◎「日本人ハ東洋開明ノ義兵」発言の解釈
今月一九日に、シュタインの次の言葉を引用した上で、この言葉の真意を把握するためには、シュタインが、どういう脈絡でこの発言をしているかを確認する必要がある。と述べた。
東方亜細亜〈あじあ〉ノ為ニ旗ヲ挙ケテ〈あげて〉宇内〈うだい〉ノ大勢ニ応セントスル者ハ、日本人ヲ措キテ誰レカアラン、日本人ハ東洋開明ノ義兵ナリ、諸君夫レ〈それ〉勉メヨヤ、此ノ功ニシテ一タヒ〈ひとたび〉成ラハ、東半球ハ日本ノ麾下〈きか〉ニ属シ、朝鮮支那以下ノ諸国モ、日本ヲ以テ新様文化ノ本源トセン、
また、引用した一節の前に、「夫レ然リ、早ク此ノ点ニ着眼シ、」という一五文字があることも指摘しておいた。
そのあと、だいぶ間があいてしまったが、「此ノ点」が何であるかわかるよう、その前のところを含めて、もう一度、引用してみたい。
加之〈しかのみならず〉国々其文物ヲ異ニシナカラ、相交通シ、相応通シテ以テ互ニ其生活ヲ盛〈さかん〉ニスルハ、人世〔世の中〕ニ対スルノ徳義ナルコトヲ知ラサル可カラス〈べからず〉、今ヤ胸襟ヲ広ウシテ、人世ノ成立ヲ察スルトキハ、国各々文物ヲ異ニシナカラ、甲乙相補フハ大勢〈たいせい〉ノ趣ク所ニシテ、早ク此ノ大勢ニ応スル者ハ昌エ〈さかえ〉、之ニ後ルヽ者ハ必ス亡ヒサルヲ得サルカ如シ、
一国ノ上ヨリ之ヲ言ヘハ其伝来ノ文物ノミヲ尊テ〈たっとんで〉、他ヲ知ラン事ヲ欲セサル者ヲ保守ト云ヒ、眼界ヲ広ウシ、進退ヲ人世ノ全局ニ計ラントスル者ヲ改進ト云フ、即チ我カ短ヲ改メテ、彼レノ長ニ進マントスレハナリ、
夫レ然リ、早ク此ノ点ニ着眼シ、東方亜細亜〈あじあ〉ノ為ニ旗ヲ挙ケテ〈あげて〉宇内〈うだい〉ノ大勢ニ応セントスル者ハ、日本人ヲ措キテ誰レカアラン、日本人ハ東洋開明ノ義兵ナリ、諸君夫レ〈それ〉勉メヨヤ、此ノ功ニシテ一タヒ〈ひとたび〉成ラハ、東半球ハ日本ノ麾下〈きか〉ニ属シ、朝鮮支那以下ノ諸国モ、日本ヲ以テ新様文化ノ本源トセン、
もっと前から引用すれば、さらにわかりやすいのだが、シュタインの真意は、ほぼこれで察することができよう。
――日本人は、朝鮮・中国にくらべれば、世界の大勢に応じようとするところがある。世界の国々と交通し、自分の短所を改め、他の長所を採り入れようとするところがある。早くから、この点に着眼し、アジアのために、世界の大勢に応じようとする者は、日本人以外になかった。その意味で、日本人は東洋を発展させるための義兵である。諸君、奮励せよ。諸君の功が成れば、東半球は、日本になびき、朝鮮・中国ほかの諸国も、日本を新しい文化の本拠地と考えることだろう。――
要するに、シュタインは、こういうことを言っているのである。【この話、続く】