のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

7月の読書

2009年09月08日 21時38分37秒 | 読書歴
62.SPEED/金城一紀
   ■ストーリ
    私の憧れの女性だった家庭教師の彩子さんが自殺!?
    岡本佳奈子、16歳。真面目で平凡な女子高生。
    後悔なんかするもんか。真相を求めて、私の生まれて
    初めての冒険が始まる。ゾンビーズ・シリーズ第3弾。
   ■感想 ☆☆☆☆
    食わず嫌いをしていた作家のうちのひとりだった金城さんに
    初挑戦。どうして食わず嫌いをしていたのか、今までの自分
    を激しく後悔した。
    今まで平凡な生活を送っていた女子高生の初めての大冒険が
    スピーディに、スタイリッシュに描かれていて、結末まで
    一気に読み終えられる。読後感はとにかく爽快。
    ヒロインが感じている「わくわく」を一緒に味わえた。
    ヒロインに協力してくれる高校生四人組のゾンビーズは
    他の作品でも活躍している様子。ぜひ、読み進めたい。

63.六の宮の姫君/北村薫
   ■ストーリ
    最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を
    掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる
    出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、
    図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。
    「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」
    王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、
    「私」の探偵が始まった。
   ■感想 ☆☆☆☆☆
    北村さんの代表シリーズ。シリーズのほかの作品では、
    落語家、円紫さんと女子大生「私」が遭遇する日常の謎を
    巡る連作短編集だが、この作品は少し毛色が異なる。
    この作品を読んでいると、私にとって「歴史上の人物」
    「教科書に掲載されている人物」だった芥川龍之介と菊池寛が、
    そして、明治の文学が非常に身近に感じられる。
    友情を築きあった友であっても起こり得るすれ違いに、
    人と関わるが故の孤独を感じた。

64.終末のフール/伊坂幸太郎
   ■ストーリ
    あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。
    「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて
    5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の
    団地住民たちは、いかにそれぞれの人生を送るのか? 連作短編集。
   ■感想 ☆☆☆*
    伊坂作品ならではの奇想天外な設定ではあるが、内容や
    登場人物たちの行動は奇想天外ではない。
    もし現実に3年後、世界が終わると発表されたら、おそらく
    私たちもこのような過ごし方をするだろう、と納得できる。
    「明日」ではなく「3年後」の滅亡。
    だからこそ、感じる不安やパニックと、「3年」という猶予が
    あるからこそ許される人々の「いかに生き、いかに死を迎える
    べきか」というそれまでの人生と向き合う姿勢が、物語に
    重厚感を与える。たとえ3年後に死ぬことが分かっていても、
    そしてその事実に絶望しても、最終的には、その3年間を
    精一杯に生き抜こうという結論に落ち着くのが人間なんだな
    としみじみ思った。
 
65.ぼくのメジャースプーン/辻村深月
   ■ストーリ
    「ぼく」は小学四年生。不思議な力を持っている。忌まわしい
    あの事件が起きたのは、今から三ヵ月前。「ぼく」の小学校で
    飼っていたうさぎが、何者かによって殺された。大好きだった
    うさぎたちの無残な死体を目撃してしまった「ぼく」の幼なじみ
    ふみちゃんは、ショックのあまりに全ての感情を封じ込めたまま、
    今もなお登校拒否を続けている。笑わないあの子を助け出したい
    「ぼく」は、自分と同じ力を持つ「先生」のもとへと通い、
    うさぎ殺しの犯人に与える罰の重さを計り始める。
    「ぼく」が最後に選んだ答え、そして正義の行方とは?
   ■感想  ☆☆☆☆☆☆
    何度読んでも泣けます。今、思い出しても少し目頭が熱くなる。
    いろんな人にお勧めしたい作品。
    最後まで読み終えて、「ぼく」が出した結論に驚き、
    「ぼく」の行動が導く結末は、おそらく「正解」ではない。
    けれど、信じられないような事件が現実に起こっている中、
    何が正解なのか、今も私には分からない。
    ただ、甘いかもしれないけれど、誰かが誰かを思っての
    行動は何らかの救いを必ずもたらす。そう信じたくなる作品です。
   
