(写真は、2007年8月に家族旅行にてエジプトを訪れた際に原左都子が撮影したクフ王のピラミッド)
今から遡る事9年程前に、私はエジプトを訪れピラミッド観光をしている。
あいにく灼熱地獄猛暑時期のエジプト及びギリシャ訪問と相成り、私と娘は現地の食事にも慣れず、激しい下痢症状(娘は高熱も発症)に苛まれた。
そんな旅程の最終章に、ギザ地区のピラミッド群及びスフィンクス観光の日程が組まれていた。
出来れば日陰で休みたい思いが山々なれど、せっかく遥々訪れたエジプトに於いてピラミッド観光をせずしては帰国出来ない。
しかも、今回は入場人数が限定されているピラミッド内部まで内覧出来るとのツアーの触れ込みだ。 ただし、内覧に関しては急激な階段や狭い場所を通過する体力を要するため、高齢者や体調のすぐれない観光客の入場は避けるようにとの指導だ。
直前まで入場を諦めようかと迷ったのだが、身内の勧めもあり思い切ってクフ王ピラミッドの内部に娘も引き連れて入場することとした。
上記写真のピラミッド右下辺りに入場口があるのをお分かりいただけるであろうか? この入場口まで辿り着く事さえ困難だった記憶があるが、内部に入場して「やはり止めておけば良かった…」との後悔に苛まれる…
急な階段どころか、直立に近い(階段と言うより)“はしご”を登り切らねばならない場面すらある! まるでアスレチック競技に出場して闘っているような感覚だ。 しかももっと不運な事には、限定入場者は団体行動を強いられるため行動に遅れを取ることが許されないのだ。
結局、命がけでピラミッド内で激しい運動をさせられたのみで、ガイド氏の話を聞く余裕など一切無く、やっとピラミッドから外に出られた時には命が助かっている事に感激すらしたものだ。
と言う訳で、我がクフ王ピラミッド内覧とは体力・精神力勝負を課せられ“死にそうだった”記憶しかなく、一体何を見てきたのやら訳が分からないとの恥ずかしい事態だ。
ただ、これぞエジプト5000年の歴史に触れた最高の思い出として、我が脳裏に明瞭に刻まれている事も確かだ。
そんな経験がある私は、一昨日5月1日にNHKにて放映された“NHKスペシャル”「エジプト大ピラミッド古代史最大の謎に挑む」なる番組放映を心待ちにしていた。
以下に、NHKがネット上に公開している当該番組に関する事前解説を引用して紹介しよう。
エジプト大ピラミッドの「永遠の謎」は解けるのか?考古学最大の謎に、日本発の「透視技術」が挑む!
今からおよそ4500年前に誕生したエジプトの大ピラミッド。「人力でどうやって建設したのか」「未知の『黄金の間』が隠されているのでは」・・・今なお数多くの謎に包まれており話題が尽きない。
今回、こうした謎に日本で開発された最新のミュオン透視で挑戦することが許可された。 ミュオン透視とは、宇宙線として空から降り注ぐ素粒子ミュオンを使い、レントゲンのように巨大構造物を透視する新技術。 NHKは名古屋大学や高エネルギー加速器研究機構と考古学調査に使えるミュオン透視を開発する共同研究を立ち上げ、研究者らは昨年秋からエジプトのピラミッドでの透視実験を繰り返している。
番組では、ピラミッドに秘められた壮大なロマンを紹介しながら考古学最大の謎に挑む日本の研究者たちの奮闘を描き、透視調査の最新状況を伝える。
ここで一旦、ミュオン(ミュー粒子、ミューオンとも呼称されるが現在は“ミューオン”が一般的な表記のようだが)に関するウィキペディア情報の一部を要約して、以下に紹介させていただこう。
ミュー粒子は、電気素量に等しい負の電荷と1/2のスピンを持つ。
1936年にカール・アンダーソンとセス・ネッダーマイヤーによって宇宙線の中に観測された。 粒子が霧箱の中で描く曲飛跡から、電子と同じ電荷だが電子より重い新粒子であると推定された。 1937年には、理化学研究所の仁科芳雄のグループおよびストリート(J.C. Street)とスティヴンソン(E.C. Stevenson)らが独立に、ウィルソン霧箱実験によって新粒子の飛跡を捉えた。
