魂の切影 森村誠一 光文社
森村誠一さんの本を久しぶりに読んだ。
今年の3月、乳がんのために34歳の若さで亡くなった、歌人宮田美乃里さんがモデルだと知ったからだ。
宮田さんのことはsohyaさんのブログで初めて知った。
その時は乳房にこだわる宮田さんに、自分の娘だといっていい年ごろの方にもかかわらず、少なからず反発する心を持ってしまった。ふだん、男性、女性という区別で人を見ないようにしていたせいもある。現在はもちろんその思いに変化はある。
写真家荒木経惟さんと歌人宮田美乃里さんの共著である写真歌集『乳房、花なり。』を手にして、森村さんはこの本を書くことになる。「彼女を書かなければ作家になった意味がない」とまで、言い切っている。
小説だからフィクションとして読まなければならないが、宮田さんを書いているくだりでは真実が多いと思われる。
死ぬ、死にたい、死のう。
なぜ、若い宮田さんがこれほどまで「死のイメージ」にまとわりつかれなければいけなかったのか、親の心でもってみればとても切ない。
そういった意味で、歌人だった祖母、個性的であったと想像できる母親の人となりも知ってみたい。
宮田美乃里さんは若くして逝ったけれど、徒に年老いた人間にはかなわない作品を残したし、亡くなってもなお、こうやって一人の作家を動かして小説が生まれた。
宮田さんは辞世の短歌に花を多く詠っている。
フリージア死の床にある我れのため 母が贈ってくれし花なり
むらさきにあじさいひっそり咲く朝に わたしはそっと逝きたいのです
雨の日はばらのつぼみがにあいます 若く死にゆくわたしのようで
お見舞いにもらった桜生きている うちに見られてうれしかったの

森村誠一さんの本を久しぶりに読んだ。
今年の3月、乳がんのために34歳の若さで亡くなった、歌人宮田美乃里さんがモデルだと知ったからだ。
宮田さんのことはsohyaさんのブログで初めて知った。
その時は乳房にこだわる宮田さんに、自分の娘だといっていい年ごろの方にもかかわらず、少なからず反発する心を持ってしまった。ふだん、男性、女性という区別で人を見ないようにしていたせいもある。現在はもちろんその思いに変化はある。
写真家荒木経惟さんと歌人宮田美乃里さんの共著である写真歌集『乳房、花なり。』を手にして、森村さんはこの本を書くことになる。「彼女を書かなければ作家になった意味がない」とまで、言い切っている。
小説だからフィクションとして読まなければならないが、宮田さんを書いているくだりでは真実が多いと思われる。
死ぬ、死にたい、死のう。
なぜ、若い宮田さんがこれほどまで「死のイメージ」にまとわりつかれなければいけなかったのか、親の心でもってみればとても切ない。
そういった意味で、歌人だった祖母、個性的であったと想像できる母親の人となりも知ってみたい。
宮田美乃里さんは若くして逝ったけれど、徒に年老いた人間にはかなわない作品を残したし、亡くなってもなお、こうやって一人の作家を動かして小説が生まれた。
宮田さんは辞世の短歌に花を多く詠っている。
フリージア死の床にある我れのため 母が贈ってくれし花なり
むらさきにあじさいひっそり咲く朝に わたしはそっと逝きたいのです
雨の日はばらのつぼみがにあいます 若く死にゆくわたしのようで
お見舞いにもらった桜生きている うちに見られてうれしかったの
