永田和宏選
枚数に限りがあるから丁寧に撮りき昭和のフイルムカメラ 観音寺市 篠原俊則
自販機の缶コーヒーがサイフォンの珈琲となり定年後の朝 富山市 原 徹
一首目、今はみんなデジタルになり、たくさん撮ってもすぐに削除できる。それに、スマホも高性能のカメラで、かなりうまく写真が撮れるようになりました。だから、映えるとかあちこちで写真を投稿しています。こんな社会になって、私はあまりいいとは思えません。みな、自己満足で社会を席巻しているような。ネットにはフェイクもたくさんあふれているし、私たちが撮らなくても、あちこちに防犯カメラがあるのだから。二首目、定年後に時間が有り余ってコーヒーにお金と時間をかける、それは趣味としていいけれど、勘違いして、カフェを開きたいなんて言ったら、大変ですよね。コーヒーは、自分の時間だし、一人でほっとする時間。それだけで大切にしましょう。
馬場あき子選
朝一番友と大和路へ行きし妻 そうだ今夜は鰻を食おう 五所川原市 戸沢大二郎
証拠品捏造をした人の責めは問われぬままの無罪確定 神戸市 安川修司
一首目、そうだ・・からがなかなかいいですよね。まるで、そうだ京都へ行こうなんて具合に、鰻を持ってきたところが面白いです。自分も贅沢していいんですって。二首目、冤罪で頭に来るのは、自白強要する怖さと、さらには無実なのだから、犯人がほかにいるのに、それを調べようともしない警察、これが本当に許せませんよ。のうのうと罪を逃れて平気でいる人間がいるのですから。犯人に仕立てられてしまう恐怖は、もしかしたら誰にでも降りかかるものなのかもしれません。見込み捜査で自白だけが頼りなんて、本当に信じられませんよね。
久しぶりに短歌を選んでみました。やはり言葉は大切だし、とても深い世界です。自分の心に引っかからないのは、自分自身の想像力や感性が鈍っているということでした。