今から遡る事20年程前に、私は国営放送局とも表現されている我が国の某放送局(早い話がNHKの事だが)の新入社員対象の入社試験に挑んだ経験がある。
30代にして再び新たな学問を志し大学及び大学院修士課程にて学業に励み、大学院修了後は心密かに「学者」を目指していた頃の話だ。
ところが学者とはコネが幅を利かせる世界であり、学者を目指そうとする院生とはゼミ指導教官を通して指南を仰ぐのが常識である。 それは承知の上で、人の世話になることを好まない私は、例えば新聞紙上等で大学や短大の専任講師募集を発見しては自分で応募書類を送付したものである。 残念ながら門前払いの厳しい現実のみが待ち構えていたのは当然の成り行きだったのであろう…。
元々医学関係者である私は大学院修了後再びそれを食い扶持とすることも視野に入れつつ、せっかく“新卒”で世に出るのだから、これを利用して少し冒険したい気分にもなっていた。
そんな時に発見したのが、普段よく見ているNHKテレビが放映していた「大卒及び大学院修了者対象の職員募集」だったのだ。 この募集放映を幾度となく見つつ“年齢制限”がないことを重々確認した私である。
早速履歴書及び必要書類を東京渋谷のNHK本局に送付したところ、即刻面接通知が届いた。 (参考のため、当時の就職事情とはまだまだバブル経済の下で“超売り手市場”期であり、大卒が100%就職できた時代背景である。)
そして渋谷まで面接に出かけた私であるが、当然ながら待合室にはまだ20を過ぎたばかりの“世間知らずの子ども達”が大勢溢れている。 (やはり、NHKは人気があるなあ~)などと他人事のように感じつつ、さほどの時間を待たずして私の面接の番となった。
既に書類は送付してあるが、私の方から“年齢”に関して切り出した。 「私位の年齢の新卒者を採用する意思はありますか?」 さすがNHK、その返答が紳士的であったことが印象深い。 「今回の募集はあくまで大学・大学院修了直後者が対象であって年齢制限を定めていませんので、○○さん(私のこと)も採用対象です。 ただ○○さんの場合は、むしろキャリア採用試験を受けていただいた方がよいかもしれません。」
その回答でNHKの意思は十分伝わった。 当時のNHKのキャリア採用と言えば、アナウンサーの福島ナンタラ氏(イチローの奥さんである福島弓子氏のお姉さん)しか採用していない状況だった事を私は既に認識していた…
ところがその後NHKから二次試験である小論文審査通知が届き、指定された会場まで出かけるはめとなる。
ここでやっと、今回の本エッセイ集の表題である 「人の面(つら)」 の話題に移ることにしよう。
実はこの時のNHKの採用試験の小論文審査の課題が 「面」 だったのである。
小論文試験に先立って、受験者には解答用紙である白紙の原稿用紙のみが配布された。 試験が開始した直後、担当者が黒板に 「面」 とのみ書いたのだ。 そして口頭で、「“これ”に関して自由に論じて下さい」ときた!
