太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

ホントにいる地上の天使

2013-08-17 07:33:16 | 不思議なはなし
天使は時に、人間として現れて助けてくれることがある。

夫と知り合ってまもなくの頃、夫が友人たちと伊豆にサーフィンに出かけて、

エイに刺されて救急病院に行ったことがあった。

その話を、もう何度も聞いていた。顛末はこうだ。



下田に着いたその日は満月で、夜サーフィンをしようじゃないか、ということで

さっそくみんなで海に繰り出し、ざぶざぶと水に入ったところにエイがいて、

足の裏から刺さったエイの尾が、足の甲までつきぬけた。

一緒に行った仲間の中の、みんなよりも日本語が話せる人が、

後部座席でエイの毒がまわってきて痙攣している夫を乗せて、救急病院を探しまくってくれた。

やっと見つけた病院で手術して一泊することになり、

翌朝、その友人が迎えに来て、夫のアパートまで送ってくれた。



という話なのだが、

私は今の今まで、この「みんなより日本語を話せる友人」は、てっきり仕事仲間だったJだとばかり思っていた。

カナダ出身のJは、日本語検定にもらくらくパスするほど日本語が堪能だった。

ただ、インドア派に見えるJがサーフィンをするのは意外だとは思った。



ところが、それはJではないらしい。

「Jだとばかり思ってた。じゃあ誰なの?」

「それがよくわからないんだよ」



Aと名乗るその人物とは、1度だけ下田で会ったことがあった。

満月サーフィンに出かけた夜、Aも一人でそこに来ていて、たまたま現場に居合わせたのだという。

エイに刺された時、夫は来日して数ヶ月だったし、一緒にいた仲間も似たようなもので、

あわてふためいているところにAがすべてを取り仕切ってくれた。

翌日、夫と一緒に帰ると言う仲間たちに、せっかく来たのだからサーフィンを楽しみなよ、といって

片道2時間以上かかる道のりを一人で送ってくれたのだった。


「じゃあAは恩人じゃないの。Aの何がよくわからないのよ?」

「名前も聞いた、下田に住んでいることも聞いた、電話番号も聞いた、そのほかのことも

いろいろ聞いたはずなんだけど、まるっきり覚えてないんだよ。

あとで電話をしてみたけど、通じなかったしね」



夫が日本にいた5年の間に、何度も下田に行ったけれど、2度とAに会うことはなかった。



Aは夫のために、そこに現れた、地上の天使に違いない。



結婚したあとの或るお正月に、二人で山奥の神社に行こうとドライブしていた折に

車に酔った夫が、ひとさまの家の脇でもどしてしまったことがあった。

そこは小さな側溝になっていたから、その家の人に謝って、水を借りて流そうと思ったものの、

新年早々、気を悪くされるだろうなあと暗い気分になっていたところに

その家のご主人が出てきた。

ひたすら謝る私に、ご主人は気を悪くするどころかおおらかに笑って

「いいだよ、いいだよ、水で流せばいいことだから。

全部出しちゃえばスッキリするだから遠慮しないでいいだよ」

夫の背中をさすりながら、どこの国から来たのか、日本は好きか、いろいろ話しかけてくださって

ありがたくて涙が出そうだった。


数日後、ちゃんとお礼を言うために、その家を探してみたのだが、

どこをどう走ってみても、その家がみつからなかった。

この看板を覚えてる、そうそう、この道も通った、という場所を何度ぐるぐるまわって、

とうとうわからずじまいだった。


あのご主人も、新年に出会った地上の天使に違いないと私は思う。







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