高野公彦選
手をはなせばどこにでも行く幼子は生まれたことがこんなにたのしい 福井市 野原つむぎ
実家でのオンライン授業ハンバーグこねて丸める母を見ながら 富山市 松田わこ
一首目、幼子の様子が目に見えるようです。その様子を「生まれたことがこんなにたのしい」と表現したのが、素晴らしい。誰もが、そうだったはずなのに。どうか、生まれたことの奇跡を感謝して、コロナ鬱にかからないように生きましょう!二首目、オンライン授業は、面白いですよね、端から見てると。実は昨日、研修会で大学の先生がこのオンライン授業のことを話しました。一人の学生が俯いて画面から見えなくなって、名前も知らないので番号で呼んだら、なんとその学生、料理しながら授業を受けていたとのこと。それでも、参加するだけいいのだからと、先生はとても寛容でした。確かに、リアル授業では嫌になったら受けませんものね。オンラインだからできることなんだ・・。
永田和宏選
ススキゆれ心もゆるる人の世に自死あることの深きかなしび 福島市 美原凍子
役人の人事と委員の「除外」とを同じ次元で見ているような 海老名市 間藤義教
一首目、コロナ鬱なのか、有名人の自死が多く、もちろん一般人でも自殺者が増えているのですが、本当に悲しいことです。すでに亡くなった人が出演しているドラマを見ると、本当にかなしくなります。苦しいこと、つらいこと、誰でもいいから体から吐き出してほしい。だれもがつらい社会になってしまっているのです。今年は雨も多かった。それも影響しているように思います。太陽を浴びて、光合成しましょう!?二首目、日本学術会議の委員6名除外の件は、私もまだ納得していません。学問への圧力は、あってはならない。研究機関の独立は守らなくてはいけないと思います。このままだと、二度と日本人はノーベル賞取れません。私も想像でしかないけれど、日本が負けたあの戦争の時のように、全体主義とか自粛とか、息が詰まるような社会になったら、私はそれこそ生きた心地しませんね。自由にモノが言えない社会は、あってはならないはずなのに、今の政権って、なんかドスきかせているようで、怖い!
馬場あき子選
政権に嫌われてこそ学者なれガリレオカント滝川美濃部 渋川市 中村幸生
九年半汚染土袋(フレコンバッグ)はまだ積まれ一万二千個の仮死の土あり 福島市 澤正宏
一首目、先ほどと同じテーマですね。滝川事件は教科書にも載っているはず。1933年、当時の京都大の刑法学者滝川幸辰教授を文部省が一方的に休職にした事件です。彼の考えがマルクス主義だというのです。この件で抗議して辞職した学者の一人が、戦後、こういったことがあってはならないと日本学術会議を作ったそうです。その当時の事件と今って、そっくりなんじゃないでしょうか。美濃部とは、戦前の1935年、当時、定説だった天皇機関説の美濃部達吉が、不敬罪として排斥された天皇機関説事件です。その後、美濃部氏は右翼の暴漢に襲われたそうですが、それは犯人ではなかったようで、警護の巡査のピストルから撃たれたような、うやむやにされた事件があったそうです。非常に怪しいですよね・・。正義で暴力を行うのって、戦争と同じじゃないですか。許せないです。さて、二首目、前首相の安倍さんは、原発事故のその後をアンダーコントロールなんて言っていましたが、大嘘ですよ。いまだに農地が戻らないし、汚染水は海に放出するという、なんということでしょうか。原発を推進してきた愚かな政策、どれだけリスクがあったのか、本当に恐ろしいです。福島がかわいそう!
佐佐木幸綱選
生け垣の穴は公道猫・狸・小狐よぎる庭の一日 ドイツ ハルツォーク洋子
少しでも飛ぶ距離のばし飛魚は鳥になりたいプラスチックの海 東京都 無京水彦
一首目、ハルツォーク洋子さん、短歌も詠まれるんですね。日本もドイツも、コロナの影響で庭に野生動物がたくさん来るようになったということでしょうか、それとももともとドイツではそうだったのか?最近、クマ出没のニュースが多くて、胸をいためています。私はクマが大好きなので。熊二歳児問題や、今年の長雨で食べ物が少なくて困っていることを考えてください。人もともとは里山をどんどん減らしてきた人間だって、悪いんじゃないの?昔は共存していたのに、悲しいです。二首目は、海のプラゴミ問題です。これも、人間が悪いのですよ!人間なんか、地球からいなくなればいい!だって、他の生物に対して、ひどいことばかりしているじゃない。トランプなんて、最たるものでしょ。ああ、ぞっとする。