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トニーノの歌う魔法/D・W・ジョーンズ

2008年04月13日 09時33分45秒 | 読書歴
29.トニーノの歌う魔法/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

■ストーリ
 法の呪文作りの二つの名家が反目しあう、イタリアの小国
 カプローナ。両家の子どもたちトニーノとアンジェリカの
 謎の失踪に、大人たちは非難しあって魔法合戦をくり広げる。
 トニーノの兄姉たちはクレストマンシーを呼ぶことに。
 一方トニーノたちは目覚めると、人形の大きさになり、
 人形の家に閉じこめられていた!
 クレストマンシーシリーズ第四巻。
 シリーズ他の作品の感想はコチラ。

■感想 ☆☆☆
 読みながら、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの溢れる想像力に
 ただただ感嘆した作品。
 すごい。すごすぎる。何を考えて生きていたら、こんなふうに
 別世界を見事に構築できるのだろう。こういった作品を読む度に
 「本を読むことが好きな人」が「本を書ける」わけではない、と
 思い知らされて、わくわくする。自分の部屋にいながらにして
 別世界を訪問できる幸福を堪能できた。

 大魔法使いクレストマンシーは魔法使いが日常的に存在する
 世界で、彼らが自分の能力を正しく使っているかを監視する
 役職にある人のことだ。つまり「クレストマンシー」は
 役職であって、人名ではない。ただし、シリーズ四作品はすべて
 同じ人物がクレストマンシーに携わっているときに起こる物語を
 描いている。

 今回は、現存するイタリアとは少し違う「イタリア」の世界。
 歌声を「呪文」として扱うことができる二家族と「ロミオと
 ジュリエット」のお話を掛け合わせて構築されている。
 二家族が話の中心を占めているため、登場人物がとにかく多いが
 それぞれの人物を見事に描き分けていて、混乱することはない。
 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品には「お利口さん」は
 出てこない。この作品でも登場人物はみな一癖も二癖もある人たち
 ばかりで、そこかしこで余計なことをしては問題を勃発させている。
 そして、それらの問題が見事にラストで結びつき、絡み合って
 大円団を迎えるのだ。ひとつひとつの小さな問題を伏線として、
 ラストに結びつける手法は実に見事で、終盤でワクワクしながら
 ページをめくり続けることができた。