太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

揚げ物も冷めない距離 ヨメシュートメ

2019-12-02 09:42:44 | 日記
義両親の家に、私たち夫婦の家を増築して5年になる。

義両親の家の玄関の、
ガレージをはさんだ並びに
我が家の玄関がある。
中は、ガレージに続くドアと廊下でつながっている。
スープどころか、揚げ物も冷めない距離。
移住した当初は、増築する予定はなく、二世帯で楽しく暮らそうと全員が夢と希望に満ちていた。
けれど、現実は甘くなかった。
現役で大学教授だったシュートメは、常にストレスにさらされていて、
今よりもずっとピリピリしていたし、
何十年も二人きりで暮らしてきたペースが乱されることに戸惑っていたと思う。

私とて同じで、シュートメの機嫌を伺いつつ暮らすことに、ヘトヘトになった。
仕事がうまくいかなくて疲れている夫に、愚痴をこぼすのは憚られたけれど
他に言う人はいない。
いよいよ思い余って、それでも言葉を選んで夫に打ち明けた。
「私、おかーさんといるとリラックスできないんだよ」
すると夫が即座に言った。
「僕も」
へ?今、なんて?
母親の悪口は聞きたくないかと思って我慢していたのに。
それとも、半分は夫の思いやりだったのか。

ストレスがコップに溜まっていって、先に爆発したのはシュートメだった。

「あなたたちも、そろそろ、ホノルルに引っ越すか、日本に戻るか、
庭に家を建てるか決めたらどうなの、ってママが言っている」

と、義父に言わせたのだった。
ホノルルに引っ越すといっても、ホノルルに夫が持っていたコンドミニアムは先月売ってしまったし、
確かに夫は日本に戻りたい気持ちでいるけれど、
またいつかこちらの親が年取ったときに戻ってこなくてはならない。
じゃ、庭のあいているところに家でも建つか。

ということで、あっという間に話は決まり、シュートメの鬼の監督の甲斐あって
(やり手の女性の現場監督に、あなたたちのお母さん、半端じゃないわね、としみじみ言わせた)
私たちの住まいができたというわけだ。



私の叔母は、父の弟の嫁で、夫の親と同居したことがない。
叔母の息子が結婚して、家を2世帯に建て替えることになったとき、
叔母はいろんな決まり事を作った。
相手側の電話が鳴っていても、取らないとか、
毎週土曜日は2世帯で一緒に夕食を食べるとか、
雨が降っても相手の洗濯物は取り込まなくていいとか、そういったことだ。
そんなことを決めないほうがうまくいくよ、といくら私が言っても
決まりがあったほうが割り切って暮らせるからいい、の一点張り。

かくして、1階は親夫婦、2階は息子夫婦、キッチンとお風呂も別、の暮らしが始まった。
二世帯の暮らしはどうかと尋ねた私に、顔を曇らせつつ叔母が言った。
「土曜日に夕食を食べるんだけど、ヨーコさん、手ぶらで来るのよねー。
食材のかかりはみんなこっち持ちだし」
「私がヨーコさんでも、手ぶらで行くよ?」
「えっ、なんで?」
「だって下手に何か作って持っていって、私の手料理が口に合わないのかしらとか
思われても嫌だし、こっちの料理だって口に合うかわからんじゃん。
ごちそうさまですー、ってすましているほうが無難かなと思うさ」
「ええー、そうなのぉ?・・・・・・」
「合同の食事のときには1品持ってくるとか、決めればよかったんじゃないの」
私は意地悪な気持ちで皮肉を言ってしまったけど、
気心のまったく知れていない者同士、最初からうまく噛み合うわけがない。
しかし、うまくいくと希望に燃えて同居を始めた私だって、
叔母と同じなのである。



キッチンが別になり、顔を合わせることは前ほどなくなったけれど、
相手の気配だけはあるという暮らしは、1万倍も快適だ。
出かける時に、声をかけるべきかどうか迷ったのは最初の1か月。
一緒に夕食をとることも、3年目ぐらいから増えてきた。
押してみて、様子を見る。
引いてみて、様子を見る。
決まり事など、暮らしていく上で試行錯誤しながら、いつのまにかできるもの。
そしてそれは変わってゆくもの。

日本の叔母はどうしているだろうか。
最初の決まり事など、とっくになくなったはずだと思うけれど、
今度会ったら聞いてみたいと思う。





嫌いな食べ物が好きになる理由

2019-12-02 08:39:48 | 食べ物とか
年をとるにつれて、嫌いだった食べ物が好きになる。

子供のころ、嫌いだった牡蠣やウニ。
味というより、見た目でダメだったのが、今は好物の上のほうに位置している。
若いころ、口に入れると「げー」となったオリーブの実のピクルス。
今は料理の中のオリーブを拾って食べるほど好き。

そして最近、とくに好きになったのが、コリアンダーだ。

コリアンダーは、タイ料理などによく使われる香菜で、
アメリカではシアントロという。(発音はサランチョロと聞こえる)
春菊なんかメじゃないぐらい強い独特な香りで、
若いころには、その香りが料理を台無しにするので、真っ先によけていた。
数年前まで、食べることは食べるが、自ら進んでは食べなかった。
それが、気が付けばシアントロが好物。
シアントロを刻んで、卵2個に混ぜてオムレツにして、毎朝食べている。
サラダにも入れる。
そんな話を友人にしたら、
「私もそうなんよ!!」
と言うではないか。
美味しいシアントロを探して歩きまわり、ようやくホールフーズで見つけたという。
シアントロを切らずにそのままかぶりつくほど好きらしい。
そういう彼女も、昔は大っ嫌いだったというのだ。

「若い時には嗅覚が敏感で、香りの強いものは避けるらしいねん」

ということは、年を取ると嗅覚が鈍くなるということか?
そういわれてみれば、ニンジンくささが際立つ、ニンジンのグラッセは
昔は嫌いだったけど、今は平気だ。
しいたけも、子供の頃は臭くて好きじゃなかった。
すき焼きに入れる春菊も、今は案外好きかもしれない。
ハワイで春菊が手に入ったら試してみよう。


子供がニンジンやピーマンを食べなくても、
放っておけばそのうち食べるようになるのだろう。
嫌いな食べ物が好きになるのは、老化が原因とはおもしろくないが
好きなものが増えるのは人生が楽しくなるので良しとする。