◎海江田議官ほど愛慕を感じた日本人はいない(シュタイン)
昨日の続きである。
理由はよくわからないが、海江田信義も丸山作楽も、シュタインという人物に、すっかり惚れこんでしまった。特に、海江田などは、かつて水戸で、藤田東湖〈フジタ・トウコ〉・戸田忠太夫〈トダ・チュウダユウ〉という師につき、それ以来、師と呼べる人物に出会えなかったが、三〇数年ぶりに外国で良師に出会えたと言って、泣かんばかりに感激したのである。かつての「攘夷派」とは思えない変貌ぶりである。
一方、シュタインのほうも、海江田や丸山が気にいったらしく、特に海江田のことは、「これまで、いろいろな日本人に出会ったが、海江田議官に対するほど、愛慕の情を発したことはない」と述べた。また、丸山に対しては、彼が、神道などの日本の文化に詳しいのを見てとるや、さかんに質問を投げかけ、逆に丸山のほうが、シュタインに向かって「講義」をするような場面もあった。
こういう良好な関係の中で、シュタインは、海江田や丸山が喜びそうなことを語り、また、海江田や丸山のほうも、シュタインから、意識的に、あるいは無意識的に、聞いてうれしいような言葉を、引き出したということがあったのではないだろうか。
*この話は、さらに続きますが、明日・明後日は、都合により、お休みします(4月21日)。