私の好きな女優さんであり、名エッセイスト小林聡美さんの聡乃学習(サトスナワチワザヲナラウ)を読みました。
白内障手術後、手元が見えにくくなりました。
加齢から読むスピードもめっきり遅くなり、読書量が減りました。
集中力を区切りやすいエッセイは嬉しい読み物です。
小林聡美さんの作品だったら、なおさらにね。
この本は「papyrus」、「小説幻冬」に連載されたエッセイ5年分をまとめたもの。連載はまだ続いています。
小林さんが14歳で出演した「3年B組金八先生」の記憶は残ってないのですが、主演で映画デビューした「転校生」からは折りに触れその活躍ぶりに接してきました。
語学留学したり、4年制大学や大学院に入学したり、女優や作家のよろいで武装することなく、普通の感覚で暮らす中から湧いてくる日々の思いは共感できる部分がたくさんあります。
この本に収録されている最後のエッセイのタイトルは「初夏ノ日君ヲ送ル」です。
小林さんは2011年に16年間の結婚生活にピリオドをうちました。
夫婦は犬1匹と猫3匹と一緒に暮らし、時を経て猫を亡くしたり、また新たに加えたりしていたのですが、小林さんは元野良猫で、身体に障がいのあった猫と新入りの小さな猫と一緒に家を出ます。
その猫との別れを綴った文章が優しい彼女を表しています。
全部を書き出すわけにはいかないので、一部抜粋しておきます。
(略) 点滴のために病院に通うようになって二日目の夜、ホイちゃんは死んだ。その日、夕方病院から戻ると、寝床の上でいつになく寝返りをたくさんうっていたが、気が付くと静かになっていた。(略)
翌朝、動物霊園での火葬には、その日偶然にも私の家に泊まりに来る予定だった姉と、私が仕事で家を空ける時にホイちゃんを見てくれた友人らが同行してくれた。姉は動物を飼ったことがなく特に動物好きというわけでもないのに、私の留守中に家に泊まり、ホイちゃんに薬を飲ませたり、ゴハンを食べさせてくれたのだった。そんな姉がひとりだけ真面目に喪服を着て数珠を持っているのが、なんだか可笑しくて、悲しくて、ありがたかった。
火葬場の人は始終丁寧で親切だったけれど、ホイちゃんの火葬炉の名前の札が「小林フォイちゃん」となっていて、いつ訂正を申し入れたものか悩んだが、点火されてほどなくやんわりと間違いを伝えると、とても恐縮していた。皆で笑った。
ホイちゃんが骨になるまで、外をプラプラ散歩した。風が吹いて、どこもかしこも五月の美しい緑だった。
ホイちゃんという名前の由来はポイと捨てられていたから。
一時は夫だった三谷幸喜さんも一緒に暮らした猫でした。
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