原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

不動産という“生き物”の育て方、旅立たせ方

2014年06月25日 | 自己実現
 一昨日、私は28年程前に購入し現在賃貸借物件として運用している自己所有マンション物件を“旅立たせた”。

 要するに、「オーナーチェンジ物件」として売りに出し、その売買契約を締結して来たとの事である。


 この物件に関しては「原左都子エッセイ集」内で幾度か記述してきているが、一番最初に公開したエッセイ 2007年12月バックナンバー「住宅ローンの早返し」より、今一度紹介させて頂こう。

 私は20歳代半ばを過ぎた頃から“結婚しないかもしれない症候群”だった。 結婚しないならば、早めに独り暮らしのための自己所有住居を取得したいという漠然とした考えがあった。
 30歳に近づいた頃まだ独身だったため、いよいよ住宅購入実現に踏み切った。 そして、(当時)首都圏で人気No.1私鉄の急行停車駅から徒歩4分の築4年2DKマンション中古物件を購入した。 既に全額現金購入できるだけの資金を蓄えていたのではあるが、税務対策等の理由で住宅ローンを組んだ。 その頃は高金利時代でこの物件の住宅ローン金利は8%を超えていたが、独身のうちに7年間で自力完済した。
 この物件は現在まだ所有しており、現在賃貸し家賃収入を得ている。 私の独身時代青春サクセスストーリーの象徴、形ある集大成とも言え、手放せない。
 (以上、本エッセイ集バックナンバーより一部を紹介したもの。)


 この物件に私自身が7年間住んだ後、独身時代を終焉して婚姻に至り転居する段と相成った。
 その後も特段当該物件を手放す必要性が発生しなかったことが幸いして、私は(上記の通り)我が独身時代サクセスストーリーの象徴として手放さずにいた。
 その後賃貸物件として投資運用対象としようと志した私は、幾度か賃借人募集をかけ、入居を希望する方々に賃貸借してきた。


 ここで一旦、私論(と言うよりも「私観」と表現するべきか)に入ろう。

 不動産とは“生き物”だとつくづく実感させられる。 
 この感覚とは、子どもを育てている親の思いと重なる部分がある故だ。

 以下は我が所有物件を「この子」と呼ばせてもらおう。

 「この子」を私が買い求めたのは、様々な意味合いで“お利口さん”だったからに他ならない。 立地条件が抜群、独り暮らし用にしては部屋は広いし、とにかく私にとってはすべての面で優等生の「この子」だった。
 婚姻後「この子」を賃貸借物件として利用するに際しても、「この子」がいい子であってくれるがために次々と入居者に恵まれ、私は「この子」の稼ぎのお陰で潤ってきたとも言える。

 ところが、「この子」の親である私の失敗とは、「この子」の旅立ちの時期を誤った事に他ならない。
 いい子だ、いい子だと、「この子」の頑張りにずっと期待した私は、親である我が手元に置き過ぎたようだ…。
 「この子」が“もう旅立たせてよ…” と泣いて訴えていたにも関わらず、私は自分自身のとりあえずの収益に期待し過ぎ、それに気付かないでいた…

 そんな時、「この子」の体内に病弱の診断が下った。
 ある程度の期間“賃貸借物件”としての使命を果たして来たが、その体内に致命的な瑕疵が発見されるに至ったのだ。 排水管設備の不具合により「この子」に関して入居者氏よりクレームが届いた。 それにすぐさま対応した私だが、多額の損失を計上するに至った。

 その時点より、私は「この子」を将来羽ばたける分野へ“売りに出す”事を目論んでいた。
 幸いな事には、「この子」が持って生まれている“立地条件”との利便性により、すぐさま買い手が付いたのだ!
 その買い手企業に関して少しだけ説明するならば、「リノベーション」を目的として我が物件を買い取って下さったようだ。
 参考のため、「リノベーション」とは、築年数が経過した物件を安値で買い取り、大規模リフォームを施して顧客に売却するシステムである。
 ところが原左都子所有物件の場合、決して安価ではなく私が“指示した価格”で売買契約締結に至った事実に、売買仲介会社の手腕の程に感謝したい思いである。
 


 いやはや、「捨てる神あれば拾う神あり」との格言もあるが、今の時代、人も不動産物件もその運命にあるのではなかろうか?

 自分自身や産んだ子供に「付加価値」があると信じるならば、親の立場としてその価値の根拠の程を熱心に訴え続けるに限る。
 それにより我が子が新たな良き人生を歩めることを改めて実感させられたのが、今回の我が不動産物件「売却物語」である。

 我が28年来所有不動産物件の「この子」よ。  私の手元から“納得出来る価格”で旅立ってくれて本当にありがとう。 最後まで親孝行な「この子」だったと嬉しく思っているよ!

 今後「リノベーション物件」として、更に次世代の世の中で活躍する事を心から祈っているよ!