(写真は、朝日新聞昨日2019.01.12付夕刊記事「♯成人式の黒歴史」を転載したもの。)
原左都子自身の“成人式の黒歴史”話題に関しては、本エッセイ集バックナンバーにて何度か取り上げているが…
我が成人式が近づいた1年程前から、親どもから告げられていた言葉がある。
「成人式の振袖程、この世で不要なものは無い。 あんなものは一切作らないから、そのお金を有効利用して何某か自分の夢を叶える事を考えなさい。」
我が姉も成人式に振袖を作らなかったどころか、当時大阪で大学生だった姉は「成人式など絶対に出席しないし、郷里にも帰らない!」をずっと以前より宣言していた。
とにかく自己中・わがまま放題に加え、郷里に女友達のただの一人もいない姉のそのマイナーな心理の程は親どもも私も理解していた。
その前例もあって、親も意固地だった。 「姉にも振袖は作っていないから、貴方にも作らない。」
分かりにくい理屈だが、それを両親から言われた時には、私側も別にそれで良いとも思っていた。
両親共々公務員だった我が家は、決して貧困にあえいでいた訳ではない。 なのに何故、振袖を作らない事に関してこれ程に親が意固地だったのか、実は未かつて分からないままだ…。
さて、その両親の考えに従い、私は成人式より半年前の19歳時の夏休みに「米国UCバークレー」へ短期留学した。
それはそれは有意義で思い出深い1ヶ月を現地で過ごした。 30代後半独身時と、そして昨年夏にもUCバークレーへ三度(みたび)旅立った程の価値ある留学経験だった事には間違いない。
ただ時は残酷だ。
成人式が近づくにつれ、女友達間で「振袖」の話題に花が咲き始めた。
「私は赤の花柄」「私はグリーン系よ」等々、自分の振袖自慢を皆が披露するようになった。 大学へは県内広域のみならず近県各地から学生が集まっているため、私と成人式会場が重なる女友達は一人として存在しないのはラッキーなのだが… それにしても、どうしてもその会話には入れず、置いてけぼりを食らわされたものだ。 ただ、友達皆が私の場合は振袖を作る代わりに米国短期留学をした事を承知していたため、特段私に後ろめたさも無いものと承知していたようだ。
ところが実際の我が内面心理は、そう簡単では無かった。
そんな折、(誰よりも長身の私に、振袖が似合うだろうに… )と多少親を恨み始めた私の下に、成人式の通知が届かなかったのだ。 秋頃に家を建替え一家で引越しをしたためか、引越し先にも元の住居地にも通知が届く事は無かった。
これ幸いと私は成人式には出席しない宣言を親相手にした。 実際問題、当時より女子のほとんどが振袖で出席する成人式会場に、のこのこと平服で行ける訳など無いではないか! 遅ればせながら親が「役所へ確認しようか?」と聞くのだが「その必要はない!」と私はきっぱり言い切った。
いや、後で思えば選択肢は複数あったはずだ。
小学生の頃から貯蓄が趣味(参考だが、高校生の頃自主的に近くの郵便局へ行って通帳を作った記憶があり、その通帳に毎月の小遣いや学生時のアルバイト収入等々を貯め込んでいた)の私は、親の経済力になど依存せずとて自身の蓄えで振袖を作ることなど簡単な事だった。 どうしても振袖を着たければそうすれば良かったと今でも思ったりもする。
何時の事だっただろうか?
我が成人式が当の昔に過ぎ去り、既に上京後の事だっただろうか?
特に母に対して、我が成人式時に何故「振袖を作ってくれなかったのか!?」なる思いを怨念を込めて確認したことがある。
それを聞いた母が、大いに私に詫びた。「下の娘の貴方が成人式にそれ程までに振袖を着たかったことを今初めて知った。申し訳無かった。この償いは必ずする!」
その母の「償い方」とは…。
“どんだけ阿保か、お前は!” と言いたい程に、その後すぐさま私宛に数々の和服を我が身長に合わせて郷里で仕立て、立派な和ダンスと共に送り届けて来たのだ!
そんな愚かな我が母の“償い方”を一応尊重し、一度も袖を通す事の無い和服が現在の我が家の和ダンス一杯に収納されている… (二十歳のお祝いに振袖を着たかった“少女心”は本心だが、その後和服を着る趣味など毛頭ない!)
時が過ぎ去り…
我が母への復讐として、いつだったか歳老いた実母に私は思い切って告げた。
「私が成人式を迎える以前から、我が国で女子を産んだ母親の役目として娘の成人式に「振袖」一枚仕立てる(レンタルでもよいが)のが常識だよ。 貴方はそれを当時理解していなかったよね。」
母も反論しなかったが、その時私に告げたのは、「貴方が自分が産んだ娘の〇ちゃんにそうしてあげなさい」。
我が母が私に成せなかった分を取り戻すべく、私は立派な振袖を我が最愛の娘に仕立ててやった。(ただ、そのスポンサーは義母だよ!) 実母であるアイツは孫娘のために一銭も出していやしない!
何だかやはり、実母の持って生まれている人格の一部を今尚疑っている私ではあるが…。
ただ、もういい。 実母の施設入居後は、その世話をほとんどしてないに等しいし……
冒頭の朝日新聞より転載した写真に話題を戻そう。
この漫画作者氏は、要するに「成人式」に出た事により旧友より声掛けをして貰って“得るものがあった”との事だよね!
良かったんじゃないかと、私は祝福したい!
それに引き換え。
毎年成人式会場にて女性陣に課せられている「振袖競争」! もういい加減に終焉してもよいのではないかとも考察するが…
それを言ってしまったならば、我が国の「和服文化」が途絶えるって訳だよねえ……