54.迷子の眠り姫/赤川次郎
☆☆
体育の日、誰かに川へ突き落とされ、「あの世」へ行きかけた
高校生の里加。生き返って目を覚ますと、不思議な「力」が
そなわっていた。一体誰が里加をつき落としたのか?
単身赴任の父や妹の秘密、ボーイフレンドや友達を巻き込む
幾つもの危機。
という、「いかにも赤川さん」の青春ミステリ。爽やかで
青春小説でからっとした気持ちで本を置くことができます。
おそらく疲れがたまっていたのでしょう。
私にとって、バロメータにもなっている赤川作品。
疲れているときの赤川帰りなのです。
いつだって前向きで明るくて、でも節度を持って清く正しい
高校生であろうとする赤川作品の主人公たちに触れていると
元気が沸いてきます。
55.その女の名は魔女/赤川次郎
☆☆
生まれながらの霊感体質で幽霊を呼び寄せる類まれな
バスガイド、町田藍。彼女が添乗する「すずめバス」の
「怪奇ツアー」は、今日も大人気。幽霊が出る旧家の土蔵、
本物の亡霊が現れる『ハムレット』の舞台、魔女が
火あぶりにされ、今も恨みが残っているという村。
藍がそれぞれの怪奇現象の謎を解くうちに明らかになる
幽霊たちの悲しさ、淋しさ。
「霊感バスガイド」シリーズ第二弾だそうです。全5編からなる
連作短編集です。連作短編集は一遍一遍が短くて読みやすい
うえに、全体としてはつながっているために登場人物たちに
深みが出て(愛着も沸いて)非常に好みです。
ただし、この作品はあくまでも「幽霊」が主人公。
ヒロインの藍は脇役に徹しているため、あまり出番は
ありません。このシリーズもまだまだ続くのかな?
久々に三毛猫ホームズなんかも読みたくなってきたかも。
56.ワーキング・ホリデー/坂木司
☆☆☆
夏のある日、ホストクラブで働く元ヤン・沖田大和のもとに
突然、息子と名乗る小学五年生の進がやってきた。
息子の教育上、ホストはよろしくないため、大和は昼間の
仕事である宅配便のドライバーへ転身する。正義感に溢れ、
喧嘩っ早くて義理人情に篤い大和。
家事にたけて口うるさい、おばちゃんのような中身の進。
仕事や仲間を通して、二人は絆を深めてゆく。
いかにも坂木さん、といった優しさに満ち溢れた作品。
世の中色々と殺伐としてきてはいるけれど、でもきっと
まだまだ優しさとか暖かさはこんなにも人間に満ち溢れて
いるんじゃない?という作者の声が聞こえてくるような作品です。
少し甘いんじゃないのかな。世の中、こんなふうに
「いいことばかり」じゃないと思うんだけど。とも思うけれど
世の中を、人と人との絆や縁を徹頭徹尾信じようという
決意に満ち溢れた作品は心地よいです。
「家庭」には「食事」が必要不可欠なんだな、と思わされる
作品でした。そして、宅急便の方々へは、心からのお礼を
伝えようと決意しました。
57.泥流地帯/三浦綾子
58.続・泥流地帯/三浦綾子
☆☆☆☆☆
大正時代の北海道で厳しい自然と共に生きる農村の人々。
拓一と耕作の兄弟は、幼い日に父と死に別れ、母とも別れて
暮らさなければならなくなる。厳しい現実の中、ふたりは
祖父母のもとで自然と正面から向き合いながら前向きに生き、
成長していく。しかし、そんな中、自然は容赦なくふたりに
そして、開拓地域に襲い掛かる。
「神の不条理」というキリスト教をテーマにした作品ですが
非常に読みやすく、そして、人生について考えさせられる
作品でした。
どう生きるべきなのか。
正しい、とはどういうことなのか。
私たち人間は何のために生きているのか。
誰のために生きているのか。
そういった普遍的なテーマを平易な日本語で、胸に迫る
言葉で描いてくれています。
こういった先駆者の苦労があって、今の日本がある。
そういったことに改めて気付かされました。
59.あ・うん/向田邦子
☆☆☆☆*
昭和初期の山の手を舞台とした、製薬会社サラリーマンの
水田仙吉と仙吉の親友で実業家の門倉修造、門倉に慕われる
仙吉の妻、たみ、仙吉夫婦の一人娘さと子、そして門倉の愛を
得られぬ妻の君子を中心とした支那事変前夜の昭和の人々の
暮らしを描いている。
