旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

秋山郷・切明温泉 「雪明かり」にて

2023-09-06 | そうだ温泉にいこう!

鳥甲山(2,037m)の荒々しく険しい岩壁は、人を寄せ付けないかの様な荘厳さに満ちている。
ちょうど中津川が深く削った渓谷、秘境「秋山郷」を挟んで苗場山と向かい合うような位置になる。

平家落人の伝承やマタギ文化など、昔ながらの生活様式が色濃く残る秘境地域。
その秋山郷の最奥地に湧く「切明温泉」で週末を過ごそうと車を飛ばしてきた。

ほんのりと硫黄が匂う50度を超える源泉は、ほどよく外気に触れて、
それでも40度を超える熱い湯が、滔々と石造りの湯槽を溢れさせている。
熱さに慣れてきたら、石の縁に頭を載せて首まで浸かってみる。至福だ。

火照った身体を冷ますように、夕餉は冷たい “黒ラベル” ではじめる。
“岩魚” は刺身と塩焼きが贅沢にならぶ。冷水でしまった刺身が美味い。塩焼きは頭からかぶり付く。
小鉢は “クレソンの” と “かぼちゃ” が脇を固めて、絶品の箸休めだ。

岩魚に舌鼓を打つうちに、手打ちの “蕎麦” が運ばれてきた。不揃いな田舎そばがほんのり香る。
“猪鍋” に火がはいる。“天然なめこ” やらたっぷりの山菜が入って、煮えるのが待ち遠しい。

手元はすでに “芋焼酎ロック” に代わっている。
天ぷらは揚げたてを一品一品、オーナー夫妻がかわるがわる皿にのせてくれる。
“岩魚” に、えっとそれから馴染みのない山菜の名は覚え切れない。それほど採れたての地物に拘っている。

ご飯は “おこわ” に “天然舞茸” のお吸い物で〆る。
デザートは “甘酒のアイスクリーム” 、これがまたサッパリと、お膳の余韻を消すことなく、美味しいのだ。

食後は暖炉(もちろん火は無い)の傍で “芋焼酎ロック” を傾けながら、奥さんの弟氏のピアノに耳を傾ける。
Raindrops Keep Fallin' On My Head、The Long And Winding Road、リクエストに即興してくれた。

誰よりも早起きして露天風呂を独占する。中津川のせせらぎを聴きながら、いつまでも浸かっていたい。
そう深夜にもこの湯に浸かった。大自然の漆黒の闇の中、見上げる中天の天の川が美しかった。

7月にZで走った天空の湖・野反湖から流れ落ちるのがこの中津川だ。
河原をスコップで掘ると温泉が湧き出る。冷たい水を引き込んで調整、野趣溢れる露天風呂が楽しい。

テレビもエアコンもない秘境の湯宿。
大自然と掛け流しの湯とオーナー夫妻+弟氏のホスピタリーに癒された週末が愉し過ぎる。
季節をかえて訪ねたい温泉がまた一つ増えたのが嬉しいね。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Go Away / 中原めいこ 1982