原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

「パブリシティ権」 最高裁初認定を検証する

2012年02月13日 | 時事論評
 原左都子は 「パブリシティ権」 に関して“多少”の知識がある。 (あくまでも“多少”の範囲内だが)

 それは決して私が過去に於いて「経営法学修士」を取得しているから故ではない。
 法律と言えどもその分野はとてつもなく幅広い。 経営法学と人格権の一種であろう「パブリシティ権」とは大幅にその分野が異なる。

 それでは何故私が「パブリシティ権」に関して多少の知識があるのかと言えば、我が子が高校1年生の夏に課題として課せられた宿題を手伝った故である。
 この課題は「情報」教科の担当教員より出されたものであるが、高1の娘がお手上げ状態であることは、その課題を一読しただけで過去に於いて法律関連の修士を取得しているこの私には直ぐに理解できた。
 高校に於ける「情報」教科の存在意義とは、要するに子どもが将来この世に生きていくに当たりとりあえず“パソコン使用に慣れる”事がその趣旨かと私は安易に考えていたのだが、どうやら娘の担当教諭は別の教育理念をお持ちだったようだ。
 そうなると親の私が一肌脱ぐ事と相成るのだが、この課題には法律をある程度わきまえているこの原左都子も難儀させられたものだ。

 
 娘の高校の「情報」教諭が“高1生”対象に課した宿題の内容は大きく2分野に分かれていのだが、それを少し端折りつつ以下に紹介しよう。 (カッコ内は教諭の設問を読んだ原左都子自身の感想である。)
 
 <まず 「パブリシティ権」 関連事項の課題から引用要約>
 ○ 「表現の自由」と「閲覧の禁止」を規定した日本国憲法第21条を記し、なぜこのような権利が保障されたのかを大日本帝国憲法と対比せよ。 (この程度の問題に高1生は答えられるべきとは私も思うよ。)
 ○ 「プライバシー権」及び「パブリシティ権」とは如何なる権利か? またそれらの権利に関する過去の裁判例を列挙せよ。 (調べりゃ直ぐにできる問題だけど、裁判例列挙ともなるともはや大学生相手の出題じゃないのか?)
 ○ 過去の出版差し止めや自主回収の事例を調べて書け。(こんな作業が高校生に必要なのか…?)
 ○ 「田中真紀子長女文春記事差し止め請求・審理」に関する裁判の流れを図にまとめた上で、これに対して東京高裁が下した仮処分命令取消し決定を受けての新聞各社の社説を読み比べ、「プライバシー保護」の観点から取消しに対する各社の肯定度を比較せよ。 (この高校教諭は「プライバシー保護」に関してストイックな思想の持ち主なのか???)
 ○ 上記東京高裁「出版差し止め取消し」判決にあなたは賛成か、反対か?その理由と共に詳細を述べよ。 (教諭さんよ、あんたの偏った思想は原左都子が合点したぞ! 私なりの私論を堂々と述べて提出してやろうじゃないか!!) 

 <「著作権」関連事項の課題から引用要約>
 ○ 「著作権」とは何か。 「著作権」には広義、狭義があるがそれぞれ如何なる権利か? 著作権法でいう「著作物」とは何か。 またその目的、及び存続期間はいつまでか。 (まあそうね。 高1生がこういう事を認識しておいて損はないね。)
 ○ 著作権法でいう「引用」とは何か。 如何なる「引用」ならば問題がないか。 (ちょっと細部に入ってきたけど、まあ高校生たる者、これも把握しておいてもよいかな?)
 ○ 「知的財産権」「肖像権」とは何か? (それも調べておいた方がいいね。)
 ○ テレビ番組を個人的に録画したり、学校の文化祭の時に「映画」の放映などをする事があるが、その行為は合法なのか? (特に後半部分は学校側が把握理解した上で生徒に指導するべき事象でしょ!?)
 ○ 著作権を守る事が重要である事を理解した上で、商業モデルとしてのソフトウエアの存在意義を踏まえて、「オープンソース」という考え方に関して調べて自分自身の賛否に関してまとめよ。 (よし、教諭である貴方の気持ちはまたもや理解できたよ。 そうなれば、この原左都子の私論を好き放題述べて娘の課題として学校へ提出しようじゃないか!!)


 話を先に進める前に、娘が上記「情報」科目担当の教諭より課せられた課題の“事の顛末”を語ろう。
 実は夏休み明けにこの課題を提出した生徒は、高校1年生全生徒何百名かのうち(我が子に変わって原左都子が回答して持たせた回答も含め)“たったの3名”だったとのことだ。
 言葉少ない我が娘の説明では分かりにくかったのだが、私が推測するに、この「情報」課題は高校1年生にして難易度が高過ぎると遅ればせながら2学期になって高校側が判断し、「提出不要」の措置としたようだ。(出題する前に難易度を検証して欲しかったものだが…)

 (娘の親である原左都子のこの課題に対する“模範回答”はすべてパソコンに保存してあるためそれを公開してもよいのだが、今回のエッセイに於いては大幅に字数オーバーとなる事を鑑み後日に延期しよう。)


 いつもながら前置きが長過ぎたが、今回「パブリシティ権」最高裁初認定に関する報道を取り上げたきっかけとは、原左都子が“ピンクレディー”のファンであるからに他ならない。
 
 巷の報道によると、先だってピンクレディが提訴した訴訟において、どうやら「パブリシティ権」に関しては今回初めて法的権利として最高裁判決により認定された模様である。
 と言うのも今まで「パブリシティ権」とは、我が国に於いてはそもそも人の「肖像権」としての地位がなかった様子だ。
 私が娘の宿題で調べた頃の「パブリシティ権」の定義とは、「氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利」(判決例より引用)だったものだ。
 判例主義を取っていない我が国に於いて、元々判例主義国家である米国の芸能人やスポーツ選手の間で発展した考え方である「パブリシティ権」が、日本の最高裁により認定されるのが今に至ったということであろう。

 今回“ピンクレディー”側から提訴された訴訟において、最高裁が「パブリシティ権」を初認定したことに関して評価したい思いの原左都子である。

 残念ながら“ピンクレディー”が法的請求した事案自体に関しては、最高裁より「棄却」の判断が下された模様だ。
 だが、今回我が国に於いて「パブリシティ権」を「肖像権」の一権利として最高裁が認定するに至ったのは、50歳を超えた今尚コンサートツアーを企画公演すれば“満席御礼”状態をゲットするパワーがある“ピンクレディー”たるアイドルが、過去から今にかけて燦然と存在する事実背景がある故ではなかろうか。

 大した実力も無いのにこの世にのさばり将来性も見えない若き芸能人連中は、今回我が国に於いて初めて最高裁に「パブリシティ権」を法的権利として認定させるべく訴訟を決行した大御所“ピンクレディ”に感謝するべきであるぞ!
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