原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

サクセスストーリーとは、今の時代世の反感を煽る

2014年06月02日 | 時事論評
 いや決してそうではなく、「サクセスストーリー」も主人公のサクセスゲットまでの道程を丹念に緻密に描けたならば、世の反感を煽らずに済むのかもしれない。


 今回の「原左都子エッセイ集」では、久々にNHK連続テレビ小説を取り上げる。

 と言うのも第82回「ゲゲゲの女房」以来、(一部を除き)NHKドラマシリーズがテレビ視聴率上位をゲットし続けているためである。
 それまで、このドラマシリーズは視聴率低迷を強いられていた。 私自身の記憶でも、「ゲゲゲ…」以前は一体如何なる題目のドラマを放映していたかをすぐには思い出せない程、人々の記憶から忘れ去られていると言うのが現実であろう…。


 さて、それでは原左都子の観点から「ゲゲゲ…」以降のNHK連続テレビ小説に於いて、主人公のサクセスゲットに関し十分描写し切れたと評価するドラマを以下に列挙しよう。

 まずは、まさに82回「ゲゲゲの女房」である。
 松下奈緒氏主役の、漫画家水木しげるの女房役が実に好演だった。 連続テレビ小説にしては珍しく「主婦」を主人公に取り上げたドラマだったが、松下氏は何らの勘違いもせずして、向井理氏演ずる漫画家の夫を常に目立たずに陰で支えつつ、控え目な主婦役を半年間に渡って演じ切ったとの感想を私は持っている。
 これぞドラマの時代背景も勘案した場合、正当な「サクセスストーリー」であろう。

 そして、85回「カーネーション」は実に圧巻だった。
 尾野眞千子氏が熱演したコシノ3姉妹の母親役は、今尚皆さんの脳裏にも刻まれている事であろう。 

 三つ飛ばして、前回放送の89回「ごちそうさん」の主役を演じた 杏氏も好演だった。 
 このドラマに関しては、実は私は当初懸念感を抱いていた。 と言うのも、杏氏とは大物役者の娘、しかもドラマ初期設定が洋食屋の呑気な娘役。 一体この天然質娘のサクセスストーリーを如何に描くのか半ば落胆しつつドラマの行方を見守っていた。 ところが、この物語は杏氏演ずる主役をあくまで“天然質”観点から描き通した事で成功を勝ち取ったのではないかと、私は評価している。


 それでは、いよいよ話題を現在放映中の「花子とアン」に移そう。 

 まずは、主役である吉高由里子氏を今回の連ドラ主役に抜擢した理由をNHKに問いたい思いだ。
 申し訳ないが、このドラマを見るまで私はこの女優氏を全く存じていなかった。 確かにお顔は美しく古来の日本美人の範疇と捉えられる事には異論はない。
 ところが今時の女優氏にして身長が低そうだ。 傍役の女優氏と対面する場面でも、低身長故に下から目線でセリフを発しねばならない場面を見せられて、痛々しくもある…。 これがもしも葉山蓮子役の(既にベテラン女優域にある)仲間由紀恵氏ならば、低身長とて許されるであろう。 
 という訳で、主役をゲットした吉高氏にとっては、おそらくスタートラインから“重荷”の現場だったのではなかろうか。

 しかも、子役「はな」とのギャップ差が大き過ぎた。 確かに子役「はな」は貧乏小作農家に生まれたとの役柄にマッチする外見だった。 
 ただしドラマ当初より、主役 はなが「神童」である事実に関してNHK脚本は説明責任に欠けていた。 行商を営む父親が身勝手にはなを給付生として東京の名門女学校に入れると言えども、もっと現在の庶民にも分かり易く、はな が名門女学校で特例を受けられる理由に関してドラマ内で説明するべきだった。

 さらには、時代が吉高氏演ずる大人の はな に移ろいだ後にも、はな の実力の程がさほど描かれていないのだ。 所属した女学校では はな は英語だけは得意だったとのことだが…。
 女学生時代に一時所属した出版社で英訳の仕事を“少しばかり”したとの実績のみで、結局 はな は郷里である甲府に戻り、小学校の教師をしているとの現在のドラマの現状である。


 ここで原左都子の私論に入ろう。

 そりゃそうだろう。
 現時点での主人公 はな に、一体全体如何なる能力があるというのか?
 その回答とは、ド田舎小学校の教師でもする以外、何もないというのが実態だ。
 そんな身分で地元地主の息子の嫁など務まる訳もないであろう。 これは破談になって正解である。

 と言うことは、今後こそ「花子とアン」の主人公である はな に、素晴らしいまでのサクセスストーリーに向けた精進の過程が期待できるということであろうか?
 はな はゆくゆくは「村岡花子」との著者名で「赤毛のアン」を翻訳するらしいが、それまでのサクセスストーリーを、NHKはドラマ内で視聴者が納得できるレベルで丹念・緻密に描いてくれるのであろうか??

 
 最後に原左都子の私論に入ろう。
  
 第90回 NHK連続テレビ小説「花子とアン」は、一応私にとってもある意味で面白い事には間違いない。
 ただその面白さが、今のところは主人公 はな ではなく、脇役の葉山蓮子さまや、お兄ちゃんの吉太郎、はたまた、お隣の朝市に向いていることを伝えておきたい。
 これら登場人物の生き様(及びその熱演)に支えられつつこのドラマが高視聴率をキープしているのだと、私は分析している。 (故に、上記3人が出演しない日は実につまらない…

 今後は、当然ながら主人公である はな のサクセスストーリーの程を、今時の視聴者が納得できる高いレベルで描くべきだ。

 今年9月末まで、後4か月もの長きに渡り続くNHK連続テレビ小説である。
 どうか、吉高由里子氏との(私にとっては今回のドラマで初めて知った)女優氏の将来を繋ぐためにも、NHKは(その採用責任側として)精進するべきであろう。