太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

きよみちゃん

2013-08-15 07:42:28 | 人生で出会った人々
子供の頃、お習字を習っていた。

週に1度、先生が家まで来てくれて、毛筆と硬筆と、

「くろんぼ」(放送禁止用語じゃなかった?)という名前の、固いクレヨンのようなペンで書くのもあった。

それは本体が全部黒い芯でできていて、プラスティックのケースに入っている芯を、押し出しながら使う。


先生の名前は「きよみちゃん」といった。

祖母も母も「きよみちゃん」と呼ぶので、私たち子供も、先生と呼ばすにそう呼んだ。

きよみちゃんは二十代前半だったと思う。

まっすぐな長い髪を額の真ん中で分けて、華奢なからだに切り替えのないワンピースがよく似合った。

女優の梶 芽衣子に雰囲気が似ていた。



きよみちゃんの指は細くて長く、爪は、いつも角をまあるく切ってあり、

そこに透明のマニキュアをつけていた。

その爪がとてもきれいで、私はきよみちゃんが朱で直してくれる字ではなく、

指ばかり眺めていた。



きよみちゃんは、『時計やさん』のおばさんの娘さんだということは知っていた。

『時計やさん』は家から1キロほどのところにあり、母と時々訪ねていったことがある。

ずっとあとになって、私が大人になってから、『時計やさん』は両親の仲人さんだということがわかったけれど、

もうそのときには時計やさんは店をたたみ、どこかに引っ越したあとだった。




爪を切るとき、時折きよみちゃんのことを思い出す。

角をまあるく切って、透明のマニキュアを塗るのが好きだ。




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