初読です。向田さん大好きなのに、初めて手に取りました。
案の定、素敵なお話でした。向田さんが飛行機事故で
お亡くなりにならなければ、まだまだ話は続く予定だった
そうです。残念でなりません。
今はもう完全に失われてしまった昭和の香りが、あの時代の
品の良い恋愛が、本全体から漂ってきます。
いつから恋愛は「若者のもの」になってしまったんだろう。
いつから大人たちが若者と張り合って若作りをするように
なったんだろう。そういった疑問を覚える作品でした。
大人ならでは、の苦さと甘さが詰め込まれた恋愛が
非常に切なく、それ以上に魅力的です。
2000年にTBSでリメイクされているようですが
その際の役者陣が私にとっては、非常にしっくりくる
方々ばかりでした。ぜひ再放送して欲しいです。熱烈希望。
水田 仙 吉:串田 和美 / 水田 たみ:田中 裕子
門倉 修 造:小林 薫 / 門倉 君子:樋口可南子
水田 初太郎:森繁 久彌 / 水田さと子:池脇 千鶴
60.賢治の学校/鳥山敏子
☆☆☆
教育の理想のかたちが「賢治」の中にある。宮沢賢治の作品や
生き方を通して、子どもの教育にとって大切なものは何かを探り、
その実践の場としての「賢治の学校」を語る。
宮沢賢治の小説の一部は好きですが、一部は「よくわからん。」
と思っていました。小学校の国語の教科書に掲載されていた
「やまなし」の詩なんて、まさにその代表。
あの授業では散々、苦しめられた気がします。
この本を読むことによって、未だにこんなにも鮮やかに覚えている
「やまなし」という詩の魅力について、考えさせられました。
心に爪あとを残す詩。作品。
賢治の紡ぐ言葉が持つ力の源は一体、なんだろう。
賢治の作品だけでなく、生き様に興味を持ちました。
61.臨場/横山秀夫
☆☆☆*
辛辣な物言いで一匹狼を貫く組織の異物、倉石義男。その死体に
食らいつくような貪欲かつ鋭利な「検視眼」ゆえに、彼には
「終身検視官」なる異名が与えられていた。
誰か一人が特別な発見を連発することなどありえない事件現場で、
倉石の異質な「眼」が事件の真相を見抜く。
さすが横山さん。はずれのない作品です、。堅実に楽しめる作品、
「単なる2時間もの」にはしない迫力があります。短編なのに
しっかりと人間を書き込んでいる作品にいつも、感嘆します。
ドラマも見たかったな。
今月は非常に読書量が少なくなってしまいました。
図書館に行けていないのが大きいのかな。
来月はもう少し本とオトモダチになりたいな。
☆☆
体育の日、誰かに川へ突き落とされ、「あの世」へ行きかけた
高校生の里加。生き返って目を覚ますと、不思議な「力」が
そなわっていた。一体誰が里加をつき落としたのか?
単身赴任の父や妹の秘密、ボーイフレンドや友達を巻き込む
幾つもの危機。
という、「いかにも赤川さん」の青春ミステリ。爽やかで
青春小説でからっとした気持ちで本を置くことができます。
おそらく疲れがたまっていたのでしょう。
私にとって、バロメータにもなっている赤川作品。
疲れているときの赤川帰りなのです。
いつだって前向きで明るくて、でも節度を持って清く正しい
高校生であろうとする赤川作品の主人公たちに触れていると
元気が沸いてきます。
55.その女の名は魔女/赤川次郎
☆☆
生まれながらの霊感体質で幽霊を呼び寄せる類まれな
バスガイド、町田藍。彼女が添乗する「すずめバス」の
「怪奇ツアー」は、今日も大人気。幽霊が出る旧家の土蔵、
本物の亡霊が現れる『ハムレット』の舞台、魔女が
火あぶりにされ、今も恨みが残っているという村。
藍がそれぞれの怪奇現象の謎を解くうちに明らかになる
幽霊たちの悲しさ、淋しさ。
「霊感バスガイド」シリーズ第二弾だそうです。全5編からなる
連作短編集です。連作短編集は一遍一遍が短くて読みやすい
うえに、全体としてはつながっているために登場人物たちに
深みが出て(愛着も沸いて)非常に好みです。
ただし、この作品はあくまでも「幽霊」が主人公。
ヒロインの藍は脇役に徹しているため、あまり出番は
ありません。このシリーズもまだまだ続くのかな?