発見当初はその質量が湯川秀樹によって提唱された核力を媒介する粒子である中間子と非常に近かったため、ミュー中間子と呼ばれていた。 しかし、ミュー粒子は核力を媒介しないことが分かり、中間子の性質を持たないことが判明した。 1947年、セシル・パウエルらによりパイ中間子が発見されたことで湯川の中間子説および二中間子説が正しいことが証明され(実際には、反パイ中間子がミュー粒子に崩壊する)、ミュー粒子は電子と類似した性質を持つレプトンの一種として分類された。
ミューオンは、イオンビーム(粒子線)として世界に数カ所ある中間子工場(Meson Factory)と呼ばれる陽子加速器施設で利用に供されており、素粒子・原子核物理学からミュオンスピン回転(μSR)による物性物理学、物理化学の研究に至るまで幅広く利用されている。 また、ミューオンを用いたミューオン触媒核融合、μ-捕獲X線による非破壊元素分析など、学際的な応用研究も行われている。ミューオンを使った放射線治療も研究されている。
近年では、東京大学地震研究所により、宇宙線由来のミューオンを用いて火山の内部構造を画像化するミュオグラフィの研究が進められている。 同様の手法で福島第一原子力発電所の炉心の現状を調査するためにも使用された。
1978年に東京大学理学部附属中間子科学実験施設(現・高エネルギー加速器研究機構・ミュオン科学研究施設)が発足し、1980年に当時の高エネルギー物理学研究所ブースター利用施設の一角に設けられた実験施設で世界初のパルス状ミューオンビームを発生させることに成功した。 これ以降、同施設は国内のミューオン利用研究の中心となるとともに世界的にもパルス状ミューオン利用の先導役も果たしていたが、2001年から日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構との協力の下で始まった大強度陽子加速器計画(J-PARC、茨城県東海村)による次世代施設の建設が本格化するのに従い、2006年3月をもってその運転を終了している。
(以上、ミュオンに関するウィキペディア情報のごく一部を要約引用。)
引き続き、原左都子の私見を語ることとしよう。
上記のごとく、“ミューオン”応用技術に関しては今に至っては科学分野に於いて特段騒ぐべき事象ではなく、1930年代に発見され、ずっとその応用研究に用いられて来た科学技術であろう。
今回のNHKスペシャルが放映した、エジプトピラミッド内部分析に当該ミュオンを使用したとのNHK報道に何故私が感激したのかに関しては、私なりの理由がある。
とにかく、NHKが取り上げた名古屋大学研究者グループの面々が皆若いのだ! その若き科学者達がエジプトまで参上して、ピラミッド内部の構造を解明せんとするその地道な姿勢にこそ、私は心打たれた。
5月1日放映NHKスペシャルに於いては、未知の世界であるエジプトのギザではない他の箇所にひっそりそびえる小規模ピラミッドにターゲットを絞り込んだようだ。 果敢にもその内部へ名古屋大学科学者達が重き実験器具を持参する風景映像が写し出された。
内部にはコウモリが繁殖していてウィルス感染の危険性もあるとの事で、研究者面々は灼熱の中、防御服を着用して内部に入る。
そしてミュオンを感知するためにピラミッド内部に反射板を貼り付けるのだが、ミュオンの反射を正確に捉えるためにはわずかな傾きも許されないとの事だ。 特殊な撮影技術を駆使しつつ、高温の中その緻密な作業に集中する若き科学者達の映像を、私はテレビの前で見守り続けた。
最後に、原左都子の結論に入ろう。
元より科学技術の発展とは、このような“地道かつ緻密”な作業なくして成り立たない性質のものだ。
一時「STAP細胞事件」で世を騒がせた“似非科学者達”にこそ、この映像を見て欲しい思いだ。
“世界で一番”の発見・発明を急ぎ「ノーベル賞」を目指す事より、既に存在する科学技術を活かし、仮説検証との地道な努力を繰り返し“応用技術”を発展させつつ世紀の謎に迫って欲しいものだ。
その意味で、一昨日“NHKスペシャル”で見た名古屋大学研究グループのご活躍の程を、今後も応援申し上げたい。