それまで数ある論文作成や小論文課題に挑んできた私であるが、こんな突拍子もない小論文課題に解答するのはその時が初めての経験だった。
おそらく当時のNHKとはテレビ放映が中心業務であり(今もか??)、テレビの画面上で放映される平面という限界ある世界の中での想像力の幅を学生達に問うのがこの小論文の趣旨であろうか? との想像もついた原左都子である。
それはともかく、黒板の 「面」 の字を見て私の脳裏に真っ先に思い浮かんだのが、今回の「原左都子エッセイ集」表題の 「人の面(つら)」 だったのだ。
小論文のテーマを私なりに「人の面(つら)」と即座に決定した私は、人の面(つら)とは多くを物語るものだとか、今回のNHKの採用試験に於いて「面接」を重要視して人の面(つら)を真っ先に見ようとした事は評価できるだとか、当時の私なりの論評を解答用紙上に展開して快く帰宅したのである。
(当然ながらNHKからは“不採用”の結果が届く事を、その帰り道から実感していたものであるぞ)
ところで昨夜のNHKニュースに於いて、元オウム真理教徒である平田特別手配者の「面(つら)」について解説するべく場面があった。
これはオウム真理教による目黒公証役場事務長拉致事件を受けて特別指名手配となっていた平田容疑者の出頭時の写真を、昨日(1月6日)警視庁が公開するという異例の発表を行った事に、NHKが対応した結果であろう。
平田容疑者の「面(つら)」が17年前と印象があまりにも違いすぎるとの警察庁の見解とは、原左都子に言わせてもらうと、平田を個人的判断で取り逃がしてしまった一機動隊員を弁護するべく言い訳にしか過ぎないとしか考えられないのであるが…
その警察庁の見解を受けて、昨晩NHKニュースにおいても現代似顔絵作家氏による平田容疑者の似顔絵が公開された。 その場面に於いても、何故か警察庁の主張に合意したのか「17年前と今とでは人相が違いますね…」などと報道している始末だ…
ちょっと待ってもらって私に言わせていただくと、平田容疑者の顔ほど日本人として特徴的な面(つら)はないのではあるまいか??
オウム事件による特別手配者3名の写真が公開されていたこの17年間、私の脳裏に一番刻まれているのが平田容疑者の容貌である。 この顔を世界中のどこで何年経って見ても “こいつは平田だ!” と特定できそうな気さえ私はする。
それは私がこの世に長年生きているから故に備わった、「人の面(つら)」を判断できる特質性でもあるのかもしれない。
だが警察庁が表明している通り、今後はもう少し機動隊員の教育を徹底する事を含めて指名手配者体制を強化するべき事は言うまでもないであろう。(指名手配専用フリーダイヤルがいつも話中で繋がらないというのも解せない話だ…)
平田容疑者が警視庁の機動隊員に門前払いされた後、丸の内署に向かった事を不幸中の幸いとしたいものであるが、もしもそうでなかったならば平田関連オウム事件の解決は今後永遠になされなかった恐れもあるのだ…。
それにしても、原左都子って昔から 「人の面(つら)」 に関して類稀な記憶力があるから、指名手配者の皆さん覚悟しておいてね~~
30代にして再び新たな学問を志し大学及び大学院修士課程にて学業に励み、大学院修了後は心密かに「学者」を目指していた頃の話だ。
ところが学者とはコネが幅を利かせる世界であり、学者を目指そうとする院生とはゼミ指導教官を通して指南を仰ぐのが常識である。 それは承知の上で、人の世話になることを好まない私は、例えば新聞紙上等で大学や短大の専任講師募集を発見しては自分で応募書類を送付したものである。 残念ながら門前払いの厳しい現実のみが待ち構えていたのは当然の成り行きだったのであろう…。
元々医学関係者である私は大学院修了後再びそれを食い扶持とすることも視野に入れつつ、せっかく“新卒”で世に出るのだから、これを利用して少し冒険したい気分にもなっていた。
そんな時に発見したのが、普段よく見ているNHKテレビが放映していた「大卒及び大学院修了者対象の職員募集」だったのだ。 この募集放映を幾度となく見つつ“年齢制限”がないことを重々確認した私である。
早速履歴書及び必要書類を東京渋谷のNHK本局に送付したところ、即刻面接通知が届いた。 (参考のため、当時の就職事情とはまだまだバブル経済の下で“超売り手市場”期であり、大卒が100%就職できた時代背景である。)
そして渋谷まで面接に出かけた私であるが、当然ながら待合室にはまだ20を過ぎたばかりの“世間知らずの子ども達”が大勢溢れている。 (やはり、NHKは人気があるなあ~)などと他人事のように感じつつ、さほどの時間を待たずして私の面接の番となった。
既に書類は送付してあるが、私の方から“年齢”に関して切り出した。 「私位の年齢の新卒者を採用する意思はありますか?」 さすがNHK、その返答が紳士的であったことが印象深い。 「今回の募集はあくまで大学・大学院修了直後者が対象であって年齢制限を定めていませんので、○○さん(私のこと)も採用対象です。 ただ○○さんの場合は、むしろキャリア採用試験を受けていただいた方がよいかもしれません。」
その回答でNHKの意思は十分伝わった。 当時のNHKのキャリア採用と言えば、アナウンサーの福島ナンタラ氏(イチローの奥さんである福島弓子氏のお姉さん)しか採用していない状況だった事を私は既に認識していた…
ところがその後NHKから二次試験である小論文審査通知が届き、指定された会場まで出かけるはめとなる。
ここでやっと、今回の本エッセイ集の表題である 「人の面(つら)」 の話題に移ることにしよう。
実はこの時のNHKの採用試験の小論文審査の課題が 「面」 だったのである。
小論文試験に先立って、受験者には解答用紙である白紙の原稿用紙のみが配布された。 試験が開始した直後、担当者が黒板に 「面」 とのみ書いたのだ。 そして口頭で、「“これ”に関して自由に論じて下さい」ときた!
