原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

若き病院勤務医師達の過労を危惧する

2017年11月21日 | 時事論評
 今朝、朝食を終え、洗濯もの干し作業に取り掛かろうとした時のことだ。

 時刻は、7時40分。  自宅の固定電話が鳴り、聞き慣れない電話番号を告げている。

 (こんな朝早い時間帯に一体誰が何の用だろう? 何処かの業者からだとしても時刻が早過ぎる。)と多少の不信感と共に電話口に出たところ。

 「東大付属病院の〇〇と申します。〇さん(亭主の事)は御在宅でしょうか?」
 
 思い出した。  この医師先生からの電話は過去にも受けている。 本日は亭主が東大病院受診予定だが、それに関して何らかの連絡があるのだろうと推測しつつ。
 後に亭主に確認するとやはりその通りで、本日医師先生に急な手術の予定が入ったため、外来受診を明日に延期して頂けないか?とのわざわざのお尋ねだったようだ。

 それにしても今時の病院とは、このように担当医師本人より患者へわざわざ連絡を頂けるまでに進化を遂げているのかと、実に驚かされる。
 一昔前には絶対に考えられない話だ。
 患者側から何を尋ねたくとて電話は禁止。 必ずや患者本人が辛い身体を引きずって病院まで足を運び受診の手続きをして、長~~~い時間順番待ちをした後にやっとこさ医師の診察を短時間だけ受けるのが落ちだ。
 今回の場合のように担当医師不在の場合も、病院へ行って初めてその事実が判明する。 代替の医師から(さも迷惑気に)「今日は担当医不在のため私が診察しますが、念のため、近いうちにもう一度担当医を受診して下さい。」などと言われたりするのが通常ではなかろうか。 

 亭主に聞くと、この東大病院先生はご自身の携帯からまめに亭主にお電話を掛けて下さるようだ。 そして電話口で、医学専門的内容に関してまでも気軽に相談に乗って下さるらしい。 しかもとても優しい人物像の様子で、あくまでも患者である亭主の意向を優先した対応を心掛けて下さるとのこと。
 何分、基本的に“病院へ行かない主義”の私にして、今時の病院医療の実態をまったく心得ていないのだが。 現在の病院とは、これ程までに(特に医師の姿勢が)進化を遂げているのだろうか? と不可思議感すら抱かされる。


 しかも、この東大付属病院先生。 未だ若き年代の医師の立場で日々激務をこなされている、との亭主の話でもある。
 まさに本日の朝早い時間帯の電話がそれを物語っている。 7時40分以前に病院から緊急手術連絡が入り(あるいは夜勤だったか?)、それに対応するべく亭主に電話をくれた計算になるが。
 いやはや、(特に若き世代の)臨床医の激務の程を思い知らされる。
 

 (先程も記述したが、私自身は日々予防医学に徹し基本的に“病院へ行かない主義”のため、今時の病院風景は亭主や義母の病院付き添いを通してしか把握できない身なのだが。)

 そういえば亭主が2年程前に手術入院した時にも、その付き添いや見舞い等々で今時の病院風景を垣間見る機会があった。
 亭主担当医師より、手術前に家族からの同意書が必要との事で病院へ行ってみると。
 早朝から数多い患者の外来診察をこなし、午後は手術を行った後の我々面談だ。 その間亭主の病室にて待たされ、時刻は既に19時を過ぎていた。  既に外は暗闇の中、診察室にて「家族同意書面作成面談」が実施されたのだが。
 医師先生が1日の激務をこなしお疲れの中、亭主の家族である元医学関係者の私から“容赦なき質疑”が次々と投げかけられる。  そのすべてを受けて立ち、適宜に回答される事実が素晴らしい! 通常は2,30分で終わるであろう面談の所要時間が私の質問のせいで1時間半にも及んだが、最後の最後まで、担当医師先生は納得のいく回答を返して下さった。 お陰で、私は安心して翌日亭主を手術台へ向かわせる事が叶った。
 いやはや、今時の若い世代の臨床医師のタフさに心より脱帽した出来事だった。 その後無事に手術を終えた亭主は、当該タフ医師に入院中ずっと見守って頂きつつ完治の上退院を遂げた。


 ここで、少し古くなるが朝日新聞2017.8.23付社説「医師過労防止 地域医療と両立目指せ」より、一部を要約して以下に紹介しよう。

 東京都内の病院で働いていた研修医が、長時間労働が原因で自殺したとして7月に労災認定された。 5月にも新潟県の病院で同様の労災が認められている。
 医師は、正当な理由がなければ診察や治療を拒めない。 とりわけ病院勤務医の多忙さはよく知られる。 総務省の就業構造基本調査では週の労働時間が60時間を超える人の割合は医師が42%ともっとも高い。 政府は働き方改革として、秋の臨時国会に「最長で付き100時間未満」などと残業を規制する法案を提出し、長時間労働の是正に取り組む方針だ。 ただ、医師については、画一的な規制が地域医療を崩壊させかねないとする医療側に配慮し適用を5年間猶予して、これから残業規制のあり方を議論する事になっている。
 実際、労働基準監督署から長時間労働の是正を求められた病院で、外来の診療時間や診療科目を縮小する動きがある。 医師の過労防止で必要な医療が受けられなくなる事態は避けねばならない。 そのためには、残業規制の強化を実行できる態勢を同時に作っていく必要がある。 
 まずは、病院勤務医の仕事の量を減らすことだ。 医師でなければできないことばかりなのか。 看護師や事務職など、他の職種と仕事をもっと分かち合う余地はあるはずだ。
 (以上、朝日新聞社説より一部を要約引用したもの。)


 最後に、原左都子の私論でまとめよう。

 (病院好きの)身内達を通しても、現在の病院勤務医の激務の程を知って余りある。

 上記朝日新聞内記述の最後に記されている部分も気になる。
 医師のみならず、その他パラメディカル専門職員をもっと活用する事により医師の職務軽減を図るべきとの提案は、今に始まった事ではなかろう。
 この私とてパラメディカルの国家試験資格を取得している。 もしも還暦過ぎた人材でも良ければ私もその「助っ人」になりたいものだが、現実社会に目を移すと高齢者の人材募集など皆無状態・門前払いが現実だ。

 ただ、これぞ医師会がそれを阻止しているとも推測出来る。 
 パラメディカル人材を筆頭に、今まで医師の専売特許だった医療分野に様々な周辺人材に踏み込まれては、今後更なる医師の失業を煽ると怯えているようにも捉えるのだ。

 それに似た最たる例が、「弁護士」ではなかろうか?
 今まで弁護士の専売特許だった分野に、今や「司法書士」「行政書士」「ファイナンシャル・プランナー」「社会保険労務士」等々の様々な関連資格者が進出し幅を利かせている現実ではなかろうか。
 それにより 「弁護士」の地位がこの国で低下の一途を辿っている事実に関しては、我がエッセイ集バックナンバーにても既に公開している。

 世の中の職業地位確保とは、実に難しい課題だ。
 この世で最高にして最大に人命を預かる職種であろう「医師」に関して、もしも職業的「地位」ではなく「人命」こそを優先する観点に真に立てたならば、自ずと問題解決しそうな気もするが……。