久々に三毛猫ホームズなんかも読みたくなってきたかも。
56.ワーキング・ホリデー/坂木司
☆☆☆
夏のある日、ホストクラブで働く元ヤン・沖田大和のもとに
突然、息子と名乗る小学五年生の進がやってきた。
息子の教育上、ホストはよろしくないため、大和は昼間の
仕事である宅配便のドライバーへ転身する。正義感に溢れ、
喧嘩っ早くて義理人情に篤い大和。
家事にたけて口うるさい、おばちゃんのような中身の進。
仕事や仲間を通して、二人は絆を深めてゆく。
いかにも坂木さん、といった優しさに満ち溢れた作品。
世の中色々と殺伐としてきてはいるけれど、でもきっと
まだまだ優しさとか暖かさはこんなにも人間に満ち溢れて
いるんじゃない?という作者の声が聞こえてくるような作品です。
少し甘いんじゃないのかな。世の中、こんなふうに
「いいことばかり」じゃないと思うんだけど。とも思うけれど
世の中を、人と人との絆や縁を徹頭徹尾信じようという
決意に満ち溢れた作品は心地よいです。
「家庭」には「食事」が必要不可欠なんだな、と思わされる
作品でした。そして、宅急便の方々へは、心からのお礼を
伝えようと決意しました。
57.泥流地帯/三浦綾子
58.続・泥流地帯/三浦綾子
☆☆☆☆☆
大正時代の北海道で厳しい自然と共に生きる農村の人々。
拓一と耕作の兄弟は、幼い日に父と死に別れ、母とも別れて
暮らさなければならなくなる。厳しい現実の中、ふたりは
祖父母のもとで自然と正面から向き合いながら前向きに生き、
成長していく。しかし、そんな中、自然は容赦なくふたりに
そして、開拓地域に襲い掛かる。
「神の不条理」というキリスト教をテーマにした作品ですが
非常に読みやすく、そして、人生について考えさせられる
作品でした。
どう生きるべきなのか。
正しい、とはどういうことなのか。
私たち人間は何のために生きているのか。
誰のために生きているのか。
そういった普遍的なテーマを平易な日本語で、胸に迫る
言葉で描いてくれています。
こういった先駆者の苦労があって、今の日本がある。
そういったことに改めて気付かされました。
59.あ・うん/向田邦子
☆☆☆☆*
昭和初期の山の手を舞台とした、製薬会社サラリーマンの
水田仙吉と仙吉の親友で実業家の門倉修造、門倉に慕われる
仙吉の妻、たみ、仙吉夫婦の一人娘さと子、そして門倉の愛を
得られぬ妻の君子を中心とした支那事変前夜の昭和の人々の
暮らしを描いている。
初読です。向田さん大好きなのに、初めて手に取りました。
案の定、素敵なお話でした。向田さんが飛行機事故で
お亡くなりにならなければ、まだまだ話は続く予定だった
そうです。残念でなりません。
今はもう完全に失われてしまった昭和の香りが、あの時代の
品の良い恋愛が、本全体から漂ってきます。
いつから恋愛は「若者のもの」になってしまったんだろう。
いつから大人たちが若者と張り合って若作りをするように
なったんだろう。そういった疑問を覚える作品でした。
大人ならでは、の苦さと甘さが詰め込まれた恋愛が
非常に切なく、それ以上に魅力的です。
2000年にTBSでリメイクされているようですが
その際の役者陣が私にとっては、非常にしっくりくる
方々ばかりでした。ぜひ再放送して欲しいです。熱烈希望。
水田 仙 吉:串田 和美 / 水田 たみ:田中 裕子
門倉 修 造:小林 薫 / 門倉 君子:樋口可南子
水田 初太郎:森繁 久彌 / 水田さと子:池脇 千鶴
60.賢治の学校/鳥山敏子
☆☆☆
教育の理想のかたちが「賢治」の中にある。宮沢賢治の作品や
生き方を通して、子どもの教育にとって大切なものは何かを探り、
その実践の場としての「賢治の学校」を語る。
宮沢賢治の小説の一部は好きですが、一部は「よくわからん。」
と思っていました。小学校の国語の教科書に掲載されていた
「やまなし」の詩なんて、まさにその代表。
あの授業では散々、苦しめられた気がします。
この本を読むことによって、未だにこんなにも鮮やかに覚えている
「やまなし」という詩の魅力について、考えさせられました。
心に爪あとを残す詩。作品。
賢治の紡ぐ言葉が持つ力の源は一体、なんだろう。
賢治の作品だけでなく、生き様に興味を持ちました。
61.臨場/横山秀夫
☆☆☆*
辛辣な物言いで一匹狼を貫く組織の異物、倉石義男。その死体に
食らいつくような貪欲かつ鋭利な「検視眼」ゆえに、彼には
「終身検視官」なる異名が与えられていた。
誰か一人が特別な発見を連発することなどありえない事件現場で、
倉石の異質な「眼」が事件の真相を見抜く。
さすが横山さん。はずれのない作品です、。堅実に楽しめる作品、
「単なる2時間もの」にはしない迫力があります。短編なのに
しっかりと人間を書き込んでいる作品にいつも、感嘆します。
ドラマも見たかったな。
今月は非常に読書量が少なくなってしまいました。
図書館に行けていないのが大きいのかな。
来月はもう少し本とオトモダチになりたいな。