(写真は現在朝日新聞に連載中の安野モヨコ氏作「オチビサン」9月6日掲載版より転載。 写真が不鮮明な点、お詫び申し上げます。)
この漫画は芸術的であり、植物図鑑的であり、そして哲学的な風情があると私は捉えている。
私の場合、漫画の世界からは中学生時代に卒業して以来、今に至ってはほとんど縁のない暮らしをしているのだが、現在朝日新聞毎週日曜日に連載中の安野モヨコ氏作の「オチビサン」に関しては、連載が始まって以来毎週楽しみにしているのだ。
漫画「オチビサン」の特徴は、6~10コマ程ある漫画の全体が縦長長方形の一枚の絵のように構成されていることである。(上記写真参照) そして、その「絵」全体像における色彩が毎回何とも美しいのだ。 新聞をトップページから順にめくっていってこのページに入った途端、まずはその美しい色彩の世界に誘(いざな)われる。(上記の写真は小さくて不鮮明で恐縮なのだが。) 一説によると、新聞紙の色や風合いを活かすような色使いを、作者の安野氏が意識して工夫されているとのことである。
そして、この漫画には四季折々の草花や樹木、そして昆虫など自然の動植物が多く登場する。 その描写が、作者自身の個性が活かされている中にあって実に精妙、正確なのである。 これがこの漫画を“植物図鑑的”であると私が捉える所以である。
さて、この漫画の主人公はその名の通り“オチビサン”なのであるが、この“オチビサン”、人間ではあるようなのだがその正体は不明としか言いようがないところが実に不思議なのだ。 私の感覚では、見た目を優先して「男の子」と捉えるのが一番適切なのか、と思うのではあるが…
このオチビサンの正体も不明ならば、通常の漫画の主人公にはあり得ないキャラクターの持ち主で、ちょっと偏屈者とも言えるのだ。 とにかく我がままで我が身息災で、やんちゃできかん坊なのである。(なんだか、原左都子とこの辺は共通項があるなあ。
)
そんなオチビサンが自然体で力強く生きる姿が、この漫画で毎週展開されているのだ。
上記写真の9月6日の回はオチビサンが家出をするのであるが、その家出の原因といえば、これがくだらない。 自分の不注意でドアに足をはさみ、食器棚の戸に頭をぶち付け、水道の水栓の操作ミスで水を吹き飛ばし全身に水を浴びてしまう。 それらの不注意を自分の落ち度とは認めず、家のせいにして怒ったオチビサンが、(こんな家からは出て行ってやるぞ!)とのごとく家出を決行するのである。
ここで私自身の話をすると、私はどうやらオチビサンとこの辺の思考回路が一致しているようだ。 昼間家で一人で家事に励む時に同様の失敗をしょっちゅうしでかすのだが、家族がいないことをいいことに「何でぶつかって来るのよ!!」とドアや食器棚の戸を相手に怒りを爆発させている。怒りが頂点に達した時など、ドアや戸を蹴り倒し“復讐”して怒りを発散する“破壊型人間”である。(正体がバレたなあ。
)
それ故に、オチビサンが家出を決行する気持ちは重々分かるのだ。
そのようなオチビサンの混乱時にいつも登場するのが、親友の“ナゼニ”である。(この“ナゼニ”は黒い犬の外見なのだが、実は“あんこ”で出来ているらしい??) ナゼニは知識豊富な博学者なのだが、オチビサンのよき理解者でありアドバイサーであり、オチビサンをいつも背後から見守っているというキャラだ。
そのナゼニが「まあ落ち着いて」とオチビサンを諭して曰く、「家に誰かが居るからこその家出じゃないか」。 それに反発するオチビサンは「ひとり住まいでも家出くらいできるやい!!」と言い放って出て行く。
そうなのだ。オチビサンは一人暮らしなのだ。(この辺も、一人暮らしが長かった私と共通項であるため私が共感を持てる要素なのである。)
その他の主要な登場人物(登場動物?)と言えば、外見は犬の食いしん坊の“パンクイ”と近所の“頑固おじいちゃん”(おそらく正真正銘の人間であろう)だけで毎回物語が展開する。(たまに、猫やへびやその他の動物も登場するのだが。)
この漫画「オチビサン」物語は現実を超越していてるように見えて、実は今の時代の廃退した現状を的確に把握した“裏心理”の下に、物語を展開していると考察する。
一見“嫌われキャラ”のように受け取れるオチビサンの自然体の言動や、自然体であるから故に備わっている“生きることに対する力強さ”に私も共感するのである。 そして、そんな自然体の生き様が“オチビサン”の魅力であるからこそ、親友のナゼニやその他少数の登場人物(動物)の仲間が、いつもオチビサンを支え続けているのであろうと実感できるのだ。
しかもこの漫画のもう一つの魅力は、上記のごとく自然の植物、小動物等の描写が実に精妙、正確である点である。
この描写力が安野モエコ氏が漫画「オチビサン」の登場人物(動物)に込めた思いと相俟って、作品自体の芸術性を高めつつ、観る者の哲学的思索心を刺激しているものと思われる。
たとえ漫画とは言え(関係者には失礼な表現をお詫びしますが)、メディアはこのような上質の作品を普段はあまり漫画には縁のない一般市民に紹介して欲しいものである。
この漫画は芸術的であり、植物図鑑的であり、そして哲学的な風情があると私は捉えている。
