馬場あき子選
満員の電車来たりて背のリュックくるりと前に回すひとたち 東京都 渋谷敬子
ぬばたまの星空走りひた走り天王星は月のピアスに 広島市 楯田順子
一首目、私は普段からリュックを前にしています。お腹が隠れるし、冬は暖かいし。満員電車では、背中にあると、周りに迷惑をかけてしまいます。みなさん、前に回しているんですね。一斉に回す感じが面白いです。二首目、先日の皆既月食で、天王星が見えていたそうですが、肉眼では難しいのでは?知人が撮った写真を見せてもらいました。ほんの小さな、これが天王星?と思いましたが、ピアスというのは素敵な表現です。
佐佐木幸綱選
「しっかりと」「きちんと」「真摯に」普段からせぬ人なのか殊更に言う 登米市 菅原小夜子
『床スベリますご注意!』と貼ってあるラーメン店へ命がけで行く 延岡市 片伯部りつ子
一首目、首相の言葉が本当に軽いものになってしまっていて、何も信じられなくなっていますよね。こんな国家でいいのでしょうか?全然説明責任果たさない内閣が、いつから続いていましたっけ?それも忘れてしまうほど、この国の政治への不信は根深いです。議員さんたち、わかってますか?二首目、そりゃ怖いですね。命がけで食べるラーメンを想像すると、なんだかおかしい。食べ終わってからも気を緩めることなく、店を出ないと・・・。
高野公彦選
わたしにはわたしの海があることを涙の味が教えてくれた 吹田市 赤松みなみ
夕飯は「アルモンデ」という料理よと冷蔵庫開け妻笑い言う 春日部市 前川秀樹
寺山修司の短詩「なみだは/にんげんのつくることのできる/一ばん小さな/海です」から生まれた短歌です。涙を海とたとえるのが秀逸。すてきですね。二首目、最近結構聞くようになった「アルモンデ料理」。そうこなくっちゃです。値上げラッシュで買い物も控えたくなりましたもの。
永田和宏選
「ねぇ、マコト」の二語に込めたる幾千の亡妻(つま)の心のひだ未解析 仙台市 二瓶真
日韓の首脳の挨拶通訳が本人よりも頭を下げる 観音寺市 篠原俊則
一首目、切ないですねえ。男性はけっこう女性の心の内を理解していない人が多い。攻め重話だけは聞いてあげてと言いたいです。二首目、そうだったんですね。やはり、それぞれプライドがあるから、相手よりも頭を下げないとか、これって、まるでコメディー。共に手を取り、旧統一教会や北朝鮮のミサイルについて、いろいろ話をしなくては。