原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

認知症状が加速する義母から「私ってボケてるの?」と問われ…

2017年12月19日 | 医学・医療・介護
 一昨日の事だが高齢者有料介護施設に入居中の義母から電話が入り、上記表題の質問を受けた。

 これ、介護保証人の立場として一番答えに困惑する問いである。
 まさかまかり間違っても、「その通りです! 貴方がボケているせいで日々迷惑しているんですよ!」と即答する程の愚か者ではないとの自負はある。
 かと言って、「そんなことはないですよ」とごまかして逃げるのも避けたい。

 そんなこんなで、一体私が如何なる回答を義母に提示したのか?!?
 それは後に述べよう。


 義母の認知症状悪化は今に始まった事ではないが、この秋口から施設内で“金銭トラブル”を繰り返し引き起こして施設に迷惑を掛け、困惑させられている。
 やれ、財布をなくした。 通帳を紛失した。 タクシーから降りた後、鞄がなくなった。 誰かが部屋に入り込んでお金を持ち去っている。 
 日々数回、義母本人からこの種の電話が我が家に掛かって来る。 その対応のために施設のケアマネージャー氏と連絡を取り合う事態も続く。

 我々保証人の対策として、まず義母に手渡してあった“小遣い用”の銀行通帳を回収した。(その他義母所有不動産貸付等々財産関係の諸通帳は、保証人となった時点で我が家にて保管管理しているが。)
 そして義母には小遣い銭として月10万円ずつ、現金を施設へ持参して手渡す事とした。
 ところが、最初にその現金を持参したところ、「お金を渡されても困る。この部屋に置いておくとどうせ盗られるから、持って帰ってちょうだい!」  亭主が応えて「そう言うけど、毎日買い物に行ってその支払いをどうするの? そもそも盗られたんじゃなくて、自分で何処に置いたか分からないだけだよ。」
 何分認知症者相手の会話故に話が成り立たず堂々巡りなのだが、結論としては、義母の意向を尊重して3万円だけ置いて来る事とした。

 その後も案の定、その3万円も盗られた、どうのこうのの繰り返しだ。 我が推測ではおそらく既に自分で使ったのだろう。それすら忘れ去っているのが悲しいかな義母の実情だ。
 この段階で私は義母の“金銭トラブル”問題に関しては「担当」から降り、亭主に一任する事とした。 何分、義母とは赤の他人との関係に於いて、こと“金銭問題”からは身を引くべきと考えた故だ。

 それから3カ月間程、亭主の“忍耐力”を褒めてやりたい程に、我が亭主は義母の“金銭トラブル”と真っ向から闘った!  その頑張りにもかかわらず、義母の金銭問題は未だ何らの解決にも及んでいないのだが…


 そして、一昨日の事だ。
 義母から電話が掛かって来て、亭主と“金銭トラブル”に関していつものように一通り話をした後、「どうしても〇子さん(私の事)と電話を替わって欲しい」と訴え出たようだ。
 亭主が義母に対し「金銭問題に関してはボクが全責任を持つから、同じ事を〇子に言う必要はないよ。」と一旦拒否してくれたそうだが、義母のたっての願いで私が電話に出た。

 そうしたところ、義母から出た話題に意外性があって意表を突かれたのだが。
 「あのね、〇ちゃん(娘、義母にとっては孫の事)の卒業式だったの? 3月の日付けの写真が出てきたんだけど、私まだお祝いをしていないわ。 それから〇ちゃんの他の着物の写真もあるのだけど、こんなの初めて見るんだけど、どうして私に教えてくれないの!?」
 参考だが、両者ともフォトブックだが、卒業写真は2016.03、成人式前撮り写真は2013.03に撮影・作成して、その直後に施設の義母に持参したものだ。 しかも、成人式も卒業式も義母同席の上、義母の負担で盛大にお祝い会を実施しているし、成人式の振袖代金も全額義母からのお祝い金より拠出している。

 ただ義母の認知症状を痛い程理解している私は、次のように返答した。
 「お義母さん、両方とも〇〇(娘の事)が綺麗に撮れてるでしょ! 自慢の写真集なんですよ。 お義母さんからは既に沢山お祝い金を頂いていますので、安心して下さい。」
 応えて義母曰く、「ウソよ。 こんな写真初めて見たわ。 それにしても、確かに〇ちゃんが綺麗ね! こんなに綺麗になって本当によかったわ。」

 電話口で義母が続けて、「〇子さん、最近私ね、お金や財布を盗られて困っているの。(うん、十分知ってるけど。) それを誰に話しても、皆が盗られたんじゃなくて私が置き場所を忘れたか、無くしたと言うのよ。 そうじゃなくて本当に盗られたんだけど、なんだか怖くてね。 もしも、本当に私が無くしたり忘れているとしたら、私がボケてるという事でしょ? 〇子さんはどう思う?」

 (う~~~ん、こりゃ困ったなあ、と思いつつ)、「もしかしたら皆さんが言う通り、お義母さんが無くしたか忘れた恐れもあるかもしれませんが、気になさらなくていいんじゃないですか? お年を召すと、そういうこともあるようですよ。」と返答する私。
 すかさず義母が「〇子さんもそう思うということは、私ボケてるのね? 正直に言って。もしも、私がボケているがためにおかしな行動をしているのなら、そう言って」
 (それも難しいなあ。)と相変わらず困りつつ…  「分かりました! そうしましょう。私が気付いた事があったらお義母さんに言いましょう。」
 その後義母が電話口で繰り返すには、「そうしてね。今度からそうしてね。」
 何だか結末にならない結末になったが、とりあえず義母はこれを繰り返して電話を切ってくれた。

 あれから、2日が経過して。
 秋口から日々数回掛かって来ていた義母の電話が、あの日から途絶えている。
 根本的問題解決は何ら導けていないが、義母がおとなしくなっているのは事実だ。 
 このまま、年末を過ごしてくれると良いのだが…