◎柳田國男『小さき者の声』とジープ社
一九五〇年(昭和二五)に、石川三四郎『増補改訂 古事記神話の新研究』を出したのは、ジープ社という出版社である。この出版社は、一九四六年(昭和二一)に創業され、当初は、『政界ジープ』などの雑誌を出していた。
ところが、一九五〇年に、大量の単行本を刊行しはじめた。これがうまくなかったのか、翌一九五一年、何冊かの本を刊行したのを最後に、出版界から姿を消した。
国立国会図書館のデータ検索で調べてみると、あの柳田國男も、ジープ社から本を出している。『小さき者の声』、『日本の伝説』、『日本の昔話』の三冊で、やはり、一九五〇年の刊行である。これらの本は、いずれも戦中に、三国書房から刊行されたことがある。
民俗学関係では、このほか、森口多里〈モリグチ・タリ〉『町の民俗』、能田多代子〈ノダ・タヨコ〉『村の女性』、西角井正慶〈ニシツノイ・マサヨシ〉『村の遊び』、瀬川清子『販女』、同『海女記』、大藤ゆき〈オオトウ・ユキ〉『児やらひ』も、一九五〇年にジープ社から刊行されている。これらの本は、いずれも戦中に、三国書房の「女性叢書」のナンバーとして刊行されたことがある。
ことによると、三国書房とジープ社との間には、何か人脈的なつながりがあったのかもしれない。【この話、さらに続く】
*本日は多忙につき、ここまで。なお、昨日のコラム「大月氏国とカチ族(石川三四郎の古事記神話研究)」は、どういう訳かアクセスが多く、歴代4位でした。
【昨日のクイズの正解】 3 保坂俊三 ■保坂俊三〈ホサカ・シュンゾウ〉氏は、その著書『日本国誕生と聖徳太子』(丸ノ内出版、1998)で、聖徳太子の祖先は大月氏という説を提示しています。