太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

すまじきものは宮仕え

2021-12-29 08:06:16 | 日記
大企業を舞台にした小説を読むと、すまじきものは宮仕え、というのも理解できるが、
生き馬の目を抜く大企業で働く予定がない(というより、したくてもできない)私は絶対に宮仕えが1番だと思っている。

人に使われるのではなく、自分で自由にやりたいと言って独立する人達。
けれど、自由には、その何倍もの責任と不安がぴったりとくっついてくる。
私の実家はささやかな事業をやっていたから、受注のあるなし、資金繰り、揉め事などをつぶさに見て育った。
テレビ局を辞めて、私も会社の中の一員になった20数年間は、まさにその渦中にいた。
だから、妹が和菓子屋に嫁ぐと言い出したとき母が反対したのもよくわかるし、
私は必ずサラリーマンと結婚しようと決めていた。


ハワイに移住して、最初に就いた仕事を夫が辞めるというときに日本に行った。
私の友人が紹介するといって連れてきた、フリーのカメラマンと、写真好きの夫と話が盛り上がり、
ハワイで日本人相手のツアーをする仕事を立ち上げる、という話になってしまった。

「あなただけが知っている写真スポットを巡るツアーなんかいいよね」

盛り上がる二人を横目に、私は心で「絶対に嫌だ!!」と叫んでいた。
夫が日本人が好きだけど、それは友人として、あるいは行き掛かりの人として出会うから良いのであって、
客として出会う日本人には、いろんな人がいる。
現に日本人のツアーガイドが、ストレスで胃に穴が開く、と言っている。
それに、夫がそんな仕事を始めたら、私も仕事を辞めて手伝わなければならない状況になりかねない。

夫は日本でちょっと高価なカメラを買い、ハワイに戻ってから、ビジネスを始めるにあたり、必要なことを相談しに出かけたりしていた。
絶対にうまくいくわけがないという気持ちに変わりはなく、イライラしながら過ごしていた。
だんだん抵抗することに疲れてきて、私は諦めの境地に入ってゆき、
もうこれは行くところまで行くしかない、と腹を括った。
その途端、夫はその「夢」をすっぱりと諦めた。


不思議なんだけど、こうなってほしくないといことに抵抗しているうちはダメで、
もうなるようになるさ、と心底腹を括ったときに状況が変わる、ということが何度もあった。


今、私の職場は忙しいけれど、もちろん暇なときもある。
もしオーナーの立場だったら、売り上げが少ないときは気持ちが揺れるだろうが、
時給で働いている私は、暇でも同じだけの収入が保証されているので、なんということもない。
やはり宮仕えがいいと私は思うのである。