それまで数ある論文作成や小論文課題に挑んできた私であるが、こんな突拍子もない小論文課題に解答するのはその時が初めての経験だった。
おそらく当時のNHKとはテレビ放映が中心業務であり(今もか??)、テレビの画面上で放映される平面という限界ある世界の中での想像力の幅を学生達に問うのがこの小論文の趣旨であろうか? との想像もついた原左都子である。
それはともかく、黒板の 「面」 の字を見て私の脳裏に真っ先に思い浮かんだのが、今回の「原左都子エッセイ集」表題の 「人の面(つら)」 だったのだ。
小論文のテーマを私なりに「人の面(つら)」と即座に決定した私は、人の面(つら)とは多くを物語るものだとか、今回のNHKの採用試験に於いて「面接」を重要視して人の面(つら)を真っ先に見ようとした事は評価できるだとか、当時の私なりの論評を解答用紙上に展開して快く帰宅したのである。
(当然ながらNHKからは“不採用”の結果が届く事を、その帰り道から実感していたものであるぞ)
ところで昨夜のNHKニュースに於いて、元オウム真理教徒である平田特別手配者の「面(つら)」について解説するべく場面があった。
これはオウム真理教による目黒公証役場事務長拉致事件を受けて特別指名手配となっていた平田容疑者の出頭時の写真を、昨日(1月6日)警視庁が公開するという異例の発表を行った事に、NHKが対応した結果であろう。
平田容疑者の「面(つら)」が17年前と印象があまりにも違いすぎるとの警察庁の見解とは、原左都子に言わせてもらうと、平田を個人的判断で取り逃がしてしまった一機動隊員を弁護するべく言い訳にしか過ぎないとしか考えられないのであるが…
その警察庁の見解を受けて、昨晩NHKニュースにおいても現代似顔絵作家氏による平田容疑者の似顔絵が公開された。 その場面に於いても、何故か警察庁の主張に合意したのか「17年前と今とでは人相が違いますね…」などと報道している始末だ…
ちょっと待ってもらって私に言わせていただくと、平田容疑者の顔ほど日本人として特徴的な面(つら)はないのではあるまいか??
オウム事件による特別手配者3名の写真が公開されていたこの17年間、私の脳裏に一番刻まれているのが平田容疑者の容貌である。 この顔を世界中のどこで何年経って見ても “こいつは平田だ!” と特定できそうな気さえ私はする。
それは私がこの世に長年生きているから故に備わった、「人の面(つら)」を判断できる特質性でもあるのかもしれない。
だが警察庁が表明している通り、今後はもう少し機動隊員の教育を徹底する事を含めて指名手配者体制を強化するべき事は言うまでもないであろう。(指名手配専用フリーダイヤルがいつも話中で繋がらないというのも解せない話だ…)
平田容疑者が警視庁の機動隊員に門前払いされた後、丸の内署に向かった事を不幸中の幸いとしたいものであるが、もしもそうでなかったならば平田関連オウム事件の解決は今後永遠になされなかった恐れもあるのだ…。
それにしても、原左都子って昔から 「人の面(つら)」 に関して類稀な記憶力があるから、指名手配者の皆さん覚悟しておいてね~~