実は佐野さんと私には共通点^^があります。
絵を描く才能じゃありません。
もちろん、文才でもありません。
大陸から引き揚げてきた過酷な経験は私にはありません。
才能ある男性にもてた経験などさらさらありません。
じゃぁ、何が同じなのかというと、読書するスタイルなんです。
佐野さんは本を読むとき寝っ転がるそうなんです。
それを知ったとき、どんなにうれしかったでしょう。
この、『私の息子はサルだった』も、もちろん寝っ転がって読みました。
物書きの家族の宿命として、否応なくモデルになってしまうということがあります。
思春期を迎えた佐野さんの息子、広瀬弦さんは、母親の洋子さんに自分のことは書かないでと、怒ったそうです。
洋子さんはその申し出を受け入れました。
でも、そのころから、この物語の主人公ケン=弦さんの成長記をしっかり原稿用紙に書き溜めていました。
この本は中の1章を除いて、2010年の佐野さんの没後見つけられた新発見原稿を書籍化したものなのです。
物語は女の子にも男の子にもモテモテだった保育園のころから始まります。
小学校1年生になったケンくんはクラス一賢くてかわいい女の子に幼い恋心をいだきます。
恋敵も現れます。
せっかくその大好きなタニバタさんをケンくんの家に招いても、男の子たちは興奮してキーッ、キーッと騒ぎ回ります。
「・・・。ヤーネ。猿だね。まったく」です。
ライバルはもう1人現れました。
ところが同じ人が好きなのだから仲間じゃないかと、3人の男の子はその後、通う中学や高校が変わっても親友関係を続けます。
絵本作家・童画家の広瀬弦さんが巻末に「あとがきのかわり」を書いています。
「・・・略・・・
この本は佐野洋子が一方的に書いた僕の記録だ。
彼女の目には、僕のあの頃がこう映っていたのだ。
言いたいことは山ほどあるけど、もう好き勝手に書けばいい。
僕にはもっともっと楽しくて美しい、
佐野洋子が知らない僕だけの「ケン」の思い出がある。
2015年4月 佐野 弦 」
そうかな~。
母親佐野洋子さんがその楽しくて美しい「ケン」のことを知っていてくれたら、
もっと素敵だったろうに。
あなたたちの青春をこんなに素晴らしく書きとどめていてくれたんだから。