私の場合、漫画の世界からは中学生時代に卒業して以来、今に至ってはほとんど縁のない暮らしをしているのだが、現在朝日新聞毎週日曜日に連載中の安野モヨコ氏作の「オチビサン」に関しては、連載が始まって以来毎週楽しみにしているのだ。
漫画「オチビサン」の特徴は、6~10コマ程ある漫画の全体が縦長長方形の一枚の絵のように構成されていることである。(上記写真参照) そして、その「絵」全体像における色彩が毎回何とも美しいのだ。 新聞をトップページから順にめくっていってこのページに入った途端、まずはその美しい色彩の世界に誘(いざな)われる。(上記の写真は小さくて不鮮明で恐縮なのだが。) 一説によると、新聞紙の色や風合いを活かすような色使いを、作者の安野氏が意識して工夫されているとのことである。
そして、この漫画には四季折々の草花や樹木、そして昆虫など自然の動植物が多く登場する。 その描写が、作者自身の個性が活かされている中にあって実に精妙、正確なのである。 これがこの漫画を“植物図鑑的”であると私が捉える所以である。
さて、この漫画の主人公はその名の通り“オチビサン”なのであるが、この“オチビサン”、人間ではあるようなのだがその正体は不明としか言いようがないところが実に不思議なのだ。 私の感覚では、見た目を優先して「男の子」と捉えるのが一番適切なのか、と思うのではあるが…
このオチビサンの正体も不明ならば、通常の漫画の主人公にはあり得ないキャラクターの持ち主で、ちょっと偏屈者とも言えるのだ。 とにかく我がままで我が身息災で、やんちゃできかん坊なのである。(なんだか、原左都子とこの辺は共通項があるなあ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase1.gif)
そんなオチビサンが自然体で力強く生きる姿が、この漫画で毎週展開されているのだ。
上記写真の9月6日の回はオチビサンが家出をするのであるが、その家出の原因といえば、これがくだらない。 自分の不注意でドアに足をはさみ、食器棚の戸に頭をぶち付け、水道の水栓の操作ミスで水を吹き飛ばし全身に水を浴びてしまう。 それらの不注意を自分の落ち度とは認めず、家のせいにして怒ったオチビサンが、(こんな家からは出て行ってやるぞ!)とのごとく家出を決行するのである。
ここで私自身の話をすると、私はどうやらオチビサンとこの辺の思考回路が一致しているようだ。 昼間家で一人で家事に励む時に同様の失敗をしょっちゅうしでかすのだが、家族がいないことをいいことに「何でぶつかって来るのよ!!」とドアや食器棚の戸を相手に怒りを爆発させている。怒りが頂点に達した時など、ドアや戸を蹴り倒し“復讐”して怒りを発散する“破壊型人間”である。(正体がバレたなあ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_tehe.gif)
それ故に、オチビサンが家出を決行する気持ちは重々分かるのだ。
そのようなオチビサンの混乱時にいつも登場するのが、親友の“ナゼニ”である。(この“ナゼニ”は黒い犬の外見なのだが、実は“あんこ”で出来ているらしい??) ナゼニは知識豊富な博学者なのだが、オチビサンのよき理解者でありアドバイサーであり、オチビサンをいつも背後から見守っているというキャラだ。
そのナゼニが「まあ落ち着いて」とオチビサンを諭して曰く、「家に誰かが居るからこその家出じゃないか」。 それに反発するオチビサンは「ひとり住まいでも家出くらいできるやい!!」と言い放って出て行く。
そうなのだ。オチビサンは一人暮らしなのだ。(この辺も、一人暮らしが長かった私と共通項であるため私が共感を持てる要素なのである。)
その他の主要な登場人物(登場動物?)と言えば、外見は犬の食いしん坊の“パンクイ”と近所の“頑固おじいちゃん”(おそらく正真正銘の人間であろう)だけで毎回物語が展開する。(たまに、猫やへびやその他の動物も登場するのだが。)
この漫画「オチビサン」物語は現実を超越していてるように見えて、実は今の時代の廃退した現状を的確に把握した“裏心理”の下に、物語を展開していると考察する。
一見“嫌われキャラ”のように受け取れるオチビサンの自然体の言動や、自然体であるから故に備わっている“生きることに対する力強さ”に私も共感するのである。 そして、そんな自然体の生き様が“オチビサン”の魅力であるからこそ、親友のナゼニやその他少数の登場人物(動物)の仲間が、いつもオチビサンを支え続けているのであろうと実感できるのだ。
しかもこの漫画のもう一つの魅力は、上記のごとく自然の植物、小動物等の描写が実に精妙、正確である点である。
この描写力が安野モエコ氏が漫画「オチビサン」の登場人物(動物)に込めた思いと相俟って、作品自体の芸術性を高めつつ、観る者の哲学的思索心を刺激しているものと思われる。
たとえ漫画とは言え(関係者には失礼な表現をお詫びしますが)、メディアはこのような上質の作品を普段はあまり漫画には縁のない一般市民に紹介して欲しいものである。