原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

なぜ、入試会場へのネット通信機器持込を認める?

2011年02月28日 | 時事論評
 この手の犯罪が起こるべくして起こったとも言えるネット機器氾濫時代において、入試会場内への携帯電話等の持込が平然と認められている現状に唖然とする原左都子である。


 事が明るみになった発端は、京都大学で去る25、26日に行われた大学入試2次試験に於いてであった。

 数学と英語の試験問題の一部が“試験中”にインターネット上の「ヤフー掲示板」と称する掲示板に投稿されたそうなのだ。 京都大学は受験生が携帯電話等から投稿した可能性があると見て調査を開始すると同時に、本日(28日)午後、警察に被害届を出した模様である。
 京都大学副学長は昨夜の記者会見に於いて「厳正かつ公正に行われるべき入学試験の根幹を揺るがす重大な問題で、大学の業務として行われた入学試験を妨害する犯罪行為だ」と述べ、各学部長を集め緊急の入学試験委員会を開いたようだ。 来月10日の合格発表は予定通りに行うそうであり、不正を働いた受験生が特定され、この受験生が仮に合格していれば合格を取り消すことを確認したとのことである。

 報道によると、最も早い掲示板への書き込みは数学の試験の開始時刻である午後1時30分の直後とも言える1時37分に、入試問題と共に「解答だけではなく途中計算もよろしくお願いします」とのコメントが掲載されていたとのことだ。

 原左都子の憶測になるが、この事実から推測して今回の掲示板への書き込みは受験生(あるいはその他)が咄嗟の出来心でネット投稿に及んだのではなく、事前の準備を含めた綿密な計画性が伺えることは明らかだ。
 しかもそれは単に一受験生の思いつきと言うよりも、“組織ぐるみ”の犯行の可能性が強い気配もあるのではなかろうか? それも小さな組織ではなく、背後には受験生を合格させることにより利潤や恩恵を得ることができる、ある程度大きな組織のたくらみが存在するのでは?? と推し量る原左都子は、単なる推理好きであろうか?

 ところがそうも言っていられないのは、同様の犯罪が既に私立大学の入試会場に於いても少なからず行われていたとの報道である。 
 例えば、同じく京都市に位置する同志社大学では2月8日の文・経済学部の英語の入試中に同じIDから問題の一部が掲示板に投稿されたとのことであり、はたまた2月11日にも東京都の立教大学において同様に英語の問題の掲示板への投稿があったそうなのだ。
 その他、早稲田大学入試に於いても同様のネット上の書き込みがあったとのことである。
 今後捜査が進むにつれ、入試中にネット書き込みがあった大学は拡大していくことであろう。


 それにしても、原左都子は合点がいかない。

 例えば私立大学の入試会場に於いてもその種の不正があったのならば、何故私学はそれを直ぐに公表しなかったのか!? 
 世間への不正行為の公表はおろか、入試における不正行為発生を大学が認識出来ているにもかかわらず学内においてすらその捜査を実施するでもなく、既に合格者を発表しているとは、これまたどういう事なのだろう?? 
 今回京都大学が不正行為発生直後に公表に踏み切ったことを受けて、既に入試日から20日以上が経過した今頃になって私学が慌てふためいて 「我が大学でも同様の不正行為があった」 などと遅ればせながら公表し、「我が大学では既に合格者を発表しているが、今後の捜査結果によっては合格を取り消す…」 と言ったってねえ…

 だからこそ、原左都子は“胡散臭さ”を感じてしまうのだ。
 “その公表の遅さ イコール 不正行為の容認” と市民に受け取られてもやむを得ないのではなかろうか?
 時は“少子化時代”である。 どんな手段に頼ってでも一人でも多くの合格者を確保したい私学の裏事情が今回の不正行為の公表の遅さにつながり、最悪の場合、それが“組織ぐるみの入学者囲い込み”と意地悪く推測する私のような人間がいても不思議ではない時代背景ではないのだろうか??


 「原左都子エッセイ集」バックナンバーにおいて再三私論を述べているが、大学とはあくまでも学問を伝授、追究する学府であるべきなのだ。  そのような神聖であるはずの学問探究の場に、不正行為をなす学生などに決して門戸をくぐらせてはならない。
 とは言えども、国公立私立を問わず大学生とは名ばかりで大学在学中に学問に触れることもなく卒業単位のみを何とかクリアした学生が、今尚数多く社会に排出されていることは否めないであろう。
 その現実をもどうにかしたい思いが山々の原左都子ではあるが今はそれを差し置いて、今回の入試における不正行為は事が悪質である。 (京大はよくぞ警察に被害届を出してくれたものだ!


 差し当たっての解決策として、入試会場への携帯電話をはじめとするネット通信機器の持込を禁止してはどうなのか?

 原左都子自身も4、5年前に税理士試験受験経験があるのだが、その時にも試験会場内への携帯電話の持ち込みは電源を切る事を条件に「可」であった。 試験会場である大学によっては、300人規模の大教室に於いて試験監督者はわずか3人。  そのうちの一人は前方の席に座って試験の注意事項等の指示をした後全体を見渡す役割のようで、そしてもう一人は受験者全員の受験票写真のチェックに回り、後の一人は後方に位置しているものの、これでは監督業務が手薄であろうことを、私は元教員として入試にかかわった経験がある立場での感覚を抱いたものである。 (参考のため高校入試の場合は一教室の受験者数が40人程度であり、そこに監督者が2名張り付いたものである。 携帯電話など当時は存在しなかったし、現在でも当然ながら持込禁止だろうしね。)

 同じく、来年度大学入試を控えている我が娘も同様の事を口にするのだ。
 各種予備校の模擬試験を幾度か経験している娘が言うには、「机に座って寝ている監督者もいれば大して監督業務をしていない係員もいるから、カンニングを志す受験者がいるなら十分出来る環境だよ。」

 実際の大学入試では、厳格な監督がなされていることに期待したいものだ。
 ただ大学入試に於ける“大教室”の利用や監督者数の手薄さを考慮した場合、ここは思い切って携帯電話等のネット通信機器を試験会場に持ち込むことを禁止してはどうなのか。
 通信機器を持参した受験生に預り証を発行して事前に回収保管し、試験終了後に返却すれば済む問題であろう。
 まさか人件費が多大に発生する試験会場監督者を増強できるはずもない大学の実情に照らして、それこそが一番の解決策だと私は思うのだが…
Comments (6)