自分のそそっかしさ加減には、とうに慣れた。
まあ、年を重ねれば少しは落ち着いて行動できるようになるのではと淡い期待を寄せていたが、とんでもない。
この年になっても、私はやらかしてくれる。
あれは昨年の秋ごろか。
ワイキキにある、ひとつのギャラリーに作品補充に出かけた。
営業時間内なのに、ギャラリーのドアが閉じており、30分待っても誰も来る気配がない。
私は、そこで働いているKristineに電話をかけたのだが、呼び出し音が鳴るだけで返答がなく、ボイスメールは満杯で録音できないとアナウンスが出た。
そこでテキストメッセージを送ってみた。
『ギャラリーの前にいるんだけど、今日はcloseなの?』
するとすぐに返事が来た。
『ハーイ、シロ、久しぶり!ホテルのショップはみんなcloseなのよ。
今、私はカハラで自分のスタジオをもってるの。予約制なんだけど、もしよかったら午後3時すぎならあいてるから、来ない?』
Kristineがスタジオを?彼女はアーティストだったのか?
コロナも蔓延していたから、ショップを閉めているのだろうか。せっかく田舎から出てきたのに骨折り損。
3時まで時間がありすぎるし、また今度ね、と送って家に帰った。
そして数日前。
再び、そのギャラリーに補充に行こうと思い立ち、前もって開いているか確認しようとメッセージを送った。
『シロだけど、今度の日曜日はギャラリーは開いてる?補充に行こうと思ってるんだけど』
するとすぐに返事が来た。
『私はカハラでガレージを借りてスタジオやってるのよ。日曜日はなんの予約もないし、顔を見たいから来てくれると嬉しいわ』
ここで私は初めて「ん??」と思った。
このKristineは私の思っているKristineではないのではないか
『ああ、前にそう言ってたよね、すっかり忘れてた。行けるときがあったら連絡するね』
とりあえず、そう返信してお茶を濁した。
5年ほど前になるが、ワイキキのアウトリガーホテルのギャラリーで週に1日だけ店番をしていたことがあった。
そのギャラリーのオーナーが、Kristine。
私は1年ほどで辞めてしまったのだが、パンデミックの前にギャラリーを閉めたらしいという話を聞いていた。
Kristineはアーティストで、ギャラリーの代わりにスタジオを持ったということなのだろう。
私はまったくの別人に連絡を取り続けていたのだ。
なぜこんなことが?(私がおっちょこちょいだからなんだけど)
アーティストが副業でギャラリーで働くこともよくあるので、私が連絡をとりたかったほうのKristineも、実はアーティストなのかもしれないと私は思った。
そしてアーティストの方のKristineは、なんだか話が変とは思いつつも、私がどこかのギャラリーに作品補充に行くついでに連絡してきた、と思ったのではないか。
今日、無事にギャラリーに補充を済ませてきた。
アーティストのほうのKristineには、5年もたっても私のことを覚えていてくれて、温かい言葉をかけてくれたことに感謝している。
とにかく、詰めが甘いうえに思い込みが激しいと、こういうことがよく起こる。そしてこれは治らない病なのである。