66.パラダイス・キス(全5巻)/矢沢あい
   ■ストーリ
    進学校に通う、早坂紫は、ある日学園祭のショーのモデルを
    探していた矢沢芸術学院の生徒に声をかけられる。当初は
    彼らに対して偏見を抱いていた紫だが、一緒に行動していくうちに、
    自らも受験勉強以外に生き甲斐を見いだしていく。
   ■感想 ☆☆☆☆☆
    久々に読み返した矢沢作品。何度読み返しても魅力的。
    夢に向かってもがいているヒロインたちの姿は、とても現実的で
    すべてがうまくいくわけではない。むしろ、恋も夢もうまく
    いかないことばかり。それでも諦めずに夢に向かって立ち向かって
    いく人がいたり、夢と現実の狭間でうまく折り合いをつけ、
    前向きに進んでいく人がいたり。その多様性が矢沢作品の
    魅力だと思う。「少女漫画」的な夢物語で終わらせない作者の
    姿勢がヒロインたち女性陣の強さにつながっているのだと思う。

67.20世紀少年(全22巻)・21世紀少年/浦沢直樹
   ■感想 ☆☆☆*
    以前から気になっていた話題作をようやく手に取ることが
    できました。本当にアリガトウゴザイマス。
    長いだけに、登場人物が多く、ストーリも入り組んでいますが
    一気に借りれたため、そこまで混乱せずにストーリを追うことが
    できました。これは、全部集めてから読むべき物語だと思う。
    途中で中断していたら、間違いなく話が分からなくなって
    いたことでしょう。本当に本当にありがとうございます!
    終盤、やや物語に破綻を感じるものの、読み手を最後まで
    離さないストーリテリングぶりはさすが。長い長い作品に
    引き込まれ、一気に読み終えました。映画も見てみたいかも。

68.恋文の技術/森見登美彦
   ■ストーリ
    京都の大学から、遠く離れた実験所に飛ばされた男子大学院生
    が一人。無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して京都に住む
    かつての仲間たちに手紙を書きまくる。手紙のうえで、友人の
    恋の相談に乗り、妹に説教を垂れる男子学生の行く末は?
   ■感想 ☆☆☆☆
    森見作品らしい軽快なリズムあふれる文章が心地よい。
    テンポ良く読み終えられる作品。さらさらと流れるような
    文章なので「書簡体」特有の読みにくさをまったく感じない。
    深く考えず、とにかく読むべし。そして日本語の美しさを
    堪能し、彼特有のユーモアセンスを満喫すべし。

69.ふたつめの月/近藤史恵
   ■ストーリ
    あの街灯を壊してほしい。誰の何を守るために赤坂老人は
    あんなことをしたのか。恋も仕事もうまくいかなくったって、
    毎日はすすんでく。フリーター久里子が出会った日常の事件。
   ■感想 ☆☆☆
    日常の謎シリーズ。肩のこらない読み物として楽しめます。
    理不尽な理由で会社をやめさせられた主人公が少しずつ
    前に進んでいく様子を見守っていると、私もがんばろう
    と素直に思えます。実はいろんなところに、誰かの優しさは
    転がっているのかもしれない。そんな気持ちにさせてくれる
    作品。

70.イナイ×イナイ/森博嗣
71.キラレ×キラレ/森博嗣
   ■ストーリ
    美術品鑑定を生業とする椙田事務所の電話番、真鍋瞬市と
    椙田探偵事務所の助手、小川令子が遭遇する事件の数々。
    めったに戻ってこない探偵事務所所長の椙田と、
    自ら「探偵」を名乗る鷹知。そして、椙田が遭遇を恐れる
    西ノ園萌絵。Xシリーズ第1弾と第2弾。
   ■感想 ☆*
    森作品に飽きてしまったのだろうか?それとも、西ノ園嬢の
    出番が少ないために、今ひとつ集中して読めなかったのだろうか。
    どちらにせよ、物語に引き込まれることなく、さらっと
    読み終えてしまった。推理小説としてはまったく魅力を
    感じないものの、S&Mシリーズからの森作品永遠のヒロイン
    萌絵が今後、どうシリーズと関わってくるのか、その点のみは
    ぜひ、後を追いたい。

72.太陽の塔/森見登志彦
   ■ストーリ
    私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。
    三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。
    しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった。
    クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も
    持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちと
    これから失恋する予定の人に捧ぐファンタジー作品。
   ■感想 ☆☆
    ・・・ちょっとついていけませんでした。主人公の誇大妄想に。
    少し、いえ、かなり粘着質な主人公の独白は、当初、ユーモア
    を感じられたものの、中盤以降は、若干、くどくきつく
    なってきました。これは、私が女性だから、かもしれません。
    妄想大好きだけれど、男性と女性の妄想はやや質が異なるのかも
    とそんなふうに思った作品。