今から遡る事9年程前に、私はエジプトを訪れピラミッド観光をしている。
あいにく灼熱地獄猛暑時期のエジプト及びギリシャ訪問と相成り、私と娘は現地の食事にも慣れず、激しい下痢症状(娘は高熱も発症)に苛まれた。
そんな旅程の最終章に、ギザ地区のピラミッド群及びスフィンクス観光の日程が組まれていた。
出来れば日陰で休みたい思いが山々なれど、せっかく遥々訪れたエジプトに於いてピラミッド観光をせずしては帰国出来ない。
しかも、今回は入場人数が限定されているピラミッド内部まで内覧出来るとのツアーの触れ込みだ。 ただし、内覧に関しては急激な階段や狭い場所を通過する体力を要するため、高齢者や体調のすぐれない観光客の入場は避けるようにとの指導だ。
直前まで入場を諦めようかと迷ったのだが、身内の勧めもあり思い切ってクフ王ピラミッドの内部に娘も引き連れて入場することとした。
上記写真のピラミッド右下辺りに入場口があるのをお分かりいただけるであろうか? この入場口まで辿り着く事さえ困難だった記憶があるが、内部に入場して「やはり止めておけば良かった…」との後悔に苛まれる…
急な階段どころか、直立に近い(階段と言うより)“はしご”を登り切らねばならない場面すらある! まるでアスレチック競技に出場して闘っているような感覚だ。 しかももっと不運な事には、限定入場者は団体行動を強いられるため行動に遅れを取ることが許されないのだ。
結局、命がけでピラミッド内で激しい運動をさせられたのみで、ガイド氏の話を聞く余裕など一切無く、やっとピラミッドから外に出られた時には命が助かっている事に感激すらしたものだ。
と言う訳で、我がクフ王ピラミッド内覧とは体力・精神力勝負を課せられ“死にそうだった”記憶しかなく、一体何を見てきたのやら訳が分からないとの恥ずかしい事態だ。
ただ、これぞエジプト5000年の歴史に触れた最高の思い出として、我が脳裏に明瞭に刻まれている事も確かだ。
そんな経験がある私は、一昨日5月1日にNHKにて放映された“NHKスペシャル”「エジプト大ピラミッド古代史最大の謎に挑む」なる番組放映を心待ちにしていた。
以下に、NHKがネット上に公開している当該番組に関する事前解説を引用して紹介しよう。
エジプト大ピラミッドの「永遠の謎」は解けるのか?考古学最大の謎に、日本発の「透視技術」が挑む!
今からおよそ4500年前に誕生したエジプトの大ピラミッド。「人力でどうやって建設したのか」「未知の『黄金の間』が隠されているのでは」・・・今なお数多くの謎に包まれており話題が尽きない。
今回、こうした謎に日本で開発された最新のミュオン透視で挑戦することが許可された。 ミュオン透視とは、宇宙線として空から降り注ぐ素粒子ミュオンを使い、レントゲンのように巨大構造物を透視する新技術。 NHKは名古屋大学や高エネルギー加速器研究機構と考古学調査に使えるミュオン透視を開発する共同研究を立ち上げ、研究者らは昨年秋からエジプトのピラミッドでの透視実験を繰り返している。
番組では、ピラミッドに秘められた壮大なロマンを紹介しながら考古学最大の謎に挑む日本の研究者たちの奮闘を描き、透視調査の最新状況を伝える。
ここで一旦、ミュオン(ミュー粒子、ミューオンとも呼称されるが現在は“ミューオン”が一般的な表記のようだが)に関するウィキペディア情報の一部を要約して、以下に紹介させていただこう。
ミュー粒子は、電気素量に等しい負の電荷と1/2のスピンを持つ。
1936年にカール・アンダーソンとセス・ネッダーマイヤーによって宇宙線の中に観測された。 粒子が霧箱の中で描く曲飛跡から、電子と同じ電荷だが電子より重い新粒子であると推定された。 1937年には、理化学研究所の仁科芳雄のグループおよびストリート(J.C. Street)とスティヴンソン(E.C. Stevenson)らが独立に、ウィルソン霧箱実験によって新粒子の飛跡を捉えた。
