷橋から横尾に向かって脚を引きずって歩いていると、後ろから来た男性が「荷物、持ってあげましょうか」と声をかけてくれる。そんなことを頼めるわけもなく「ゆっくり行くので大丈夫です」と丁重に断る。「気をつけて」と声をかけ追い抜いていったのだがしばらくすると戻ってきて「よかったらどうぞ」といって湿布薬をくれた。さっそく貼ってみたがあまり効果はない。しかしそのやさしい気持ちがうれしく、世の中には親切な人もいるものだと励まされなんとか横尾に着く。
ここからは殆ど水平道だが距離は10キロ以上ある。それでも何とか歩きとおして上高地のバスセンターに着く。尾籠な話だが当時まだトイレは和式でしゃがむのが一苦労だった。
このあとどうやって自宅までたどり着いたのかは全く記憶にない。
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