のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

くるみ街道 /青木奈緒

2007年01月19日 23時32分24秒 | 読書歴
■ストーリ
 留学を終え、翻訳の仕事をしながらドイツで暮らす京。両親のいる日本と
 恋人の待つドイツを行き来しながら、心は両者の間をゆれ動く。
 旅先での出会い、友人の結婚と失意、恋人との諍い。幸せと苦悩を
 かさねながら、やがて京は歩むべき道を見定めていく。
 幸田文、青木玉を若い世代へ継ぐ感性溢れる長篇小説。

■感想 ☆☆*
 「ハリネズミの道」の続編。前作は「新感覚エッセイ」だったが、
 今回は「長編小説」として紹介されている。
 やはり「エッセイ」ではないのだろう。
 敢えて言いうならば「私小説」だろうか。

 どこの国でも、働く上での苦労や楽しみ、生きていくうえでの悩み
 は変わらない。京は年頃の女性が持つ焦燥感、行き詰まりを感じつつ、
 異国でひとりで生きていく。
 問題自体は変わらないけれど、異国で暮らすことによって、
 その問題と正面からひとりで対峙することが求められる。
 その厳しさや孤独は自国で生活している人が味わえないものだ。

 それでも、ゆっくりと前に進んでいく京。
 「ハリネズミの道」の冒頭、飛行場で自分の荷物を受け取れずに
 途方にくれていたオンナノコは、南ドイツの悠然とした時の流れの中で、
 愛する人を見つけ、心許せる様々な年代の友人を見つけ、
 学生時代の思い出が残る「くるみの道」の傍に、借家ではあるが、
 自分の家を持つことになる。
 ゆっくりとではあるが、確実に、自分で自分の歩む道を
 掴み取っていく彼女が羨ましくなった。

 これを機に、ぜひ、青木玉さん、幸田文さん、幸田露伴さんの
 作品にも手を伸ばしてみたい。・・・露伴さんは挫折しちゃうかな。