旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

モスラの卵と越前そばと黒龍と 勝山永平寺線を完乗!

2022-10-15 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 眩い朝陽が差し込むのは早朝の福井駅、ホームの先端に高校生のカップル。会いたかったんだね。
現在キャンペーン中とかで、この日「一日フリーきっぷ」が500円、えちぜん鉄道をお得に呑み潰そう。

恐竜が今にも襲いかかろうとしているのは勝山駅、1914年(大正3年)開業以来の駅舎は登録有形文化財
午前中は三国芦原線に乗って東尋坊に遊んで、午すぎから勝山永平寺線に揺られてきた。

なぜ恐竜?って、ここは福井県立恐竜博物館の最寄駅だから。人気の博物館は現在予約制なので注意が必要だ。
九頭竜川対岸の山裾に鈍く光る銀のドームが恐竜博物館、ボクは勝手に “モスラの卵” と呼ばせてもらおう。

白地に青のツートンにちょっぴり黄色のアクセント、MC7000形は飯田線を走っていた119系をJR東海から
譲渡されたものらしい。この2両編成にのんびり揺られて福井まで戻ることにしよう。

白山山系を背景に緩やかに蛇行する九頭竜川、長い竿をしならせて、釣り人たちがアユ釣りに興じている。

上り下りの電車が交換するのは永平寺口駅、ローカルな駅がいっときの賑わいを見せる。ボクも降りてしまおう。

5分の待ち合わせで小さな路線バスが現れた。折角だから、大本山永平寺には詣でておきたい。

門前の賑わいをやり過ごして参道に足を踏み入れる。木々は生い茂り、岩々は苔むし、身が引き締まる。
深山幽谷の境内、建ち並ぶに殿堂楼閣、永平寺は修行僧が日々厳しい修行に励む禅の修行道場なのだ。

ぴかぴかに磨き上げられた回廊の階段を上り詰めた法堂(はっとう)から西日差す七堂伽藍を見下ろす。
参拝客が途切れたタイミングと相まって、その静けさがここが山深い修行の地であることを実感させてくれる。

参拝を終えたらちょっとだけお清めがしたい。次の路線バスまでは40分ほどの時間がある。
“黒龍いっちょらい” をいただく。程よい吟醸香にピリッとした⾟⼝、喉にスッーと透って心地よい酒だ。

吟醸酒の最後の一口を残したころに “おろしそば” が登場、越前そばを頂くのはこのタイミングの他はない。
たっぷり鰹節、風味の強い太い麺、辛み大根を溶いた汁にサッとくぐらせてズズッと啜る。美味しい。

永平寺口駅に迎えに来たのはやはりMC7000形の2両編成、キャラクターの娘のヘッドマークを付けている。

車窓には重たげに穂を垂らした黄金色の田圃が続く。間もなく稲刈りを迎えるはずだ。

黒龍の蔵元ってこの沿線だったよなぁ?ふと思い立ってスマートホンを操る。ビンゴ!っていうか次の駅だ。

慌てて飛び降りた松岡駅、レトロモダンな駅舎が格好良い。やはり駅舎本屋は登録有形文化財なのだ。
話は逸れるがいつも思うこと、こうした風景に無機質な自動販売機はいただけない。余所者の勝手な独り言だ。

駅から歩くこと10分弱、大きな杉玉を提げ、夕日を浴びた堂々たる町家に辿り着く。「黒龍」の染め抜きがいい。
ところで蔵元の営業は17:00迄、アウト。それでも蔵を尋ね当てると、呑み人としては旅の達成感大なのだ。

17:42着、ウッディーで暖かみのある福井駅に迎えられた。
恐竜博物館にフラれ、黒龍にフラれたけれど、風景に空気に奥越の秋を感じた勝山永平寺線の旅なのだ。

えちぜん鉄道・勝山永平寺線 勝山〜福井 27.8km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
とまどうペリカン / 井上陽水 1982