発見当初はその質量が湯川秀樹によって提唱された核力を媒介する粒子である中間子と非常に近かったため、ミュー中間子と呼ばれていた。 しかし、ミュー粒子は核力を媒介しないことが分かり、中間子の性質を持たないことが判明した。 1947年、セシル・パウエルらによりパイ中間子が発見されたことで湯川の中間子説および二中間子説が正しいことが証明され(実際には、反パイ中間子がミュー粒子に崩壊する)、ミュー粒子は電子と類似した性質を持つレプトンの一種として分類された。
ミューオンは、イオンビーム(粒子線)として世界に数カ所ある中間子工場(Meson Factory)と呼ばれる陽子加速器施設で利用に供されており、素粒子・原子核物理学からミュオンスピン回転(μSR)による物性物理学、物理化学の研究に至るまで幅広く利用されている。 また、ミューオンを用いたミューオン触媒核融合、μ-捕獲X線による非破壊元素分析など、学際的な応用研究も行われている。ミューオンを使った放射線治療も研究されている。
近年では、東京大学地震研究所により、宇宙線由来のミューオンを用いて火山の内部構造を画像化するミュオグラフィの研究が進められている。 同様の手法で福島第一原子力発電所の炉心の現状を調査するためにも使用された。
1978年に東京大学理学部附属中間子科学実験施設(現・高エネルギー加速器研究機構・ミュオン科学研究施設)が発足し、1980年に当時の高エネルギー物理学研究所ブースター利用施設の一角に設けられた実験施設で世界初のパルス状ミューオンビームを発生させることに成功した。 これ以降、同施設は国内のミューオン利用研究の中心となるとともに世界的にもパルス状ミューオン利用の先導役も果たしていたが、2001年から日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構との協力の下で始まった大強度陽子加速器計画(J-PARC、茨城県東海村)による次世代施設の建設が本格化するのに従い、2006年3月をもってその運転を終了している。
(以上、ミュオンに関するウィキペディア情報のごく一部を要約引用。)
引き続き、原左都子の私見を語ることとしよう。
上記のごとく、“ミューオン”応用技術に関しては今に至っては科学分野に於いて特段騒ぐべき事象ではなく、1930年代に発見され、ずっとその応用研究に用いられて来た科学技術であろう。
今回のNHKスペシャルが放映した、エジプトピラミッド内部分析に当該ミュオンを使用したとのNHK報道に何故私が感激したのかに関しては、私なりの理由がある。
とにかく、NHKが取り上げた名古屋大学研究者グループの面々が皆若いのだ! その若き科学者達がエジプトまで参上して、ピラミッド内部の構造を解明せんとするその地道な姿勢にこそ、私は心打たれた。
5月1日放映NHKスペシャルに於いては、未知の世界であるエジプトのギザではない他の箇所にひっそりそびえる小規模ピラミッドにターゲットを絞り込んだようだ。 果敢にもその内部へ名古屋大学科学者達が重き実験器具を持参する風景映像が写し出された。
内部にはコウモリが繁殖していてウィルス感染の危険性もあるとの事で、研究者面々は灼熱の中、防御服を着用して内部に入る。
そしてミュオンを感知するためにピラミッド内部に反射板を貼り付けるのだが、ミュオンの反射を正確に捉えるためにはわずかな傾きも許されないとの事だ。 特殊な撮影技術を駆使しつつ、高温の中その緻密な作業に集中する若き科学者達の映像を、私はテレビの前で見守り続けた。
最後に、原左都子の結論に入ろう。
元より科学技術の発展とは、このような“地道かつ緻密”な作業なくして成り立たない性質のものだ。
一時「STAP細胞事件」で世を騒がせた“似非科学者達”にこそ、この映像を見て欲しい思いだ。
“世界で一番”の発見・発明を急ぎ「ノーベル賞」を目指す事より、既に存在する科学技術を活かし、仮説検証との地道な努力を繰り返し“応用技術”を発展させつつ世紀の謎に迫って欲しいものだ。
その意味で、一昨日“NHKスペシャル”で見た名古屋大学研究グループのご活躍の程を、今後も応援申し上げたい。